1話 旅立ちの日に
私、如月由佳莉は今年の春に高校を卒業したばかりの18歳です。
私は田舎の高校、国立市ヶ谷高校を卒業しました。世間は不景気や就職難と言われているようですが、私の進路の方は無事に決まったのでホッとしています。
この小説を書くきっかけは、卒業を控えていた高3の春のころでした。
進路報告をしに職員室に行ったら、担任の先生から「君の合格体験記を学校の広報誌にのせたい。原稿用紙に自分の高校3年間を書いてほしい」と言われたのがはじまりです。
自分の話を後輩たちに読まれるのは恥ずかしいので、最初は合格体験記の執筆を断りました。
しかし先生に「ぜひお願いしたい」とまで言われたので、私は決心して後輩たちのために一肌脱ぐことにしました。
この小説は、その合格体験記の内容を載せたものです。稚拙な文章ではありますが、もしよければ最後までお付き合いいただければと思います。
治せないんだとしたら…
そこは行き止まりじゃなくて出発点じゃないのかな…?
君の当たってる大きな壁は…
重いけど扉なのかもしれないよ…
佐藤秀峰『ブラックジャックによろしく』より
「君たちは灘や開成を天才だと思っていませんか?考えてみてください。灘や開成は中高一貫校です。彼らは6年かけてのんびり大学入試の準備をします。それに比べて、市ヶ谷高校の生徒は高校3年間だけで東大レベルに到達します。君たちに比べたら、灘も開成も馬鹿です。市ヶ谷高校こそ日本最高の教育なんです」
そんな事を安倍校長が入学式でおっしゃっていたなあと思い出しつつ、私はいま新生活にむけて荷造りをしています。
在校生の皆さん、はじめまして。先生方、ごぶさたしてます。谷高同窓会の如月由佳莉です。このたび私は『第七艦隊直属日本国防軍』というところに就職が決まりました。今はとにかく「国防軍に合格できてありがとうございました」という気持ちでいます。
でも実はまだ私は国防軍についてよく知りません。進路指導の尾木ネエ先生が仰るには「ちょっと前に憲法改正があったでしょ?それで自衛隊の名前が新しく変わったのよ」という事だそうです。ちなみに私が配属される部署は海軍なので、この合格体験記が後輩たちに読まれている頃、私はどこか遠い海で希望にあふれて働いているんだろうなぁと思います。
わが母校、国立市ヶ谷高等学校は、東京大と旧帝大と国立大医学部に100人くらい現役合格する進学校です。事実、クラスメイトはみんな一流大学に進学していきました。もちろん私も大学進学するつもりでした。
でも私は今回思い切って就職の道を選ぶことにしました。部活の友達からメールで「何で大学いかないの?笑」と送られてきましたが、私が国防軍に入ったのにはちゃんとした理由があります。
私は自分の未来のために決断したんです。
それまでには紆余曲折ありましたが、そのいきさつをこれから書いていこうと思います。
※国防軍…「国および国民の安全を確保するために、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する」自由民主党 日本国憲法改正草案より