日常
朝5時にセットされた目覚ましを止める。ねこざねさんに原稿用紙を渡してから一晩明けた。浅野巧は早起きだ。朝早く起きて好きなことをする、例えば読書とか。また、何もせずにダラダラ過ごすこともある。しかし今日、巧はそのどちらも選ばずにソワソワとあまり広くない自分の部屋を歩きまわっていた。ねこざねさんは今どのくらいまで読んだのだろうか、自分の小説を面白いと言ってくれるだろうか。いやしかし本当に面白いと言ってくれたらどうしようか。初めて書いた小説だ。手ごたえはそんなにないし、やっぱり適当に感想をはぐらかされて、その時は面白かったよなんて適当な感想をよこして、ただ返されておわり、なんてことが想像できる。いや巧、もっと前向きに考えろ、ネガティヴな考えは身体に毒だぞ、と無理矢理励ます。
そんなことを考えているうちに登校する時間が迫ってきたのでリビングに行って母に朝食作るようにたのんた。
「おっ、今日も早起きしてえらいね。」
明るい声で母がいう。やっぱり揺れ動くのは自分の心だけで日常は変わらないようだ。とりあえず今日も朝食を食べて学校へ向かう。
巧が通う高校は電車で1時間ほどのところにある私立の共学校だ。
電車の中で本を読んでガタンゴトンられていると目的の駅に着いたので、そこからまた少し歩いたら到着だ。
昇降口で上履きに履き替えて教室に向かう。自分の席に着いたところで隣の林がおはようとあいさつをしたので巧もおはようと言って座る。早速、巧はカバンに手を突っ込んで文庫本を広げる。
「また違う本読んでるねー」林が声をかけてきた。林と言っても女子である、そして巧は男子である。やっぱり受けごたえはぎごちないものになってしまった。
だんだん生徒が集まってくるとにぎやかになってくる。そしてにぎやかな中で本を読むのが巧は好きだ。やっぱり今日も普通でいい日だ。そんな日常を巧は謳歌していたのだが、ねこざねさんに預けた原稿用紙を思い出してしまい少し胃が痛くなった。1日で読んでくることはさすがにないかな、なんて思ってたのたが、、、、