青春の味
面談室は少し薄暗い。それがリラックスした雰囲気を二人に与えてくれる。
「私は大丈夫だと思っているよ」
金子瞳は言った。
「そうですか、、、」それに対して、夜桜かおるは自信なさげにうつむく。
それはいつも自信に溢れている彼女らしからぬ仕草であった。
きっと後輩のならその様に深刻に考えることもあるんだろう。
金子瞳はふう、と息をはいて彼女を安心させる言葉を続けた。
「だって、友達だっているじゃないか。お助け部でももう一人じゃない。」
うん、本当にそうだ。浅野君がいるじゃないか。
「そのことじゃなくて、私の卒業のことなんです。」
急に聞こえた夜桜かおるの切迫した声が心に刺さる。
「ネコは、いや未来は私の為に、してるんです。」
鋭い夜桜かおるの目が少し潤んでこちらを見つめている。それはぞっとする様な美しさだった。まるで、湖に浮かんだ月の様だ。
彼女といえども高校生だ。ここまで感情的になることもあるんだろう。
「お助け部で経験を積んで、いつか私に面白いって言わせる小説を書くって」
黙って金子瞳は頷いた。それが最善だと思った。何も言わずに彼女の言葉を受け止めようと決めた。
「小説を書いて、つらい思いもしたはずなのに、それでも書くっていうんです。」
じっとこちらを見つめる視線から目を離さない。それだけ彼女は本気なんだろう。後輩を愛しているんだろう。その愛にこちらも少し感動してしまった。そして激しい懐かしさ。
いいなあ高校生って。いいなあ青春って。
もう大人になった自分はこれほどまでに一生懸命に生きているだろうか。
「でも、まだその挫折も乗り越えられなくて、もともと自分に厳しいところもあって、自分を追い込んでいる様にも見えます。
私が卒業していなくなったら、目標を失った未来はどうしたらいいんでしょう」
そこで彼女の独白は終わった。夜桜かおるは泣いていた。
猫実未来という彼女の挫折とはそれほどまでにつらいものだろうか。
オレンジ色の照明に照らされて涙を拭いている夜桜かおるを見る。
「その挫折とやらの話。私に話してくれないか。」




