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クリエイト!  作者: 大塚
なぜ君は書く
16/60

電話インザ風呂

「夜桜先輩、こんなにしてまで伝えたかったことってなんですか。」

巧はさっきもらったメモの番号に電話をかけていた。

「はあ、最近の子は察しが良いな。」

答える夜桜先輩の声は少しエコーがかかってて聞き取り辛い。巧は携帯の音量をマックスにする。


15分前—巧は自室で一人、夜桜先輩のメモを携帯に登録しようとしていた。メモに書かれていたのは携帯の番号のみ、メールアドレスはなかった。

ふと、巧はそもそもは一人で呼び出されたのを思い出した。そういえば、ねこざねさんがドアに張り付いて盗聴しようとしてたところを、先輩が気づいたんだった。

だとすると、先輩がねこざねさん抜きで俺に伝えたいこととはなんだろう。部室では小説のアドバイスとお助け部のことを話した。どれもねこざねさんの前で話しても全然平気で、わざわざ『一人で来い』と書くほどの内容じゃない。

きっと巧がドアと先輩の間に挟まれて、ドアどん?されていたとき、多分ねこざねさんの存在に気がついて話の路線を変更したんだろう。

連絡先を教えてくれるタイミングも自然だったが、もしかしたらそう見得るように時間を稼いでいた可能性もある。

つまり、夜桜先輩は巧にこうしてまで伝えたかったことがあるというとことだ。それに気づいた巧はやや緊張しながらも、電話をかけたのだった。


「最近の子は察しが良いな」

携帯の音量を上げて巧は続きを聞こうと必死に耳をすます。一応、難聴でも電話はできる。

「耳が悪い分、ものをよく考えるように言われるんで、」

「いい心構えだ。」音量を上げて聞くとはっきり響いているのがわかる。一体どこで話しているのやら。ミステリアスな人だ。

「こんな時間にどこで話しているんですか?」巧は気になって思わず、聞いてしまった。

「どこって、お風呂の中だが」先輩はいつもの口調でいう。

「おおお、お風呂だって、」突拍子もない言葉に巧は聞き間違えたかと思ったほどだったが。

「そうだ。」きっぱりと言った先輩の声はやっぱりエコーがかかっている。

ちゃんと先輩の意図を察して電話した巧は、一本取った気でいたのに先輩の入浴シーンという反撃で剣を叩き落とされた。

「な、どうしてそんなところで。偶然ですか。」巧は先輩の姿を想像してこちらまで恥ずかしくなってしまった。そこらへんはやっぱり男子である。

「いや〜なんか非通知の電話が何本か入っててなぁ、そのときは出れなかっんたで、風呂に入ってでも待つかということで入った。」

いやその非通知、俺だって!確信犯じゃないですかこの人!どうしてわざわざそのタイミングで風呂入った!?後輩をからかわないで下さい。巧が心の中で全力で突っ込む。

「どうした、なんか変なことでも考えたか?」夜桜先輩は笑い混じりの声で話しかけてくる。

「いや、断じてそんなことはございません!」

「見栄をはるんじゃない。」

「ごめんなさい。」図星である。

「なんならどうだ?テレビ通話にするかぁ、たくみぃ」電話越しにニヤニヤ笑っているのがわかるぐらいの声で先輩は言う。

「いやいやいやいやいいですいいです。」

もう巧は真っ赤になってしまった。

「いいのか、オーケーなのか?」

「そっちじゃないですっ!からかわないで下さいよっ!」

「ほう、君の耳の穴が良く見える。」

「ホントにテレビにしたんですかっ!おかしいですよっ!後輩をからかわないで下さいっ!」

巧はかつてないほど焦って焦って焦りまくっていたのだった。自分の美貌を武器にしてくる美女ほど厄介なものはない。男子高校生の巧に効果は抜群である。

ああ、電話の向こうから先輩の笑い声が聞こえてくる。しかもエコーがかかってるから余計、心に刺さります。

しばらく先輩の笑い声を耳元で聞かされるハメになり完全にシリアスな空気をぶっ壊された。

「あははは、ごめんごめん、恥ずかしがる君が面白くって、つい」

笑い疲れた声に巧は返事をする。

「はあ、、、でなんでしたっけ。あ、そうだ。先輩が僕に話したかったことですよ」

巧はやっと話を戻せそうでほっとし始めた。

「なんかあるんじゃないですか?」

「ああ、それはだな、君の小説を褒めようと思ってね。」夜桜先輩はきっぱりと良く響く声で話す。

褒める。と言われて巧は嬉しくなったが、それがねこざねさんの前で言えないことだと思うと素直に喜んでいいのかわからない。

「君には才能があると思うよ。」

突然、思ってもみなかったことが耳に飛び込んできた。

君には才能があると思うよ。その声は巧の脳内にも良く響いた。だがそれは少し危うい雰囲気の漂う言葉だ。

ねこざねさんの前では言えなかった。それはきっと、、、

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