少女はドアから降ってくる。(意味不明)
夜桜先輩がドアを開けたその時、少女が突然倒れ込んできた。
「んきゃああああああああ!?」
「うわあああああああああ!?」
少女の悲鳴に驚いて巧も叫んでしまった。
どたりと見覚えのある少女は文藝部の床に仰向けに倒れる。
先輩がドアを開けたら人が倒れてくるという不思議な現象に巧は驚いてしまったが、となりの先輩はいたって平然だ。
「やあ、ネコ。こんにちは。」夜桜先輩は立ったまま少女を見下ろして言った。
ネコ、だって?巧は足元に倒れる少女に視線を戻した。確かにねこざねさんだ。
「えへへ〜見つかっちゃいました。」
ねこざねさんは仰向けに寝っ転がったまま微笑む。とっても爽やかないい顔をしている。
「今まで私に何か隠し事をで来たことがあるとでも?」夜桜先輩がニヤッと笑う。
「どうしてここにいることがわかったの?いや、それより何だこの状況は!」
巧は未だ何が起こっているのかがよくわからない。
「説明しよう!」突然、足元からねこざねさんの声が聞こえてくる。巧はまたびっくりしてしまう。いやもう驚かさないでくれ、本当にもう。
「昨日、巧さんが渡した原稿ありますよね?」
「うん」巧はもちろん、と頷く。
「わたしは先輩が1日で読んでくると踏んでいました。なので今日の放課後、巧さんと一緒に文藝部に呼ばれるかと思ったんですが、何も連絡がないんですよ。」
すらすらと目を閉じてねこざねさんは自分の考えを述べる。床に寝たまま。
この光景が巧にはちょっと面白く感じて来た。ぐつぐつと笑いがこみ上げてくるが耐える。
「これはつまり!」かっ、とねこざねさんが目を開く。
「夜桜先輩が巧さんだけを呼んで密談しようとしてたことを示してるんです。だって巧さんとわたしは二人でワンセットみたいなことあるじゃないですか。」
「そんなのあるかなぁ?」巧は思わず口にした。笑いをごまかすためにわざとらしくなってしまった。
「あります、ありますっ!原稿を渡した時にも一緒にいたじゃないですか。」
床に寝たままねこざねさんはびしっと巧を指さしている。夜桜先輩は腕を組んで微笑みながら二人を見ている。
「だから今日文藝部にこっそり行ってみたんです。」
「なるほど、でなんでこんな事になったの?」
「ドアに寄りかかって盗聴しようとしたら急にドアが開いたんです。おかげでこのざまです。ふん。」ねこざねさんは頬を膨らませる。仰向けのまま、、、完全に立ち上がるタイミングを逃してるな、これ。
まあここまで考えが及ぶねこざねさんもすごいが、彼女の追跡に勘づく夜桜先輩も流石といったところか。
「ははは、私もドアに触った時に、なんだかドアが重いと感じてね。古いドアだから開けようとしなくても少し動くんはずなんだよ。」
「先輩、さすがです。」ねこざねさんはまた目を輝かせている。
「それよりもう立ったら。」巧は彼女を見下ろしていう。 こんなんじゃ普通に話せるわけない。
「あっ、はいありがとうございます。」
ふんっ!と言ってねこざねさんは上半身を起こして立ち上がる。
ぱっぱっとポニーテールについた塵をはらう。
「いやあ、久しぶりに大声出したんでスッキリしました。」
確かに悲鳴すごかった。溜まってるんですね、ストレス。
「先輩、わたしだけ仲間はずれなんてひどいです。入れてくださいよっ!」
「やれやれ、わかったわかった。」あきれ顔で夜桜先輩は言った。元気であつくるしい彼女にはもう慣れっこなんだろう。
気をとりなおして全員、文藝部のテーブルにつく。
「主人公をもっと魅力的に書けないかなあ、このままだとただ根暗な難聴の少年じゃないか。」
さっそく巧の小説の検討会が始まった。