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当たって砕けろ、浅野少年。
職員室の扉の前で浅野巧は緊張していた。大丈夫だ、落ち着け。そう心の中でつぶやいて扉を開けた。
「失礼します。高1Bの浅野です。」
とお決まりの常套句をいい、間をおく。
「金子先生に用があって参りました。」
というと左のほうで、はーいという聞きなれた声がしたのでそそくさと中に入ってドアを閉める。自分でも落ち着いてないのがわかる。さっきから足がずっと震えっぱなしだ。その足で金子先生のデスクの脇まで歩く。当の金子先生はこちらを見て、
「何の用かな」
といった。やばい。心臓が破裂しそうだ。でも言わなくては。巧はええいどうにでもなれと言わんばかりの勢いで背中に隠してあった原稿用紙を金子先生の方へ突き出した。20枚100円。1800円分の青春を喰らえ。
「先生、小説書いたんで読んでください!」
頭を下げて巧は職員室で叫んでいた。