4話
4話 偵察任務と最初作戦
2020年7月26日、フォークランド諸島はアルゼンチン軍により完全占領され、同諸島の英守備隊は甚大な被害を被り、多くの戦死者に加えて負傷者を出し、更に諸島防空の為に駐屯していた小数のユーロ戦闘機タイフーンも運悪く全てがロシア製の地対空ないし艦対空防空ミサイル及び戦闘機の放った空対空ミサイルの餌食となり壊滅。それを受けて英軍は空母機動艦隊及び輸送船団に加えて、南大西洋にあるアセション島に何機かのタイフーン戦闘機をKC-767(※1a)空中給油機とE-767(※1b)早期警戒管制機(※2)を派遣したのである。
8月1日0730(ワシントン時間)
フォークランド諸島北東沖数百㌔
「発着管制所よりクロス小隊の発艦を許可する!」
『クロス1了解!』『クロス2了解!』
発着管制官の声を聞いた先遣偵察隊クロス小隊のパイロット二人がそう言うとエンジンを始動させたF-35Bが広い甲板を滑りスキージャンプデックを蹴ってから蒼空へと舞い上がる。
そして2機のF-35が舞い上がるとまた別の機体が離陸に備えて甲板で待機準備に入る。
閑話休題。さっき離陸したF-35は尾部の多連装自己防衛弾発射装置搭載のフレア/チャフに加え、左右の爆弾倉にそれぞれ1発のAIM-132ことASRAAM及びAIM-120すなわちAMRAAMを計2発を(※3)自衛用に搭載しているが、いつもより長時間の作戦に備え、翼下に追加タンクを、機首には取り外し可能な偵察用の高感度カメラを取り付けていたのである。
発進から30分後、F-35は搭載する非常に優秀な電波受信装置を駆使し、アルゼンチン陸軍や空軍の設置したロシア製防空レーダーや海軍艦のレーダー波を避けて諸島の上空へと辿り着いたのである。
そしてF-35の操縦士は撮影した写真などの情報をリンク16で母艦である空母プリンス・オブ・ウェールズへと送信し、母艦の作戦指揮室ではそれらの情報を元に攻撃及び制空隊の出撃プランを練っていたのである。
…………しばらくしてF-35は極めて強力な電波、恐らくA-50と呼ばれるロシア製のAWACSとおぼしき機体から照射されているであろう電波を傍受。本来なら領空侵犯機などだったら確認を行うが、今回は偵察と言う隠密性を求められるが故に小隊は位置を報告するとすぐに諸島上空から急速離脱したのである。
そしてその数分後、翼下に対レーダーミサイルを携えた囮役である別のF-35がA-50に対してそのレーダーミサイルを放ったのである
そしてそのミサイルはA-50に向けてパッシブホーミングで順調に飛翔していったのである。
(※1a)KC-767及び(※1b)E-767
傑作中型旅客機B-767母体の支援用航空機。前者は空中給油機と言う機体で日米伊の空軍が導入しており、後者はAWACS(早期警戒管制機)と言う機体であり、E-3を導入しそびれた航空自衛隊だけが運用しているが、本作では寿命延長計画がなされない一部のE-3の退役に伴って後継機として米英仏などでも導入が始まっている設定である。端的に言えば空中給油機とは空飛ぶガソリンスタンドの事。なおAWACSの役割については後述する。
(※2)AWACS
AWACSとはAirborne Warning And Control Systemの略で、日本語にすると早期警戒管制機。
旅客機や軍用輸送機などを改修し、航空機やその放ったミサイルを統制する能力を持つ航空機。西側では旅客機改造型が、東側では軍用機を改造したものが多い。
(※3)計2発を~
ただしF-35は最大でミサイルを1つの爆弾倉に3発搭載可能であり、さらにステルス性を犠牲にした場合、主翼下にも各3発搭載出来るので最大12発搭載可能。
やっぱり空中戦で勝利をつかむのはミサイルを多数搭載出来て、長射程を捜索出来るレーダーを持つ優れた機体による数の暴力であると私は思っている。
(※4)A-50
ソ連製のAWACS。ちなみにNATOではメインステイ(大黒柱)と呼ばれている。露中戦争ではKJ-2000と呼ばれる中国製のデッドコピー版が中国軍によって投入されているが、ロシアのオリジナルに比べれば管制能力などは劣っていた。