14話
本話中でのR-27ミサイルの性能が低いとおっしゃられる方がいると思いますが、人民連邦が所有するR-27は旧北朝鮮軍が所有していたもの故に長期間劣悪な環境にあった事や人民連邦の整備力の低さ故に本来の性能が発揮されていないと言う事を表現するための描写です。
2020年8月某日、日本・福岡上空
航空自衛隊戦闘機隊指揮官機内
「攻撃隊のミサイル発射を確に…………ん?3佐、敵戦闘機隊より中射程ミサイル、恐らくR-77が発射された模様です!!」
指揮官機であるF-2Bの副操縦士で、火器管制員を務める山辺1尉がそう言うと制空部隊の指揮官であり、操縦士である俺、3佐である俺、倉田正治はすぐに「ウィング1よりウィング及びブレイブ、フェニックス隊各機、どうやら敵さんがR-77(注1)級の中距離空対空ミサイルを放ったみたいだ。十分に注意しろ!」と続く。
と同時に倉田は各機に対して散会と妨害電波に喰い付くミサイルの特性を説明し、もしもそのミサイルが迫ってきた場合は電子妨害では無くチャフをばら蒔く様に命じ、もしくは急激な回避運動を取るように命じた。
(……敵機から電波照射が続いているだと?これはまさか!!)
倉田がそう思うとすぐにミサイルの種類に気付いた。そう敵が放ったミサイルはR-27、R-77に比べ運動性は劣るが、AIM-7スパローに比べると性能は互角のミサイルだ。とは言え、厄介である事は変わりない。
しばらくすると敵機のレーダー波が照射されている事を示す警報音が鳴り響くと俺は操縦桿を急激な機動を取る。やがて警報音が鳴り止むと山辺が「フォームよりアルファ、先ほど放ったAAM-4の内、12発のミサイルの内、10発が敵機に直撃、かなりの命中率です!!」と嬉々として報告する。
そう、敵機の放ったR-27はアクティブとセミアクティブ、どちらでも誘導可能なAAM-4と違いセミアクティブによる誘導であり、ミサイル自体にレーダーは付いておらず、母機からのレーダー波を受信する受信装置しか装備されていない。
故に発射母機を失ったミサイルは明後日の迷走していく。
だが敵編隊は所属機の2/3を喪失してもそれでもなお果敢に向かってくる。
彼我の機数の差は18対8。圧倒的にこちらが優勢だが、ロシア製赤外線ミサイルR-73(※3)は非常に厄介な存在である。
閑話休題。俺はミサイルが迷走し、どこかへ飛んでいくのを見届けず、間髪入れずに射撃管制装置を格闘戦モードへ切り替え………た次の瞬間であった『こちらサンダークラウド。こちらが掴んだ情報によると現在、戦っている編隊は別の攻撃隊の陽動部隊みたいだ』と早期警戒管制機から通信が入る。
すぐに俺はオペレーターに「ウィング1よりサンダークラウド。わかった、だったら応援を呼んでくれ。こいつらは俺たちが片づける」と言うとすぐにオペレーターは『了解。今日はあの部隊も出撃出来るそうだ。楽しみにしてろよ!!』と言うと俺は「そうか………あの部隊もこれるのか。これは心強いな」と返す。
そうあの部隊とは航空自衛隊の誇る仮想敵機部隊で、航空自衛隊の顔と呼ばれ、多くの国民に親しまれているアクロバットチームであるブルーインパルスに並ぶ凄まじいS級の操縦技術を持つ仮想敵機部隊、飛行教導隊だ。
もっとも彼らは教導や仮想敵機と言われるように任務は基本的に日本を侵略する仮想敵を演じ、航空自衛隊の戦闘機部隊の空中戦技術の向上ではあった。
閑話休題、果たして自衛隊は人民連邦から対馬を取り返せるのだろうか?
注1 R-77
NATO名はアッダー(マムシの意)。ロシアがソ連時代末期に開発したAIM-120B/Cに匹敵するないしやや上回る性能や射程を持つ高性能空対空ミサイル。
迎撃戦闘機のMiG-31と制空戦闘機であるSu-27や前述の2機種(High)に対するLowを担う前線戦闘機であるMiG-29に搭載する事が可能。
AMRAAMより優れた面はジャミング電波に喰い付くパッシブホーミングによる誘導能力を持つなどであり、運動性は互角か、やや上回ると推測されている。
注2 AAM-4=99式空対空誘導弾
1999年に採用された航空自衛隊の誇る中・長射程空対空ミサイル。
防衛庁や関連企業の技術陣が心血を注ぎ開発し、米国のAIM-120Cや欧州のミーティア、そしてロシアのR-77に対して性能的に劣らない高性能を誇る。
99%近いその命中率は近接信管の開発を困難にし、技術陣を大いに悩ませた。
スパローよりやや小型だが、AMRAAMより大きいと言う事もありF-15における搭載数に関してはAMRAAMが最大8発(ウィングレール込みで。AIM-9を積載しない場合のみ)に対し、AAM-4は4発とスパローからの変化は無い。
注3 R-73
NATO名はアトール。ロシアの3世代赤外線ミサイルの事。日本や米国の同世代ミサイルである90式空対空誘導弾(AAM-3とも)及びAIM-9Lに比べ運動性、命中性に優れてると推測され、日米欧はそれぞれAAM-5(05式空対空誘導弾)、AIM-9X、ASRAAMを開発している。




