11話
人民連邦残党は済州島に抵抗政府を作り、日米やロシアなどと戦う予定です。
11話 英亜の賭け(2) 被害
2020年8月1日15時57分
空母クイーン・エリザベス(Q・E)艦橋
「全ての航空機が空に上がったみたいだな…………こちら飛行甲板。全機発艦を確認。…………はい、わかりました」
飛行甲板上の主任者であるジョンソン中佐がそう言うと彼はメガホンを片手に叫ぶ。
「総員、応急処置に備えよ!」
彼がそう言うと甲板作業員達は一斉に準備を始める。同じように格納庫から甲板にミサイルなどを運ぶ武器課の兵たちは弾薬などの誘爆に備えて、安全服を既に着込んでいた。
一方、戦闘指揮所では
この暗い部屋で電測員たちがスコープを睨み、変化し続ける周辺空域の状況把握を続ける
「…………敵ミサイル及び無人機から強烈なレーダー妨害用の電波が発せられています」
ある電測員がそう言うと艦長のカー大佐は(もしかすると妨害してきていないものが本命だったのか?いや、そもそもそうじゃなきゃ妨害などかけてこないだろう)と胸中で思いながら「まさかじゃないが、こちらへの妨害をかけてくるミサイルは囮で、実はその電波の雲の下に本命のミサイルが隠れている気がするのだが……………」と呟いた。
すると司令であるゴードン少将も「恐らく連中はロシアから妨害担当の囮ミサイルをこちらが迎撃している間に本命のミサイルをこちらに命中させるように言われているはずだろう…………つまり完全にこちらは相手の思惑に嵌められた事になるかも知れないな……………」と続く。
しばらくするとモニターに映っていたのは電波妨害用ミサイルを撃ち落とした結果、表れた電波妨害の雲に隠れたミサイルの姿であった。
(予想通りだったな……………)
艦長はそう心中で呟くも、既に距離は30km。1分もすれば恐らく…………そう考えているうちに司令は即座に決断を下し、輪形陣を組んで空母を護る駆逐艦やフリゲート艦はアスター15やシーセプター対空ミサイルを放つ。無論、空母自身からも自衛用に搭載されたシーセプターミサイルが放たれる。
数秒後、艦対空ミサイルは多くの敵対艦ミサイルを撃ち落とした事がスクリーンに表示されるも残った3発のJ-20巡航ミサイルが最大のレーダー反射面積を誇る空母Q・Eへの命中ルートにあった。
「…………Sea RAM射撃開始!」
艦長がそう叫ぶとSea RAMミサイル発射機からスティンガーとサイドワインダーを足して2で割った様なミサイルが放たれ、
1発のJ-20が砕け散り、もう1発もその破片に巻き込まれて海面上へと墜落していった。
だが、残った1発は運悪く(アルゼンチンにとっては運良く)、突入ルートへの侵入を終えていたのである……………
やがて20mmCIWSの射撃が始まり、J-20は火を噴きながら高度を少し少しと落としていく。
が、その数分後。巨大な爆発が後部艦橋右舷に襲い掛かったのである。
空母Q・E戦闘指揮所
物凄い衝撃でこの部屋も揺れると艦内状況表示版の後部艦橋を示す部分のランプが緑から赤に変化したのである。
「後部…………いえ、航空艦橋に弾着!現在、航空艦橋からの応答はありません!」
通信員がそう叫ぶと艦長は「畜生……………まぁ良い。取り敢えずそれ以外の損傷、例えば飛行甲板はどうか!?」と聞く。
するとある電測員が「先程の衝撃で後部昇降機破損。昇降不能です。他にも甲板上に吹き飛んだ艦橋の破片が散乱しています!」と報告すると艦長は冷静に次の命令を下す。
「応急班は消火と甲板に散乱する破片や誘爆の危険性の高い弾薬を出来る限り投棄せよ。戦闘機隊はプリンス・オブ・ウェールズへの着艦を命じたいが、燃料を考えると無理だろうから甲板の掃除を急いでくれ!」と命じ、1時間後にはF-35隊は燃料だけを給油するとプリンス・オブ・ウェールズへと向けて発艦していったのである。
とは言え航空管制艦橋が破壊されている以上、全て手旗信号でのやりとりであったが………………
その頃、アルゼンチンやフォークランド諸島から見て地球の裏側、日本列島、ではなくその隣にある朝鮮半島南部に位置する済州島を出港した数隻の小型特殊潜航艇が対馬の北岸へ次々と潜入し、攻撃開始命令を待っていたのである。
3日後、海上自衛隊横須賀基地
「対馬の通信施設かた謎の電波が出ています!!…………こ、これは!!」
ある通信員の二等海曹がそう言うと司令部付の通信長である渡壁三等海佐が「わかった。とにかく市ヶ谷にこれを送っての指示を仰ごう!!」と続く。
すると別の通信員が大慌て走ってきて「対馬で立てこもり事件です!!犯人は人民連邦と思われる組織です!!」と伝える。
それを聞いた自衛艦隊司令は「やはりな………」と続き、すぐに市ヶ谷に電話をする。
数時間後、呉、佐世保、舞鶴、横須賀などから護衛艦が出撃態勢に入った。
それに先立ち三沢からグローバルホーク偵察機が、築城ではF-2やF-15と言った戦闘機に小型の偵察ドローンを搭載して飛び立っていくのであった。




