7話
7話 戦さは続く
ラプラタ戦闘指揮所
「サランディより入電。『我、戦闘継続不能也、更に機関室の浸水を確認。現在浸水により傾斜が増大中並びに発電装置の損傷により消火不能』との事です!」
通信員がそう言うとニシムラは表情を変えずに「そうか………なら乗員に対して退艦命令を下せ」と言う。すると通信員は泣きそうな顔で「はい…………」と続く。
だが、表面上はニシムラは冷静さを保っていたが、彼自身も中佐時代にサランディと同型艦であるラ・アルヘンチナの艦長を務めた経験があり、思い入れのある船ではあったので、実は非常に悲しい気分であった。
やがて乗員たちが全て海へと飛び込むと周辺のアルゼンチン海軍艦艇がサランディの乗員を救出すべく国際信号旗を掲げ、"我、他船舶の溺者を救出中"と救出中に英軍による誤爆されないように国際無線でこの海域で行動しているアルゼンチン軍艦は沈没間近な軍艦の乗組員を収容していると言う事を表明したのである。
この信号旗と無線を聞いている限りを掲げている以上、よほど非常識な国でない限り攻撃する事は無いであろう。
もっとも交戦国が常識的な国であっても、現場指揮官が非常識で、救助中でも攻撃される可能性があるかと言えば否定出来ないのではあるが。
確かに救出が終わり、一時的にアルゼンチン軍艦が諸島へ引き上げるまで英航空部隊は攻撃を実施しなかったのは事実である。
第2次世界大戦、いや太平洋戦争のとある海戦において空襲を加えた後にA国の戦艦は動けなくなった当時のA国の敵国であったJ国の駆逐艦に対してさらなる攻撃を加え、脱出者に機銃掃射を加え、動けなくなった駆逐艦の全乗員を皆殺しにした。そしてこの戦争においてもある爆撃任務に就いていた英国海軍のF-35の操縦士の中に暴挙に出たものもいたのである。
なお、その理由は38年前に戦死した父の復讐だと彼は語ったと言うが……
その彼の事件が発覚したことで今回の戦争の意義が問われ、英国中を巻き込んだ大きな討論となったのは別の話である。
閑話休題。
沈み逝く船から飛び込んだ負傷している水兵たちは別の船に縄で引き上げられるか、自ら縄梯子で乗り込む。そして甲板では収容した船の乗員たちから必要最低限の手当てを受ける。
甲板に上がったニシムラは負傷兵をみて「何てこった」と呟く。
そしてニシムラは拳を強く握り締めた後に自らも負傷兵を励まし、ガーゼなどを持って手当てに加わったのである。
一方、多数の対艦ミサイルを搭載出来るSu-24爆撃機とミラージュⅤを改造し、2017年の軍備増強計画で購入したロシア製衛星によって管制される大型巡航ミサイルは護衛戦闘機の中国製のSu-27であるJ-11のアルゼンチン独自改良モデルであるSu-27K+Alz、通称”コンドル”戦闘機と2017年からライセンス生産され、アルゼンチンにとって新たな主力戦闘機となったMiG-29を伴って超低空を英艦隊へと向かっていたのである。
が、英軍は自国の軍事衛星による捜索やアセッション島に配備されているE-767それにE-3AWACSと同島や空母に配備されているCAPのF-35戦闘機で構成された早期警戒システムと優秀なミサイル防空システムであるSAMPSONを備えたデアリング級駆逐艦によってアルゼンチン側の攻撃を待ち構えていたのである。
空母プリンスオブウェールズの甲板では多くの航空作業員が搭載機である多数のF-35の爆弾倉や主翼にVBR戦闘用ミサイルであるAIM-120やWVRもとい格闘戦用ミサイルのAIM-132を搭載していたが、一部の機体はウェポン・ベイに何も搭載しない代わりに胴体の下部に25㍉機銃を搭載し、接近空戦にも備えていた。
一方、同艦のOR(※1)では…………
「サンダー・ストームAWACSより入電。『我、アルゼンチン空軍機を多数を感知。各隊は交戦準備を整えよ!』との事です!」
電測員がそう言うと艦隊司令のウォーレン少将はすぐにF-35の発艦命令を下す。
すると甲板で待機していたF-35は既に始動していた地上や甲板では推力が最大で18tにもなる強力なパワーを持つエンジンを全開にし、発艦に備える。
そして発着作業士官がゴーサインを送るとF-35は甲板を蹴って空へと力強く舞い上がる。
(※1)OR=Operation Roomの略
英国やカナダ、豪州などの英連邦加盟諸国でのCombat information Center=戦闘指揮所の事を指す言葉である。




