閑話 アンリエスト襲撃②
前回の投稿で『来週中には次話を投稿したい』旨発言してしまいましたが、遅れてしまい大変に申し訳ありませんでした。ここにお詫びして訂正いたします。
投稿が遅れてしまったことは大変に申し訳なく思い反省しておりますが、一つ言い訳させていただきますと、今回の投稿のボリュームは過去最大であり、なんと通常の投稿のおよそ2~3倍の文字数となっております。決してサボっていたわけではございません。
分割投稿も考えましたが、閑話であることもふまえ、話は繋がって一気に読める方が良いかと思いこのように一括で投稿する形を取らせていただきました。
書き終わった直後で確認もせずに投稿しますので、誤字含む修正は後日改めて行わせていただきます。
◆◆◆
アンリエスト王都 白雪宮殿 アリアレイン
「アリアレイン様、紅茶のおかわりはいかがですか?」
貴賓室の豪奢なソファに埋もれながら出されたケーキをもっしゃもっしゃと貪っているアリアレインに、エルフ族のメイドが声をかけてくる。
「うむ。いただこうか。それと、このフルーツのタルトとやらももう1ホール貰おう。うむ。甘すぎず酸っぱすぎず、紅茶にもよく合う。これは正に絶品だな。製作者に我が褒めていたと伝えるがよい。オーク族の女だったか? 見事な研鑽だ」
「かしこまりました。確とお伝えさせていただきます。アリアレイン様のそのお言葉を聞けば、パティシエもきっと喜ぶことでしょう」
恭しく一礼して、メイドがケーキを取りに厨房へと戻っていく。
「長らく森に引き籠っていた我が、今こうして宿敵である人族の城でくつろいでいるというのも不思議な話ではあるが……」
言いつつ目の前に残っているケーキの最後の一欠を口の中に放りこむ。
むしゃむしゃと雑に食べているように見えながらも、実のところは舌先に消えていく最後の余韻まできちんと楽しんでいるアリアレインであるが、湊と手を結んでこの城に居つくようになり、彼らと同じ食事を取るようになってから、実は自分はかなりの美味いものに目がない食いしん坊だったということに気が付いた。
なにしろ、神竜族は濃い魔力さえあれば生きていける。
そのために魔の森の奥地に居座っていたのだ。
このアンリエストでも十分な魔力供給量は確保できているが、そもそも今は湊から無限に魔力が供給されてくることから、もはや環境に左右される必要はなくなった。
このように神竜族であるアリアレインにとって食事などはあくまでも嗜好的行為にすぎず、極論を言えば生命維持には何の貢献もない。
そもそも森の中で取れる食事などせいぜいが大型の魔獣を生で齧るか火で炙るかくらいしかなく、調味料の概念すらなかった身としては食事とはかなり味気ないもので、必要に迫られもしないのに進んで行いたい行為ではなかった。
そのような事情もあり、アリアレインは自分が食事行為をそれほど好きではないのだと思い込んでいたのだ。
だからこそ、実はかなり味にうるさい美食家だったという自分の新たな一面に気が付いて、内心愕然としている。
あれほど憎んでいたヒト種にさえも、湊という男を認めることができたおかげで、全てを一括りに敵と決めつけるのではなく、敵と味方を分けることで全てのヒト種を敵と考える必要はないということも学ぶことができた。
それでもヒト種が好きではないという基本的原則は変わらない。
だが、ヒト種の中にも認めるに足る人物がいることに気づけたことは大きい。
その心の余裕のおかげで、今こうして絶品の菓子を口にすることが出来るわけである。
「ケーキのお替り、お待たせいたしました」
「うむ。ごくろ…………」
途中まで言いかけて、アリアレインは表情を一変させると、急にその場から立ち上がった。
無意識のうちに身体から魔力が放出され、瞬く間に部屋中を埋め尽くしてしまう。
そのあまりの迫力に、いつもは完璧に取り繕っているメイドが、動揺を隠しきれず思わず身じろいでしまっていた。
「い、いかがなさいましたか? 私に何か粗相でもございましたでしょうか?」
「いや…………」
不安そうな表情を浮かべるメイドに、アリアレインは静かに首を振る。
「心配するな。主の対応は完璧であったよ。出された食事もな」
「それでは、何か他に気に障ることでも?」
「…………うむ。どうやら外から招かれざる客が来たようだ。折角出してもらったところ悪いが、ケーキと紅茶は一度さげておいてくれ。野暮用が済んでから改めていただかせて貰うとしよう」
「…………っ! かしこまりました。パティシエにもその旨お伝えしておきます。それでは、いってらっしゃいませ。及ばずながらアリアレイン様のご武運をお祈りしております」
アリアレインの言った「招かれざる客」という言葉に察するものがあったのだろう。
メイドは即座に表情を引き締めると、その場で深々と頭を下げた。そして、アリアレインが部屋を出るまでその姿勢を維持する。
神竜である自分が言うのも変な話ではあるが、実に見事な所作であった。
「うむ。我に任せるがよい。ああ、それと…………」
メイドに見送られながら部屋を出る直前、彼女の方を振り返るとアリアレインは言葉を残す。
「敵襲の件、カタリナたちにも伝えておいてくれ。おそらくは気づいているだろうが、念のためにな」
「了解致しました。責任もってお伝えしておきます」
「では行ってくる」
告げるのと同時に、アリアレインは勢いよく窓から外に飛び出した。
この都市へ向かってくる強大な魔力を感じて、アリアレインは思わず身震いした。
もちろん、恐怖からではない。
あり余る歓喜によって、湧き上がる興奮を抑えることが出来なかったからだ。
「待っていた! 待っていた! 待っていた! 待っていた! この時が来るのを我はずっと待っていた!!!!!」
こちらへ向かってくる大きな魔力反応は二つ。
そしてその内の桁違いに大きい方、その魔力をアリアレインは知っている。
何百年、何千年経とうが忘れるわけがない。
まだ幼い自分を人質に取ることで無抵抗になった母親を無残に殺め、その神竜殺しの功績を以て己のことを神と自称する、この世界で最大最悪の詐欺師の魔力なのだから。
湊からあらかじめナトーヤの使徒が襲撃してくる可能性は低いと聞いていたからそれほど期待していなかったのだが、ここへきて棚から牡丹餅とばかりに使徒どころかナトーヤ本人までもがのこのこ自分の前にやって来てくれたのだ。
なんという僥倖か。
予想外に訪れたこの幸運をアリアレインは喜ばずにはいられない。
ただ、一つだけ疑問があった。
ある日突然ナトーヤはこの世界から姿を消した。
何やら精神生命体のような形でその意思だけは現世に影響を及ぼしている形跡はあったが、少なくとも物理的・肉体的意味では間違いなくこの世界から消滅していたはずなのだ。
時の魔女王(いつも湊の傍に張り付いて周囲に敵愾心を向けているあの銀髪の女がどうやらその当人であるようなのだが)と相打ちになって現世での肉体を失ったのだという事実を、アリアレインはつい数年前に湊から聞いて初めて知ったのだが、それを聞いた感想はというと、肉体を失って精神だけの存在になり果てたナトーヤに対するザマみろという気持ちがある一方、自分自身の手で止めを刺せなかったという悔恨による強い消化不良感がぬぐえなかった。だが、どうしてか理由は分からないものの、感じる魔力の鮮明さから考えて、今のナトーヤは新たな肉体を得ているとしか考えられなかった。
死んで消えたはずのナトーヤがのうのうとこの世界に復活していることに対して、アリアレインは激しい不快感と怒りを覚えた。
アリアレインの母を取り込んだおかげで、肉体を失った後も精神体として現世に影響を及ぼしていること自体が納得いかないというのに、新たな肉体を受肉し復活を果たしたなど到底許容できるはずがなかった。
しかしその一方で、これは自身の手でナトーヤを消滅させることが出来なかったという長年に渡る不完全燃焼を解消する千載一遇のチャンスが訪れたということでもあるのだ。
唯一懸念されるのは、ここでナトーヤを髪の毛一つ残さずこの世から消し去るのは簡単だが、そうしたところで再び精神体に戻ってしまうだけで、いつかまた今回のように受肉してしまうのではないのか? という点である。
この問題が根本的に解決しない以上、うかつに殺すのもためらわれてしまう。
アリアレインが湊に敗北したことで精神生命体として彼に囚われてしまったように、アリアレインの母親もナトーヤに囚われている可能性は極めて高い。
ナトーヤを殺したことで彼が再び精神生命体の形態に戻ってしまうということは、即ち、ナトーヤの中に取り込まれたアリアレインの母親が解放されないままであるということでもあるのだ。
心の中は激しい怒りで煮えくり返っているものの、その程度の判断が出来るくらいにはアリアレインにもまだ冷静さが残っているようだった。
この問題についての解決策については、アリアレイン側にも一つだけ腹案はあるのだが、残念ながらそれを今ここで実行するには条件が足りていない。
悔しいことこの上ないが、状況が整ってから改めて試みるより他ないであろう。
――とはいえ、命までは取らないまでも、憎っくきナトーヤを徹底的に叩きのめすことくらいまでならばこの場でも出来る。
本当に、本当に心の底から残念でならないが、少なくとも今の段階ではその程度でとりあえず溜飲を下げてやるしかないようであった。
◆◆◆
アンリエスト王都近郊 皆本敏也
「あれが湊が治めているっていうアンリエストか? ふん、意外と規模がでかいな。ってか、へムガールの帝都クヌトラより立派なんじゃねぇのか? ちっ、生意気な!」
トンガール、ヘムガール方面からアンリエストへ続く街道。
その道を一際豪勢な造りの馬車がゆっくりと進んでいく。
視界に小さく見えてきた都市を目を細めながら眺めやる敏也は、忌々しそうに舌打ちする。
「かつて西方一帯を全て支配していたという巨大帝国の首都だった都市ですからね。しかし、黄金竜の襲撃で随分と衰退したと聞いていましたが、予想に反してその痕跡があまり……というか全く見られませんね……」
「そりゃまあ、あの湊の野郎が支配する都市だからな。神無の技術が関わってんだ。あれくらいの復興は朝飯前だろうさ。とはいえ、せっかく立て直したっていうその都市も、これから俺たちに廃墟にされちまうんだけどな」
「痛快な話ですな」
二人揃って下卑た高笑いを上げる。
「では、そろそろ始めるとするか。いいか、女は殺すなよ。若くて美しい女は特にな」
「もちろんです。と言いたいところなのですが……。ご存知かと思いますが、私の能力上それを完璧に遂行することは少々難しいのです。この身では敏也様の意向に沿えるよう最大限配慮いたしますとしか言えませんが……」
「ああ、お前の能力が小回りの利かない大雑把なものであることは知っている。出来る範囲でということでいいさ」
「申し訳ございません」
「気にすることはないさ。では、かかるとするか」
「はっ! それでは僭越ですが、まずは私めから……」
そう言うと、コーラルは己の能力を解放する。
ズゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!
激しい地響きを立てながら、二人の前に岩でできた巨人が出現してくる。
全長はおよそ20メートルほど。重さに至っては想像することさえ憚られるが、最低でも数十トンはあるだろう。
武器などは一切所持していないが、もはやその巨体と質量そのものが兵器だ。
そしてどういう訳だろうか、その岩のみで構成された人型の物体が、関節などがあるわけでもないのにまるで実際に人が動いているかのように滑らかに動くのだ。
そしてそれ以前に、そもそもがあの途方もない自重をどうやってあの二本の足で支えているのかすら分からない。
物理学や量子論が泣いて逃げ出す、正に能力が成しえるファンタジーの賜物といえる。
『巨人兵召喚』
岩で出来た巨人を作り出し、自由に操る。
これこそがナトーヤ神が誇る第9位の使徒、コーラル・ニア・ダルノの能力であった。
更に言うのなら、一度に生成できる巨人の数はざっと10体。
あんなのが集団で都市を破壊して回ったらと考えると、トンガールの都市を彼一人で壊滅させたという話も納得が出来るというものだ。
事実、目の前の巨人によってアンリエストがあっという間に灰燼に帰す姿が、今の敏也の脳裏にもありありと想像できる。
実際、20メートル越えの巨人たちが10体、一斉に横並びになっている姿は壮観としか表現しようがなかった。
「行けっ!」
コーラルの指示の元に10体の巨人たちが眼前の都市へ向けて一斉に動き始める。
ズシズシと地響きを上げながらも機敏に進んでいくその姿は、その巨体と質量からはとても想像できないほどの機動力だった。
そんなゴーレムがちょうど自分たちとアンリエストの中間地点辺りにさしかかろうという時、敏也はその進路の先に小さな人影があることに気が付いた。
「ん? 女か? 」
その人物の身長は150センチそこそこ。比較対象のゴーレムの巨大さを抜きにしても小柄な、女……というか、地球基準ならまだ中高生と言ってもいい年齢の少女のようだった。
「あのような年頃の少女がどうして……?」
ここは地球でも神無でもない。
ここは女性、それも少女と言ってもいいまだうら若い女が一人で気軽に都市の外に散歩できるほど治安が良い世界ではないのだ。
「何か急ぎの用でもあったのか?」
首を捻りながらもよくよく目を凝らしてその少女を見た次の瞬間、敏也は思わず目を見張った。
距離があるここから見てもはっきり映える特徴的なオレンジ色の髪を肩口で切り揃えたその少女は、敏也がこちらの世界に渡って来てから見た中で最も美しい美貌の所有者だったからだ。
「まずい、このままだとせっかくの美少女がゴーレムに潰されちまう! コーラル、ゴーレムの動きをとめ……」
とっさにゴーレムの動きを止めようとするが、敏也がコーラルに声をかけた時点でゴーレムの足は少女に向かって踏み下ろすモーションに入っていて、今さら静止したところでとても間に合うタイミングではなかった。
敏也の静止を受けたコーラルもとっさにゴーレムの動きを止めようとするのだが、時既に遅し。
ズン! と大地を震わせながら、無防備な少女に向かって無慈悲に下ろされたゴーレムの足。
(あれほどの美少女を手に入れるチャンスだったってのに、くそっ、もったいねぇ)
人一人の命が失われようとしているのに、その瞬間に敏也が考えていたのはそんなクズ極まりない内容だった。
「トシヤ様、静止が間に合わず申し訳ございません」
「いや、気にしなくてもいい。あのタイミングからではどうやっても間に合わないことは俺にも分かる。惜しい美貌の持ち主だったが、潰れちまったのならそれはもう醜い死体だ。これから別の女を見繕えばいい」
「誰が醜い死体だというのだ?」
「そりゃあのゴーレムの足元の女って……はぁ?」
「なっ!」
突然かけられた女の声に、敏也とコーラルは驚愕のあまり揃って目を剥いた。
敏也の目の前に、ゴーレムに踏み潰されて死んだはずのオレンジ髪の美少女が、まるで何事もなかったかのように佇んでいたからだ。
「お、おまっ、なんで生き…………」
「何を言っているんだお前は、我があのような雑魚にやられるわけがないであろうが」
挑戦的な鋭さを放つ少女の瞳が、つまらなそうにすぼめられる。
「お、俺のゴーレムが雑魚だと? ふざけるな!」
「ふざけるなも何も、現にこうしてあの岩人形の攻撃を受けても我は無傷のままだ。逆に聞きたいが、雑魚以外にどう表現すればよいというのだ?」
「受けた……だと? 避けたの間違いではなくてか?」
「あんな重さでのしかかるだけのつまらない攻撃なぞわざわざ避けるまでもない。片手で軽く受け止めただけだが、それがどうした?」
「あの重量を片手で受け止めただと? お前、アンリエストの能力者か?」
「能力者? ああ、祝福者のことか?」
「なるほど。確かこちらの世界では祝福者と言うんだったな。それでだ。お前は湊の野郎の部下ってことで間違いないな?」
「ふむ。部下とは少し違うな。どちらかというと協力者、または同志のようなものではないかな?」
「協力者だと? お前、何者だ?」
敏也が問うと、少女は最初少しだけ驚いたような表情を見せていたが、やがて何かに気が付いたのか、くくくと忍び笑いを漏らし始めた。
「そうかそうか。我のこの髪を見ても誰か分からぬとは、見てくれが変わったというだけじゃなく、記憶も完璧に継げでいるわけではないのだな。これは面白い。面白いぞ、ナトーヤ」
「…………どうして初対面のお前が、俺がナトーヤ神の化身だということを知っている?」
どういうわけだろうか? 挑戦的な視線を向けてくる少女の、その特徴的なオレンジ色の髪を見ているだけで、不思議と背筋に冷たい汗が伝い落ちていく。
それだけではない。
自分の中に芽生えた新たな能力、そこに宿るナトーヤ神の意志がさっきから「逃ゲロ、早ク逃げロ」と懸命に警告を鳴らしている。
…………とはいえ、敏也にも立場というものがある。このまま何もせずにすごずご撤退などという弱気を見せたら、神としてのナトーヤの威厳にも関わってきてしまう。
今の自分が全力を出せない状態であるとかそういう状況は、表面的な話を聞いただけの世間には伝わらない。『少女からナトーヤ神が逃げ出した』という事実の一面だけが独り歩きしてしまうからだ。
だからこそ、最悪撤退を選ぶにしても、その前に何でもいいから形になる成果を残してからでないとならないのである。
「何なんだ、お前は……? 一体、俺の何を知っている?」
「さあな。人にばかり頼らずその空っぽな自分の頭でちょっとは考えてみたらどうなのだ?」
「貴様、さっきから黙って聞いていれば、トシヤ様に不敬だぞ!」
少女の態度に耐えかねたのか、コーラルは都市へ向かっていたゴーレムの一体を呼び戻し、不遜な言動を繰り返す少女への攻撃を指示した。
「死ねぇ!」
ゴーレムは少女の目の前に仁王立ちすると、右腕を頭上まで大きく振りかぶって、一気に振り下ろした。
先ほど少女を襲ったような移動中に踏みつけてしまったという事故もどきではなく、超重大質量の拳に加速をつけた明確な殺意を乗せた攻撃だった。
少女を生け捕りにしようなどという考えは一切ない、本気で少女を殺しにかかる一撃。
(おいおい、美少女は極力殺すなって言ったよな? 確かに敏也に対する不遜な態度は目に余るものがあったが、だからといって問答無用で殺しに行くとか、沸点低すぎだろ⁈ これだから狂信者は…………)
…………とは思うものの、一方で敏也自身目の前の少女に言葉に言い表せない不気味さを感じていることもまた事実。
少女の持つ類まれな美貌を惜しいとは思うものの、リスクとリターンを天秤にかけるなら、むしろコーラルの行動の方が正解なのかもしれない。
色ボケにうつつを抜かすのも命あってのことだ。
とにかく、うっかり踏んづけてしまったのと、故意に殴りに行ったのでは、その威力や破壊力に雲泥の差がある。
運動エネルギーが質量×速度の解で算出されると考えれば、速度が乗っている後者の方がより威力があるのは自明の理である。
要するに、今ゴーレムが放っている攻撃は、先ほど彼女が受け止めたと称するものとは桁違いの破壊力を持っているということだ。
まるで天から振り下ろされる巨大なハンマーのごときその一撃は、その様子をうかがっていた敏也のところまで地響きが伝わってくるほどの威力を持っていた。
しかし――――
「さっきりょりは少しだけマシな威力になったようだが、所詮はこの程度か」
振り下ろされたゴーレムの拳の下には、それを頭上に掲げた左腕のみで受け止めた少女が、先ほどまでと何ら変わらぬ平然とした表情で佇んでいた。
彼女を圧し潰さんと、攻撃を受け止められた今もなおゴーレムは力を入れ続けているようだったが、そんな巨人の奮闘でさえ、ヒト種にあっても小柄な部類に入る少女には何の意味もなしていなかった。
「ば、ばかな! 我がゴーレムの全力の一撃だぞ? それをあんな受け止められ方をするなど、そんなことがあるはずがないっ! あっていいはずがない!」
よほど自信があった一撃だったのか、あっさりと対処されてしまったショックのあまり我を忘れてヒステリックに絶叫しているコーラル。
一方で、そんな彼を眺めている少女の目は冷ややかだった。
「なんだ。もう終わりか? 期待していただけに正直かなり物足りないが、本命は別にいることだしさっさと終わりにしてやることにしよう」
言うな否や、ゴーレムの攻撃を受け止めている少女の腕が黄金色の輝きを放ち始める。
その次の光景に、敏也とコーラルの二人は、思わず見間違いではないかと我が目を疑った。
少女の放ったその黄金色の光に触れた部分から次々と、まるで一つ一つの細胞や原子がその結合から解放されるかのように細かく分解され、まばゆく輝く光の粒子となって次々と空に立ち昇って消えていく。
次の瞬間にはあの巨大な岩でできたゴーレムが、まるで最初から何もなかったかのように、きれいさっぱり何の痕跡も残さずに消滅してしまっていた。
その一連の工程を言葉で説明するとゆっくりと進行したように感じられるのだが、実際は限りなく刹那に近い時間で完了している。
ナトーヤの力を得て円卓並かそれ以上の力を得た今の敏也でさえ、まるで炎のように立ち昇った光が一瞬でゴーレムを包みこんで、ボッと弾けるように消えた――程度にしか認識できなかった。
敏也ですらこんな感じなのだから、コーラルにとってはご自慢のゴーレムが一瞬で消え去ったようにしか見えなかっただろう。
「我がゴーレムが一瞬で! 貴様、一体どこへやった! 返せ、今すぐ返せっ!」
半狂乱で叫ぶ姿は敏也の目から見ても正直なところ煩わしかった。まして自分たちの敵であるオレンジ髪の少女がそれをどう感じたかなどもはや深く考える必要もないわけであり…………。
「うるさい!」
そのたった一言で、コーラルは一瞬の内に両手足を消滅させられ、達磨状態になってしまっていた。
「ぎぃやあああああああああああああああああっ!」
自身を襲う苦痛で地面をのたうち回るコーラルを見て、先ほどに輪をかけてやかましくなった気がしないではないが、それを丁寧に指摘したところで今さらどうなるわけでもなかった。
何より、理不尽ともいえるあの攻撃が次に向けられる相手は間違いなく自分であろうことから、これから先は少女の一挙手一投足から一瞬たりとも目を離すわけにはいかなかった。
「くそっ、てめぇ。なんだその能力は。反則だろうが!」
「他人の能力を借りているだけのお前に言われる筋合いはない」
「借りてるんじゃねぇ、これはもう俺の能力だ!」
少女が放った一撃を、とっさにナトーヤの能力『神の盾』で凌ごうとするが、恐るべきことに少女の放った攻撃は外からの攻撃に無敵であるはずの『神の盾』さえもあっさりと貫いて敏也に迫ってくる。
「くっ、『次元回廊っ!』」
とっさに時空系能力を使って瞬間的に少女の後背に転移することでかろうじて直撃を回避する。
あと少しでも判断が遅かったら一巻の終わりだった。
「今度はこっちの番だ。くらえ! 『神炎っ!』」
敵の攻撃の撃ち終わりに、死角である背後に転移してからの不意打ちだ。対処できるはずがない。
そう思っていたのだが…………
少女は、後ろを振り向くことすらせずに右腕を一閃する。
敏也の放った『神炎』と、少女の放った攻撃が両者の間でぶつかり合い――そして、なんということか、敏也の『神炎』は少女の攻撃によって光の粒子になって一瞬で消滅し、更に次の瞬間には、灼熱の痛みとともに敏也の左腕の肘から先が消し飛ばされていた。
さらなる追撃を防ぐため、痛みを堪えつつもとっさに転移で距離を取る。
「くっ、痛てぇ……。ちく、しょうめ……。『神炎』を打ち消しただけでなく『神の盾』まで貫いてくるとは、なんてデタラメな能力だ。しかもあの女、自分が背後から不意打ちされることまで完全に読んでやがった…………」
「我の能力の前にはいかなる攻撃も防御も意味をなさない。伊達や酔狂で神竜最強個体と呼ばれてはおらぬ」
「神竜……だと? 神竜族ってのは人の姿に化けられるのか?」
「その程度のこと、ナトーヤの奴に聞いてみたらどうなのだ? 奴は知っているはずだから正しい答えを教えてくれることだろうよ」
「どういうことだ?」
「さあな。だがもう一つ指摘させて貰うと、不意打ちを読まれていたことに驚いていたようだが、自身の身が危機に陥った際、貴様がとっさに『次元回廊』を使うことは分かっていた。である以上は、魔力の流れに気を払って出現する場所に攻撃を加えればよいだけだ」
「『次元回廊』を使うことが分かっていただと? なぜだ!」
「むしろそれをお前が我に問うのかと言いたいところだが、当たり前だとしか言いようがない。何しろ、お前が得意げに振りかざしているその『時空間支配』の能力は、ナトーヤのものではなく我が母のモノだからな。それがどういう能力でどう使うものなのか誰よりも知っている」
「お前の母親の能力だと? それはどういうことだ?」
「ふん。自分でナトーヤに確認したらどうなんだ? いかに卑劣な手段で我が母を殺め、その力を手に入れたのかをな」
「何を言っている。ナトーヤの能力に他者から能力を奪う力など存在していない」
「分からないのならそれでいい。過去の事実は変わらぬし、我がお前を叩きのめす未来も変わらないからな」
「くっ」
攻撃の予兆を感じてとっさに転移する。
しかし、転移が完了した瞬間、避ける間もなく右足が衝撃とともに弾け飛んでしまう。
「ぐぁああああああああっ!!!」
片足を失い、もはや立ち上がることすらできずに敏也は地面をのたうち回る。
やばい、やばい、やばい、やばい、やばい! このままではやばい。一体どうすればいい?
絶体絶命の状況の中、あらん限りの力を振り絞って、敏也は必死に思考を巡らせていく。
激しい痛みと出血で何度も思考が中断されそうになるが、もはや痛みがどうとか言っていられるような状況ではなかった。
この状況を打開できる一番確実な方法は、転移による脱出だ。そんなことは分かっている。
しかし、視界に入るくらいの近距離ならばともかく、例えばここからへムガール帝国の首都まで飛ぶような長距離転移ともなると、それなりの魔力収束時間が必要になってしまう。
前者では魔力の流れで転移先がバレてしまっていることから攻撃の絶好の標的となってしまうし、後者はそうしたい気持ちはやまやまだが、長々と魔力を収束させるだけの時間が稼げない。
何とかして目の前の少女の気をそらさないといけない。
しかし、どうやって?
答えが見つけられないまま何かヒントになる物はないかと周囲に視線を巡らせていると、ふと視界の先にコーラルの生み出したゴーレムたちの姿が映り込んだ。
それを生み出したコーラル自身は四肢をもがれ地面に倒れ伏している。おそらく意識もないであろう。
だが、彼の能力で発生したゴーレムは、一度生み出され命令を与えられれば、そこから先は己に与えられた命令を遵守するのみだ。
コーラルが起きていようが寝ていようが、最悪死んだとしても関係はない。
要するに、彼の生み出した10体のゴーレムの内1体はオレンジ髪の少女に消滅させられてしまったが、残りの9体は当初の命令通りアンリエストを壊滅させるべく都市に向かって進撃している最中であったのだ。
とはいっても、目の前の少女にかかってしまえばそれらもそう時間がかからず全滅させられてしまうであろうが、それでも敏也が長距離転移を行うだけの魔力収束時間を稼ぐには十分なはずである。
生還への唯一の道を見つけた敏也は、起死回生の勝負に出ることにする。
「い、いいのか? コーラルの生み出したゴーレムは、仮にあいつが死んだとしても消えない。そして与えられた命令を、遵守する。見ろ、もうすぐ都市に到達する。今すぐ、戻らないと間に合わない、ぞ」
痛みと出血で息も絶え絶えになりながらも、少女の意識をゴーレムへ向けるため懸命に言葉を紡ぎ出す。
「ゴーレム? ああ、あの木偶の坊のことか。心配するな。今この都市を守護しているのは我だけではない。見よ!」
いよいよアンリエストの外壁に至ろうとするゴーレム達。
先頭を走る一体が、コーラルの命令通りに都市に破壊をもたらさんとその巨大な腕を振りかぶる。
しかし、最後までその腕を振り下ろすことはかなわなかった。
振りかぶったその腕のみならず巨大なゴーレムの全身が、四方八方から伸びた無数の糸によって縛り上げられて身動き一つ取れなくなってしまっていたからだ。
ゴーレムは自身の巨体を支えるほどのあり余るパワーで自らを縛るその糸を引き裂こうと試みるが、その身を押さえ込むその糸は信じられないほどの強度を発揮し、完全にその動きを封じてしまっていた。
「無駄じゃ。その程度の力で引きちぎれるほど我が魔糸は弱くはない」
そうゴーレムに告げた言葉の主は、美女の上半身に強靭な八本足の蜘蛛の下半身という一際目を引く異形の持ち主だった。
敏也は初めて見たが、この世界でもひときわ希少であるとされる蟲人族、その中でも蜘蛛人族で間違いないだろう。
蜘蛛の糸に絡め取られたゴーレムは、動きを封じられたのみならず、その強靭な糸でギリギリと締め付けられていき、ついにその巨体はバラバラに引き裂かれてしまった。
「これが使徒が作り出した人形か。思ったよりも脆かったようじゃの」
つまらなそうな表情を浮かべながら、蜘蛛人族の女はコーラルが聞いたら発狂しそうな感想をボソリと漏らした。
「コーラルのゴーレムがあんなにあっさりと……」
驚愕する敏也をよそに、なおもゴーレム達の敗北は続いていく。
ある個体は、両手に剣を携えた黒髪の猫人族の女の、その卓越した剣術によって切り刻まれた。
またある個体は、白銀の髪を持つ女の操る無数の魔法陣から放たれた魔法の集中砲火を食らって千々に砕け散った。
全身真っ白い鎧を身に纏った長い金髪をポニーテールにした女(※1)には、両手に構えた剣の先端から放たれた極大レーザーによって胴体に大穴を穿たれたことで、その動きを強制的に永久停止させられ。
一番奥で深くフードを被っている人物(※2)が放った黒い球体が命中した個体は、ぐしゃりと地面に圧し潰されてしまった。
「アンリエストにまだこれほどの戦力が残されていただなんて……。俺は、聞いてねぇぞ…………」
敏也は、それが極めて希少性の高い激レア能力であるがゆえに、使徒契約により強力な配下を増やせるのが自分たちだけだと完全に思い込んでしまっていた。
自身の前例がある以上は、他者もまた使徒化を行使できたとしても何もおかしくなかったのだ。
「確かに予想以上の戦力だ。だが見ろ、残りの四体はもう城壁に届くぞ。いくらあの連中だとて今から駆け付けたのでは絶対に間に合わない。ざまあ、みろ」
小さく笑って勝ち誇りはしたものの、それは完全に虚勢だった。
仮にこのままゴーレムの攻撃が成功したとて、アンリエストの都市に与えられる影響はせいぜいが外壁の一部破壊くらいだ。肝心の都市の中を破壊し混乱に至らしめようにも、その前に先ほどの5人のいずれかが駆けつけてゴーレムを破壊するのは目に見えている。
客観的に見れば、この襲撃はどうひいき目にみても失敗である。
それでも敏也自身が攻撃に参加した作戦で、目に見える戦果があるのとないのとでは世間に与える印象が全然違う。
戦果ゼロと一応端っこではあるが都市の外壁を破壊したというのでは外聞も全然違うし、実際にアンリエストに住んでいる者の心理からしても、外敵に対しての都市の安全神話が崩れることで少なからず市民生活に動揺が生じるに違いないからだ。
それは即ち、国民からの『強い王』である四十無湊に対する信頼が大きく揺らぐということでもある。
戦果と誇るにはあまりに小さいし、使徒は一人完全敗北し、自分自身も手足を失うという無様な状態ではあるが、それでもこちらは二人で敵は五人だったことを考えれば、まだ言い訳が立つ範囲内と考えていいだろう。
…………そう頭の中で算盤を弾いていた。
残念ながら、この時の敏也には六人目の敵の可能性など頭の片隅にも存在していなかったのである。
残り四体の内の先頭の一体が城壁に至ったことで、完全に『勝った!』と笑みを零す敏也。
しかし、その笑顔は一瞬で醜く強張ることになってしまう。
ゴーレムが城壁に攻撃を加えようとした瞬間、青白い輝きを放つ一条の光が天から降り注ぎ、ゴーレムを粉々に撃ち砕いてしまったからだ。
「なっ!」
あまりの驚きに思わず目を見張ってしまうが、そうしている間にも、城壁に近い順から二体目と三体目に今度は同じく上空から槍状の物体が、その後部から激しい豪炎を噴き上げながら回避不可能なほどの超絶速度で立て続けに突き刺さり、爆発炎上した。
「まさか、誘導弾なのか? くっ、その手があったか!」
湊たちは敏也と同じく地球へ帰るすべを失った異世界遭難者だ。
しかし、その両者では全く状況が異なる。
学院での授業中に着の身着のままで召喚された敏也と、こちらの世界に渡るにあたり費用に糸目をつけず入念な下準備を行うことができた湊たち。
こちらの世界に持ち込むことができた神無製品に、もはや天地ほどの差がある。
それこそが目的があって自分の意思でこちらの世界に渡ってきた者と、自分の意思に寄らず誘拐同然に攫われてきた者との差であった。
敏也は湊がこちらの世界に渡ってくるにあたって宇宙戦艦『天下布武』はじめ、強襲揚陸艦 『二藍』、駆逐艦 の『蘇芳』と『濡羽』、そして各種最新鋭艦載機などを持ち込んでいる事実をニュースなどの情報媒体で見たことであらかじめ知っていた。
知っていてなおこの襲撃を計画したのだ。
だから、この読み間違えは完全に敏也自身の失策である。
こちらの世界に渡って来て科学技術と完全に隔離された生活に慣れていく中で、そちら方面に対する警戒感が薄れて行ってしまったせいなのか。
それとも、神の力という破格の能力を手に入れたことで生じた慢心なのか。
いずれにせよ、この戦闘において神無の科学技術が介入してくる可能性を完全に失念してしまっていた。
「くそっ、俺としたことが……」
ギリリと歯軋りするが、彼が本当に驚愕する時間はこれからだった。
謎のビームとミサイル二発によって三体が破壊されたが、コーラルのゴーレムはまだ最後の一体が残っている。敏也たちの攻撃のターンはまだかろうじて終わってはいなかった。
最後の一体が城壁に迫っていく。
ここまでくるといいかげんにワンパターンな気もするが、コーラルの意識がない今、彼の生み出したゴーレムは命令を一つしか与えられていないロボットのようなものだった。
それが効果的であろうがなかろうが、自立した判断力がない以上、最初に与えられた命令を愚直に遂行するしかない哀れな存在なのだ。
そしてこちらもまたかと思わないでもないが、やはりこの最後の一体も城壁に有効な攻撃を与えることは叶わなかった。
問題はそこではない。
その防がれ方、それこそが敏也にとって何よりもショッキングな方法だったのである。
城壁に向かって振り下ろされた巨腕は、横合いから放たれた強力な横薙ぎ攻撃を受けたことでその目的を果たすことが出来なかった。
想定されていなかった重撃を受けたことで、全長20メートル、重さが数十トンもあるゴーレムが、まるで強打されて弾け飛んだ達磨落としのブロックのように大きく後方に吹き飛んだ。
たったの一撃であれだけの大質量が吹き飛ぶなんて尋常じゃない攻撃力である。
しかし、今回の場合、問題視しなくてはならないのはその攻撃の威力ではなく、いかなる武器で行われたのかなのである。
「じょ、冗談だろぉ? まさか、人型兵器だなんて、マンガかアニメくらいなものだろ? いくら神無が世界最高の技術を持っているからって、あんなモノが開発されていただなんて、噂でも聞いたことがねぇぞ」
敏也がこちらの世界に渡った後に開発されたものだというのならばまだ分かる。
しかし、敏也よりも明らかに前にこちらの世界に渡って来ているはずの湊たちが、その実在を見たことも聞いたこともない、そもそも今の地球の科学力で実現可能とも思えない超兵器を所有していること自体がおかしいし、何よりも時系列的にも全く辻褄が合っていない。
見た限りだと人型兵器の全長は10メートル弱といったところ。大きさだけ見ればコーラルのゴーレムの半分ほどしかない。しかし、自身の倍ほどもあるゴーレムを軽々と吹き飛ばしたそのパワーを見るに、両者の出力差は明白だった。
「あ、あり得ねぇ…………」
まるで自分の常識に喧嘩を売ろうとするかのように、精神に斜め上からガツンと一撃ぶちかまされて、思わず自身を苛む痛みと出血がおかしな幻覚を見せているのではないかと疑ってしまいたくなったくらいだった。
実際、何度か目をこするのだが、残念ながら眼前の光景が変わることはなかった。
「己の目を疑いたくなる気持ちは我にも痛いほどに分かる。だが、あれは紛れもない現実の光景だぞ。まあ、あんな恐ろしいモノを湊とその兄の二人で、それも単なる趣味の一環として作り上げてしまったというのだから、ある意味でタチが悪い。いや、悪すぎる。それは我も否定せんよ。下手をすると神竜族でもアレに勝てる者はほとんどおらぬのではないか?」
「湊の野郎、趣味であんなもの作りやがったのかよ…………」
オレンジ髪の少女から憐れみ視線を向けられるが、強いショックに打ちひしがれている敏也には、それに構っている気力もなかった。
敏也だって男子だ。人が搭乗して操るタイプの人型兵器に憧れがないと言ったら噓になる。
仮にこれが味方が操る兵器として出てきたならば、それでも驚きはしただろうが素直に歓声を上げてその活躍を応援していたことだろう。
しかし現実とは厳しいもので、人型兵器が存在するのは敵方で、その最大の攻撃目標は他ならぬ自分なのである。
こうなってくると、敵の巨大メカが細身のシルエットに深紅の装甲という『主人公は自分だ』と言わんばかりの無駄にカッコイイ外見をしていることさえ癇に障ってくる。
この世界の神は自分なのだから、主役は自分でなければならないのだ。
しかし、敏也のそんな想いとは裏腹に、現実は非情だ。
敵の人型兵器は、上空から一直線に急降下しその勢いのままゴーレムに一撃を加えた後、まるで重力に逆らうように地上10メートルほどの空中で静止して次のゴーレムの出方を伺っている。逆に言うと、追撃する必要がない、つまり相手の出方を伺ってそれに対処できるほどの余裕があるということだ。
それに、あれだけの巨体が軽々と宙に浮いて、しかも静止しているという忘れてはならない事実。
あれほど見事に重力に喧嘩を売っているということは、間違いなく帝国の誇る最強の能力者専用戦闘機『神無』型に搭載されているとされる『重力場機関』を搭載しているのだろう。
そう考えれば、あの圧倒的性能も納得というものである。
一方でゴーレムはというと、完全破壊は何とかまぬがれ、かろうじて起動はしているものの、右上半身が完全に失われてしまっていて、もはやバランスを取って立ち上がるのがやっとという感じであった。
もはやどうひいき目に見ても勝負になる状況ではなかった。
人型兵器のパイロットはこれ以上戦闘を長引かせるのは無意味とばかりに、先ほどゴーレムに一撃を加えた武器であろう人型兵器が手にした大剣を構えると、機械で出来た兵器とは到底考えられない速さでゴーレムに迫り、そのまま脳天から股間部まで一刀両断にした。
ゴーレム部隊の文字通りの瞬殺。
それは、敏也にとっては敗北以上の大きな計算違いだった。
今のままでは、まだ長距離転移を行うだけの魔力の収束が足りていないのだ。
(くそっ、あと少しなのに……)
コーラルのゴーレムが予想以上に弱かったということもあるが、何よりアンリエスト側に湊たち以外にもあれほどの戦力が存在していたことが完全に想定外であった。
気ばかりが焦るが、明確な解決策がない。
(どうする? どうすればいい?)
もはやここまでかと思われたのだが、ここに至って運命が敏也の味方をした。
「うっ、うぁぁ……ぐぁあっ……」
気絶していたはずのコーラルが意識を取り戻したのだ。
『コーラル、聞こえるか? コーラル!』
敏也は懸命にコーラルに呼びかける。
オレンジ髪の少女にばれないよう、ナトーヤの能力の一つ『神託』を使用する。
この『神託』は、ナトーヤ教の信徒限定ではあるが敏也とのテレパシーを可能にするもので、敏也の計画を敵に知られずにコーラルに伝えることを可能にする今の状況下では正にうってつけの能力であった。
『コーラル、応えろ!』
『と……トシヤ様……体が、私の体が……』
『落ち着け! 体の傷は能力で治る。それよりも今は目先の危機を脱することの方が優先だ』
『目先の……危機、ですか?』
『そうだ。お前をそんな状態にした女、その女から転移で逃げるための時間稼ぎをしなければならない。出来るか?』
『わ、私のゴーレムは?』
『既に全部潰された。すぐに再召喚は可能か?』
『い、一体なら……何とか……』
『ならばすぐに女の背後に召喚して不意打ちさせろ。急げ!』
『は、はい。直ちに』
「覚悟しろナトーヤ、これでとどm…………むっ?」
決定的な一撃を敏也に向けて放とうとしていた少女は、自身の背後に出現したゴーレムからの攻撃に即座に反応し、反撃する。
当然、その一撃でゴーレムは光の粒子と化し、塵一つ残さず消滅してしまう。
しかし、それでいい。
コーラルが稼いでくれたそのわずかな時間で、長距離転移を行うだけの魔力収束が完了した。
『コーラル、よくやった。おかげで逃げる準備が整った。じゃあな。お前の貢献は忘れないぜ』
『と、トシヤ様……? なぜそのような別れのような言葉を? 私も連れ帰ってもらえるのではないのですか?』
『悪いが、転移のために収束出来た魔力は一人分なんだ』
『そ、そんな……』
『あばよ! 永遠にな!』
転移のフェーズに入りながら、敏也は最後にコーラルに向かって攻撃を繰り出した。
このままコーラルが敵に生け捕りにされたらまた一つ使徒の枠が減ってしまうからだ。
その結果を最後まで確認しないまま転移が完了し、敏也はアンリエストから遠く離れたヘムガール帝都クヌトラにあるカナルトトキア大聖堂へ命からがら逃げ延びることに成功した。
「と、トシヤ様っ!」
「その傷……御身に一体何が?」
「た、大変だ! 大変だ!」
「騒ぐよりも早く回復を!」
「そうだ。回復だ!」
「高位神官を集めろっ」
満身創痍の状態で突然聖堂に現れた敏也に、神官たちは騒然とし、中にはひどく狼狽して完全に取り乱している者もいたが、それでも一部の冷静な判断力を持つ者たちのおかげで無事治療を受けることが出来た。
とはいえ、神官の治療といっても腕が生えてくるとかそういう便利なものではなく、あくまでも傷口を塞ぐことと失った血の補充程度のことでしかない。
欠損した部位に関しては、完全に再生するまでにはかなりの時間がかかるが、ナトーヤの能力を使えば元通りにはなる。
何より、あの状況で命を拾うことが出来ただけでも奇跡に近い。
本当に、敏也のために犠牲になってくれたコーラルには頭が下がる思いである。
だが、問題がないわけではない。
一つは、この敗北によって失われたプライドと、ナトーヤの『神』としての信者からの信頼の失墜だ。
なにしろ、絶対的だと信じて疑わなかった自分たちの『神』が、敵地に乗り込んだ結果瀕死で逃げかえってきたのだ。
しかもこの出来事は、聖堂に祈りを捧げに来た数多くの信徒たちに目撃されてしまっていた。
その場に居合わせた神官たちは彼らにきつく口止めをしたが、その程度の対処で塞ぎきれるほど人の口は重くない。
結果、人から人へ、信者ネットワークを通じて瞬く間にこの噂は広がっていくことになってしまった。
これは、他者からの祈りが己が力になるというナトーヤの固有能力に少なからず悪影響を及ぼすことになってしまう。
第二に、いずれは回復するものの、敏也の負った負傷が大きすぎたことだ。なにしろ……
「トシヤ様、ナトーヤ神の力を持つ御身が片腕と両足を失うほどの攻撃を放つ相手とは一体どのような者だったのですか?」
「…………今はその話はしたくない」
「も、申し訳ございません!!」
今の一連の会話から分かる通り、あのオレンジ髪の少女との戦闘で失ったのは、左腕と右足だけではない。
敏也がこのカナルトトキア大聖堂へ転移してくるその瞬間に、あの女は、まるで土産だと言わんばかりに敏也の左足を奪っていった。
この余計に増えた足一本分の負傷のおかげで、完治までにかかる期間が余計に増えることになってしまった。
そして、最後の問題点は、転移の際に始末したと思っていたコーラルの分の使徒の枠が戻ってきていないことだ。
考えられる可能性は二つ。
一つ目は、敏也の放った攻撃が中途半端でその攻撃を受けてなおコーラルが生き残ってしまったという可能性。
もう一つは、敏也のコーラルへの攻撃の意図を読んでいたあのオレンジ髪の女が、その能力で敏也の攻撃からコーラルを守っていたという可能性だ。
転移直前に敏也の放った攻撃はコーラルを殺すのに十分な威力を持っていたはずなので、後者の可能性が極めて高いと考えられる。
いずれにせよ、はっきりしているのは貴重な使徒の枠がまた一つ減ってしまったという痛すぎる事実だった。
「くそっ、この借りは必ず返してやるからな!」
こうして敏也はベッドの上で復讐の炎をメラメラと燃やしはじめることになる。
――しかし、アンリエスト側からの敏也、そしてナトーヤ教への反撃はこれで終わりではなかった。
◆◆◆
ナトーヤ教会勢力から襲撃を受けたアンリエスト王国は、それに対する報復攻撃として首謀者である敏也の居住しているヘムガール帝国帝都のカナルトトキア大聖堂を始めとして、ヘムガール帝国、トンガール王国、クレッサール王国、ダルムス大公国、ロンジエン帝国各国に存在する主要な教会ほぼ全てへ攻撃を行い、これを破壊してしまった。
しかも、たったの一晩で、同時多発的にだ。
この事実は、ナトーヤ教会のみならず、関係する周辺国にも多大な衝撃を与えることになった。
アンリエストが行った報復攻撃は、その攻撃の規模に比して出した犠牲者は極めて少なかった。
それもそのはずで、アンリエスト側は攻撃を行う前に対象となる教会の存在する五か国の国王、そして攻撃対象となっている教会に対し、報復攻撃を行う旨、加えてそれを実行する正確な日時まであらかじめ事前通告していたのだ。
更には、その攻撃に偶然巻き込まれる無辜の民が存在せぬようにという細やかな配慮でか、攻撃が行われる場所、日時、今回の攻撃はナトーヤの化身および使徒がアンリエストへ行った攻撃への報復である旨、ナトーヤ側の攻撃によってアンリエスト側が被った被害はないこと、攻撃に参加したナトーヤ第9使徒コーラル・ニア・ダルノは捕縛され、ナトーヤの化身は重傷を負ったのち配下を見捨てて一人逃亡したこと、更にはナトーヤ教の神を称しているナトーヤが本当はファナト・ヤーシスという名の祝福者であり神などではないこと、ナトーヤ教の教義そのものが全て嘘っぱちであること、ナトーヤが神竜を倒したとされることについても、ナトーヤが大怪我を負ったところを親切に助けて治療までしてくれた神竜の親子を裏切り子供を人質に取って母親を殺めたというのが真実であり、その時母親が自らの命と引き換えに逃がしたのが黄金竜アリアレインであること、アリアレインがヒト種に明確な敵意を持つことになった根本原因がそもそもナトーヤ自身にあることなどなど、事に至ることになった経緯がつらつらと書き連ねられたチラシが攻撃目標になっている教会の存在する各都市の上空から数度に渡って大量にばら撒かれた。
当然教会側は躍起になってそのチラシの回収を教会関係者や信徒に指示したのだが、残念ながらその目的はほとんど達成することが出来なかった。
なぜかというと、アンリエスト側がばら撒いたチラシはこちらの世界の技術ではまず製造不可能なほどの高級紙に印刷されており、チラシに攻撃目標として描き出されている建物の絵は実物をそのまま取り込んだのではないかというほどに精巧で美しく、更に言えばそれらが印刷されているのは紙の表面のみであり、裏面は完全にまっさらな状態だったために本来の用途の紙としても極めて実用性が高いものであり、更に言うなら紙自体の貴重性もあり、現地の民からすれば事実上空から金がばら撒かれたようなものであったからだ。
チラシをよこせと言われた市民たちは、「チラシを渡せというのならその分の代金をよこせ」と猛烈な反発を示した。
結果、ナトーヤ教会、ナトーヤ神にとって極めて都合が悪い事実が記されているというのにもかかわらず、その回収はほとんど進まなかったというわけだ。
いずれにせよ、こうして事前通告、避難勧告が出された後に攻撃を行ったわけであるから、被害者が少ないのもある意味当然といえるのかもしれない。
攻撃を行った時間が一般人が教会に立ち入ることのない深夜に行われたということも、被害者を減らす要因の一つではあっただろう。
それでも被害がゼロとはならなかったのは、神の敵であるアンリエスト側の主張など信じない、信じてはならないとする一部の狂信者が退避を拒んだことによるものだが、そこまでいくとほとんど自殺のようなものであり、アンリエスト側としても責任が持ちきれないものであった。
こうした様々な経緯を経て、いよいよ攻撃当日。
都市に住む人々の関心は、本当にアンリエスト側から攻撃が行われるのか、その攻撃が本当に成功するのかという点に集まった。
アンリエスト軍、もしくはその精鋭で構成された少数部隊の襲撃に備えて、攻撃対象となっている教会の周囲には多数の兵たちが配備されていた。
そして更にそこから少し距離を取る形で、見物者である野次馬が固唾を飲んでその様子を見守っていた。
教会を守る兵士たちがその野次馬たちを排除しなかったのは、アンリエスト側から行われる襲撃を彼らの目の前で返り討ちにすることでナトーヤ教、ひいてはナトーヤ神の権威を取り戻そうという意図があったためと言われている。
しかして、いよいよアンリエスト側が指定した時間が近づいてきて、それでも何の襲撃の動きも気配もないことから「アンリエスト側も教会側の警備があまりに厳しくて攻撃を見送ったのではないか」と、見物人や守護している兵士たちが考え、口々にアンリエストへの嘲りの言葉を発し始めたその瞬間――――
天から教会へ向けて一条の光が突き抜けた。
漆黒の空を引き裂くように一直線に降り注いだその光条は、不規則に角を描いて曲がりながら地上へ向かう稲妻とは明らかに異なる類のものだった。
天から降り注いだその光は、正確に教会に命中し、轟音とそれに伴う衝撃波を伴って教会の建物に大穴を穿った。
「「「「「「「「「「「………………………………」」」」」」」」」」」
それを直に目撃した人々は、自身を襲ったあまりの驚愕に、暫しの間声を上げることすら出来なかった。
「そ…………そんな…………」
アンリエストからの攻撃で大穴が開けられてしまった信仰の対象を見た神官たちは、あるものは涙を流しながらガックリとその場に膝をつき、またある者は恐怖に震え上がって股間に温かい液体を滴らせたりと、見るからに醜態を晒してしまっていた。
更にアンリエストの襲撃に備えるために国から派遣されていた兵たちに至っては、恐怖のあまり声を上げて逃げ出す者が続出していた。
「アンリエスト王……ホラでも何でもなく本当に襲撃を成功させやがった……」
「襲撃というか、ありゃ遠隔攻撃だな」
「それでもだ。問題なのはそこじゃねぇ。何が問題かって? そりゃあらかじめ攻撃する場所も時間すらも知らされていたのに、ナトーヤ神はそれに対して何の対処も出来なかったってことだ」
「そうだ。攻撃が予告されていたのにナトーヤ神は何やっていたんだ?」
「神って全能なはずじゃないのか?」
「ならアンリエストの攻撃を防げないナトーヤ神って、本当に神なのか?」
「アンリエストがばら撒いた紙に書かれていた内容って、協会側は嘘だって必死に主張してたけど、もしかしたら本当だったのか?」
「ナトーヤ神が本当は神ではなく、アンリエスト王と同じ世界出身の祝福者だっていうあれか?」
「でも祝福者なら長生きすることはできねぇはずだろ?」
「バカ、それについても書かれていただろ? ええと……たしか、祝福者が負う5年で死ぬという呪いを打破するために神竜を殺してその力をとりこんだ……だったか?」
「そんな感じだな」
「ナトーヤ教の教義で亜人が悪しき種族だって説いてるのは、ナトーヤ神の祝福が自分に祈りを捧げる人が多ければ多いほど強くなるから、より多くの祈りを捧げさせるためにあえて敵を作って争わせたって話だが……」
「そりゃまあ、敵がいてそいつと戦争していれば、勝つために神に祈りの一つも捧げるだろうしなぁ」
「それが本当なら亜人どもには随分なとばっちりだが」
「そんでもって、ナトーヤ自身は亜人との戦いの中、ヒト種の神人『魔女王ルシル』と相打ちになって肉体を失ったが、神竜の力を取り込んでいたおかげで完全には消滅せず精神体で生き残っていた……と」
「ヒト種の神人なのにナトーヤの教義だと古人種もなぜか亜人扱いだしなあ。んでも、結局のところ魔女王も完全には消滅せずに異世界に渡っていたんだろ?」
「死んだら後継者が選ばれるはずの神人の中でヒト種だけに後継者が現れなかったのは長年の謎だったが、まさかそんな理由からだったとはなぁ」
「極めつけには、ナトーヤ神が現在肉体を持っているのは、アンリエスト王やナトーヤ神と同じ異世界から波長の合う肉体の器を召喚して融合したからだってことだけど……」
「「「「「本当かよ?」」」」」
「本当かは分からねぇが、とんでも話ではあっても一応の辻褄はあっていることだけは間違いないな」
「「「「「確かにな……」」」」」
信者たちの間にこのような話が広がっていくことで、ナトーヤ教団には大きな不信と動揺の波が襲いかかることになる。
もろん教団もただ手をこまねいていたわけではなく、噂の否定にやっきになっていたが、先の戦争から始まる度重なる使徒の敗北と、何よりもナトーヤの化身である皆本敏也自身の敗北が教団の弁明から説得力を奪い去ってしまっていた。
『ナトーヤ神は偽物の神なのではないか?』
人々の間にそのような疑念が広まっていく中、何とかその疑いを解消しようとして、ナトーヤ教団は全世界に対して一つの公式コメントを公表することになる。
『ナトーヤ神は間違いなく神である。今回ナトーヤ神及びその使徒が敗北したのは、同じ神の世界の出身でナトーヤ神と同等の力を持つ亜人たちの神である悪神ミナト、別名魔王ミナト及びその配下である悪魔たちが相手だったからである。今回は残念ながら不覚を取ったが、正義の光は決して途絶えることはない。この世から悪魔どもを消し去るには信者たちの強い祈りが必要不可欠である。悪魔の誘惑に踊らされることなく正しい道を選び真摯に信仰を捧げることのみが生まれ変わりを果たした次代の幸福を約束するものである』
この発表によって人々はますます混乱に陥ることになる。
だが、一部の熱心な信者や狂信者、そしてナトーヤの教義があった方が自身に都合がよい王族や貴族の大部分はこのコメントへ対して強い支持を表明した。
国家としてもヘムガール帝国とトンガール王国が支持を表明し、アンリエスト王ミナトの事を正式に魔王ミナトと名指しし、人類の敵として盛大に非難した。
こうして、地球からこちらの世界へ渡ってきた四十無湊及びその部下たちは、ナトーヤ教徒から後に『魔王と11人の悪魔たち(※3)』と正式に呼称されるようになった。
◆◆◆
※1 リスティリカ・クルネシオン。元ナトーヤ使徒第13位。全使徒中唯一の善良思考の持ち主だった。悪行ばかり繰り返す使徒という存在に疑問を持っていたところへ、湊との戦闘後に彼の口からナトーヤの正体を聞いたことで完全にナトーヤ教に愛想が尽きて、湊の配下になる。
※2 カタリナ・デュ・四十無・クレッサール。一応王妃なので敏也から正体を隠している。
ちなみにアンリエスト側から迎撃に参加したのは、アリアレイン(神竜種)、カタリナ・デュ・四十無・クレッサール(王妃)、セリネ・アル・ウルカ(古人種)、ノワール・クー・カノッタ(猫獣人)、ウルミラ(蜘蛛人族・神人)、シーリン・ナタレ(人型兵器『終火』)、リスティリカ・クルネシオン(元使徒)の七名
※3 『魔王と11人の悪魔たち』の11人の悪魔とは、羽間黒子、西陣宮子、篠原霧枝、鷲尾竜太郎、片瀬川浩一、里見聡志、小此木紗希、館林五十鈴、源雪乃、葉山七七の十人に加え本編未登場のもう一人を加えた11名のことで、同じ地球から来たメンバーでも銀髪のルシル・テンペストは含まれていない。これはナトーヤ教の言う悪魔の定義が全員黒髪であることに由来する。
ただし、ノワールは黒髪だが、猫獣人なため悪魔には含まれていない。
実は皆本敏也も本来は黒髪なのだが、ナトーヤを受け入れたことで髪と瞳の色が後天的に赤みがかった茶色に変化した。これはベースになったファナト・ヤーシスの髪がその色だったからである。
この『魔王と11人の悪魔たち』に関しては、一番最初に投稿した『プロローグ』の一番最後の行で触れられている通り、連載当初から構想されていた設定でしたが、ここにきてようやく本編で登場させることができました。
次話からまた本編に戻りますが、他の異世界ものではごくごくありふれた展開であるにも関わらず、この物語においてはなぜか連載始まって以来(今さら感はぬぐえませんが)初となるシーンが展開される予定です。
こう書いておいてなんですが、本当に大したことではないので変に期待しないでください(苦笑




