第五章 大雅国攻略戦 ③ 戦後処理
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大雅国央京郊外 館林五十鈴
「貴様ら、余が誰なのか分かっているのか! 今ならまだ罪を軽くしてやってもいい、早く余を解放するのだ」
王城へ潜入していた部隊を率いていた五十鈴と七七の二人によって、後ろ手に縛りあげられた状態で湊の前に引っ立てられてきた一際派手な服を身に纏った初老の男。
既に虜囚の身であるというのに未だにその事実を認めることが出来ていないのか、ここへ連れてこられる間も、そして拘束されて無様に地面に転がされた今の状態でもなお耳障りに騒ぎ立てている。
この残念な男こそが、この大雅国を支配して王を名乗っていた崇王その人であった。
「このような仕打ちを余に行ってただで済むと思うなよ! 後で必ず後悔させてやるからな! 夏元帥、何をしている! 他の幹部でもいい、さっさと私を助けるのだ」
既に湊たちに降伏して、崇王と同じく拘束されて身動きの取れない状態の夏は、そのようなことを言われても困るとばかりに困惑の視線を崇王に向けている。
夏と同じく拘束されている他の大雅軍の幹部たちも同様だった。
自分の部下たちがあてにならないと見るや、崇王は地べたに這いつくばりながらも、目線にに精一杯の威厳を載せながら湊を睨みつけている。
「余を捕えたメイドの主とかいう貴様、髪こそ黒いが奥羽のサムライではないな? どこの何者だか知らぬが、装いから察するに西方の者か? なれば知らぬのも無理はないが、今貴様らが拘束している余はこの大陸の東方に覇を為す王、王の中の王なのである。悪いことは言わぬ。己が国を滅ぼされたくなくば大人しく余を解放するのだ。今なら我が配下として重く取り立ててやろう。無論、そこのメイドたちもだ。我が配下の護衛たちを歯牙にもかけぬその実力、それこそ東方の王者たる余の配下にふさわしい」
そんな崇王の言い草に、夏元帥を始め大雅軍の幹部たちも揃ってギョッとしたように驚愕の視線を送っている。
城を陥落とされ既に捕縛された虜囚の身にあってあまりに厚顔無恥な言い草に驚いたということもあろうが、それにもまして、彼自身が今誰の足元に這いつくばっているのか、この期に及んで全く理解していない自分たちの主の察しの悪さに驚愕していたのだと思う。
それに関しては、彼を捕縛するにあたって、五十鈴は特に自分の所属を名乗りはしなかったし、城内の最奥にある自室に籠っていた彼は戦場で何があったのかを見ていないだろうからある程度やむを得ない部分もあるかもしれない。
だがそれにしても、目の前にいる青年の着用している服の上腕部に縫い付けられている『夜桜月の丸』のワッペンにいつまでも気が付かないというのは鈍いにしても程があるだろう。
「『どこの何者だか知らぬ』か。こちらはお前に会いたくて仕方がなかったというのにな……」
湊は淡々とそう呟くと、氷のような瞳で男を見下ろした。
「確かに俺がお前と会うのはこれが初めてだ。ああ、それは間違いない。そして俺は奥羽国のサムライではない。それも間違いはない」
言いながら、己の右目を覆う眼帯にそっと手を添えた。
「しかし、だからと言って、俺とお前との過去に何の因縁もないのかというと、残念ながらそういう訳でもない」
湊は、そのままゆっくりと手にかけた眼帯を外していく。
唐突な彼のその行動に五十鈴は驚きのあまり思わず目を見張った。
メイドとして、剣の弟子として、そして同じ渋谷ギルドのメンバーとして、彼との付き合いはそれなりに長いが、彼が人前でその眼帯を外すのは初めてであったからだ。
もちろん、五十鈴自身も彼の眼帯を外した姿を見たことは一度もない。
だから五十鈴を含めて、そこにいた誰もが彼が外した眼帯の下から現れてくるのは衆目に晒すに堪えない醜い傷跡であろうと想像していた。
しかし、意外というかなんというか、その眼帯の下から現れた彼の右目は、左目に比べて色が薄く灰色がかってはいるものの、わざわざ眼帯で隠し続けなければならないほどの傷跡らしきものはどこにも見当たらなかった。
まさか中二病でもあるまいに、そこまでしで彼が己の右目を隠し続けなければならない理由が、外から見ただけではどうしても分からなかった。
五十鈴たちが呆気に取られている理由に気が付いているのだろう。湊は口元に薄っすらと苦笑いを浮かべると、皆が固唾を飲んで見守る中、静かに独白を始めた。
「過去に受けた恨みと痛みを絶対に忘れないようにと、京子(※1)の能力によって治癒可能になった時もあえてそのまま傷を残したままにしていたというのに、まさか黄金竜を倒してその精神体を受け入れたことで勝手に右目が修復されてしまうとは思わなかったな。正直これは大きな誤算だった。だがまあ当初の目的を果たすため、傷が癒えてもあえて視界を覆い尽くし不便を感じることでそれに代替してきた訳なんだが…………」
湊は崇王に絶対零度の視線を向けながら冷やかに告げた。
「…………それも、今日で終わりだ」
崇王には心当たりはなさそうな様子であるが、湊にここまで言わせる以上、両者の間に尋常でない因縁があるのは最早確実だった。
詳しい事情は五十鈴にも分からない。
湊はあまり自分の過去について語ろうとはしなかったからだ。
これが小学校の頃から付き合いがあるという円卓第1位の霧咲円であるならばその限りではないのだろうが、ギルド動乱時からの師弟関係である五十鈴には、湊に双子の兄がいて、その兄は高校生集団失踪事件の失踪者の一人で現在に至るまで行方不明であるということくらいしか分からない。
とはいえ、彼が発した言葉の文脈からでも幾つか察することが出来る事実がある。
第一に、湊と崇王との間には、明らかに過去に何らかの因縁が存在していること。
第二に、それは湊が右目を失わなければならなかったほどの出来事で、しかも恐らくその因縁は湊が能力者になる以前から続いているものだということ。
そして最後に、湊は己の右目が回復した後もあえて眼帯で視界を覆い不便を被り続けることで、その因縁を去りゆく時の流れの中でも決して薄れないようにしていたこと、である。
「お前は一体何を言っているのだ? 余は西方の民との直接の関わりを持ったことなど一度もない。貴様と会うのも初めてだ。それは他ならぬ貴様自身が認めていたではないか。何か人違いをしているのではないのか?」
「人違い? そんなことはない。あるはずがない。なあ、そうだろう? 現大雅国国王にして元大華国共生党国家安全部部長、崇秀英」
湊の言葉を聞いた瞬間、崇王の表情が傍目に分かるほどはっきりと変わった。
大華国の国家安全部とは世間一般でいう情報部、即ち国家間の諜報に関わる部署であり、世間一般には非公開であるが、後ろ暗い案件を秘密裏に処理するための特殊部隊を密かに抱えているという噂の組織だ。
そんな国家安全部の元部長ということは、崇王は過去において元大華国の諜報部隊のトップだったというこになる。
「どうして貴様が私の名前を知っている?」
「どうしてもなにも、お前は国家の脅威になりかねないからという理由で暗殺のために配下を差し向けた一家のことを覚えていないのか? こちらは一日たりともお前の顔と名前を忘れたことはなかったんだがな」
「私が暗殺者を差し向けた相手……だと? そんなもの数が多すぎて覚えていられるはずがなかろう。いや、それよりも、なぜ貴様が地球にいた頃の私の肩書を知っている?」
おそらく、ここにいる崇王を除いた全員が『どうして名前の件よりも先に地球での肩書の件の方を疑問に思わないのだろうか?』と疑問に思っていただろう。みな揃って崇王の察しの悪さに愕然としていたが、遅まきながらもようやく崇王もその件に気がついたようだった。
崇王は明らかにこの世界の事ではない出来事を話題にされていぶかし気な表情を浮かべたものの、ここでようやく彼は湊の着ている服の上腕部に縫い付けられている魔法帝国神無の国旗に気付いたようで、唐突に「ヒイッ!」と素っ頓狂な声を上げた。
「そ、そ、その国旗はっ、か、神無だと? ど、ど、どどどどどうしてこんなところにっ……」
ここに至ってようやく自分を虜囚の身にしている相手の所属国家に気付いた崇王は、過去のトラウマを刺激されでもしたのか、傍目に見ていても明らかにそれと分かるほど露骨に震え上がっていた。
許容量以上の恐怖に心を支配されてしまったからか、その顔からは一瞬で血の気が失せ、まるで死人の如く真っ青に染まり上がってしまっている。
大華国の軍人と政治家たちにとって、海を隔てた隣国である魔法帝国神無という国の国旗と名前が恐怖の対象であるという話自体は五十鈴も小耳に挟んだことがあったのだが、まさかここまでてきめんに効果があるものだとは思っていなかった。
「四十無司と四十無真弓、この二人の名前に聞き覚えは?」
「ヨツナシツカサ、ヨツナシマユミ…………」
恐怖の対象から質問をされて、片言にオウム返しをしながら必死で己の記憶を掘り返していた崇王が、やがて何かに思い至ったかのようにハッと表情を変える。
「その名前…………お、お、思い出したぞ! 言われてみれば確かに、大華国にとって脅威度の高い研究をしているということで日本の科学者へ暗殺者を差し向けた事例があったはずだ。確か暗殺対象は常温核融合を世界に先駆けて実用化寸前の段階までこぎつけていた夫婦とその研究チーム。そして、並外れた天才として世界的に名を轟かせ、わずか10歳で既にマサチューセッツ工科大学を飛び級かつ主席と次席で卒業していたその科学者夫婦の双子の息子たちだったはず。確か報告によると暗殺対象の科学者夫婦と研究施設の破壊には成功したものの、双子の暗殺には信じられぬことに返り討ちに遭い失敗したと……。はて、どうしてその双子の暗殺には失敗したのだったか……。確かあの件にはたった一人だけ逃げ延びて戻ってきた部下がいたはずだが…………」
ぶつぶつ呟きながら必死に己の記憶を辿っている様子の崇王。
「そうだ! 確かその部下の報告では、二人の息子の予想外の抵抗に遭い、暗殺に差し向けた四人の内三人までは無力化されてしまったと。それでも何とか隙を見つけて兄の方は暗殺成功寸前まではいったのだが、仕留める直前で身を挺してそれを庇った弟によってその試みは阻まれてしまった。結果として、兄の方は完全に無傷。弟の方は兄を庇った拍子に右目に重傷を負わせ、結果として失明させることまでは出来たものの、残念ながら命そのものにまでは別状はなかったはずだ。つまり双子に関しては暗殺は失敗したということだな。そしてこの事態を重く見た当時の日本の総理大臣は、この双子の護衛兼自衛のための武術指南役として世界最強の武人として伝説となっている戦神・円城寺鉄空を呼び寄せて二人の身柄を預けた。この鉄空による鉄壁の護りと彼の指導によって実力をつけた双子自身の力により、安全部としてもこれ以後一切双子に手を出すことができなくなってしまった……」
「その後も数回に渡り手を出して来はしたものの、その都度全員返り討ちにしていたらこれ以上繰り返しても無駄だと悟ったのか、その内手を出してこなくなったという方がより正確な話だけどな」
「ま、まさか…………」
崇王の顔が驚愕に歪んだ。
「ここまで話が進めば、察しが悪そうなお前にもどうして俺がこの世界に渡ってまでお前に会いたがっていたのか、理解して貰えたよな?」
なるほど、と五十鈴は思う。
開いてしまった次元裂を閉じることが出来るのが世界でただ一人湊だけだったというある種選択の余地がない状況であったとはいえ、六大公爵であり帝国最強の円卓でもあるという神無屈指のの重要人物である彼が、こちらの世界に渡ることを予想以上にあっさりと了承したことが以前からの疑問だったのだが、今回の一件でようやく腑に落ちた気がする。
「た、確か、あの時右目を失った方の子供はその後…………それでは、お、お前は…………」
言いかけた崇王を、湊は静かに手で制する。
「今さら俺がどこのどんな立場の人間かなんてもはやどうでもいい話だ。正直言えば、右目の視力を失ったあの喪失感や負傷した際の痛みすらも今となってはどうでもいい。だが、人々の豊かな生活のため、科学の発展のために力を尽くしていただけの何の罪もない俺の両親を、それも自分の国の脅威になるかもしれないからという極めて下劣な理由だけで殺害した憎き仇の、それも事件の中核を担う黒幕であるお前が、このまま大人しく解放してもらえるはずがないことは、他の誰よりもお前自身がよく知っているはずだ。そうだよな?」
「ゆ、許してくれ、頼む。殺さないでくれ!」
「人の両親の命を奪っておきながらこの期に及んで命乞いとは随分と虫のいい話だな。だが心配するな。今この場で安易にお前を殺して終わりというような生ぬるい罰で済ます気なぞ最初っからない。今までに多くの罪のない人々の命を奪っておいて今さら命乞いとはどの面下げてという話だが、それとて時間の問題だ。その内自分の方から『頼むから殺してくれ』と俺に懇願してくるようになる。この世には死にたくとも死ねない、殺してほしくても殺してもらえないという苦しみも存在することをその身を以って実感するがいいさ」
「…………」
「なに、心配することはない。あの事件に関わっていた人物の中でのうのうと野に放たれていた最後の一人がお前だ。必ずしもこちらの世界でという訳ではないが、既に実行犯の方の身柄は全て押さえてある。これから先、お前には死にも勝る過酷な日々が待ち構えているが、共に事件に関わった仲間が自分と同じ地獄を味わっていると思えば、決して孤独ではないさ」
この先自分を待ち受けている、地獄のような強制労働の日々を悟ってか、崇王は無言のまま静かにその場に崩れ落ちた。
絶望のあまりすっかり生気が抜け落ちたように見えるその姿は、一時とはいえ一国の王として身に余る栄華を手に入れた男のものとは到底思えないほどみそぼらしいものだった。
この時を以って、大陸東方に覇を唱えた大雅国は滅亡した。
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旧大雅国央都 四十無湊
戦争の勝利と崇王の捕縛によって、大雅国は滅び、この東方地域で残された湊の仕事は大雅国残党の討伐と、大雅国の支配下で虐げられていた旧アゼンダ王国民たちの解放、そして大雅の侵略によって荒廃している奥羽国の復興である。
ここで問題になってくるのが、大雅滅亡後のこの大陸東方地域をいったい誰が治めるのかということである。
かつてこの地を治めていたアゼンダ国の王族や有力貴族たちはほぼ残っておらず、仮にいたとしても大雅国に取り入って共に民へ悪事を働き、甘い汁を吸っていたような者ばかりで、とてもこの地の統治を任せられるような人材はいなかった。
当然だが、彼らは大雅国首脳や軍人たちと同様に、犯した罪を償わせるための強制労働行きが決定している。
考え得る一番手っ取り早い手段は、大雅国から侵攻を受けていた被害者である奥羽国の領土に組み込むことである。
しかしこれは、大雅軍の進軍によりすっかり荒廃してしまった奥羽国の復興を優先したいとの義國からの申し入れにより断念せざるを得なかった。
幸いといっては変な話だが、あちらにはどれだけこきつかっても心が痛まず、維持費用が安くて使い減りしない労働力たちがたくさんいるので、思ったよりも早く復興は進むかもしれないとの話だった。
義國と何度も協議を重ねた結果、旧大雅国領、即ちこの大陸東方地域は、結局飛び地としてアンリエスト王国の領土として編入されることとなった。
湊個人からすれば幾ら広大で豊かな領土が手に入ろうが、遠く離れた飛び地など管理が非常に面倒くさいだけで、あまり歓迎したいものではなかった。
しかしその一方で、大雅国がこの地に残した地球の技術の管理という面においては、他のどの国にも任せることは出来ないという側面も存在している。
一度流出した技術を止めることは出来ないからだ。
自動小銃の技術一つ見てみても、おそらく鹵獲したものは分解・解析され、少なくとも奥羽国においてはそう遠くない未来に実用化されてしまうだろう。
それとて本来は好ましいことではないが、奥羽国は火縄銃レベルとはいえ元から銃の技術を持っているこの世界唯一の国であったので、ここはもう許容範囲と思うしかない。
それどころか、戦場において一度はその目で見ているのだから、今すぐにという訳ではないが、彼らならもしかしたらもう十年、二十年もすれば戦車や飛行機ですら再現してしまうかもしれない。
魔法や能力なしに人が空を飛ぼうだなんて、よほど空に強い想いもしくは執着がないと思いつきもしないことである。
そもそも普通の人はそんなことが可能だとすら考えないであろう。
しかし、実際にそれが可能であるという実例を、彼らはその目で見て知ってしまった。
技術を進歩させていけばいずれはそれが可能になると知ってしまったのだ。
彼らが見たのが魔法帝国神無の誇る能力者専用戦闘機の『燈火・改』や『轟炎・改』だけであれば、技術力があまりに隔絶しすぎていて模倣は到底不可能だとすんなり諦めたかもしれない。
大雅国の保有していた数少ないジェット戦闘機に関してもそれは同様ではあるのだが、『天下布武』を御する西陣宮子と『轟炎・改』を駆るシクロネージュによって全機が既に海の藻屑と消えてしまっていたこともあり、央都での決戦で大雅国が空に送り出すことが出来たのは、地球での飛行機の歴史で見れば初期も初期ともいえるレトロな機体であった。
機材も材料も技術者もノウハウもない状況で一から作り上げて、形ばかりではあるが一応は空軍として機能出来るような状態まで体裁を整えたのだからそれはそれで大したものだとは思う。
だが、ピンキリのピンの方を知っている身としては、戦力として考えるとやはりかなり物足りなく感じてしまうのは仕方がないことだろう。
しかしその一方で、奥羽国始めこちらの世界の国家にとってみれば、あの戦闘機はなまじ技術的に大いに未熟であるがゆえに、逆に模倣に注力すれば手が届く可能性がある範疇にギリギリ存在してしまっている。
戦車だってそうだ。
鉄砲の技術は既にあるのだから、それを大型にした大砲にはそれほど間を置かずに手が届くだろう。
問題は内燃機関だが、大雅国との戦闘にあたって、戦車や飛行機がどういうものであるのかを簡単ではあるが湊たちから義國たちへ事前にレクチャーを行っている。
それがどういうもので戦場でどういう働きをするのかをある程度事前に説明しておかないと、いきなり戦場でばったり出会った時にそれを初めてみる奥羽軍が致命的な混乱に陥らない保証がなかったからである。
その際に動力である内燃機関の説明もざっくりとは行ったのだが、もちろん奥羽国に設計図を提供したわけではない。
しかしそれでも原理さえ知っていれば、人材の育成と研究開発にそれなりの時間が、加えて多大な情熱と研究費用は必要ではあろうが、努力を重ねている限り早いか遅いかの差こそあれ、いずれ必ず実用化に手が届く日が来る。
つまりそれは、こちらの世界由来の勢力で奥羽国だけが突出した技術力を手に入れてしまうということでもあるのだ。
国内の復旧と開発が最優先で海の向こうの領土拡大には全く興味がない義國の代、もしくはその影響力の範囲内である子供、あるいは孫の代くらいまでならもしかしたら大丈夫かもしれない。
しかし、その後の代はどうであろうか?
他の近隣国に比して自国が圧倒的な技術力と軍事力を保有しているにもかかわらず、東方世界の東の端にある島国で大人しく燻ったままでいることを良しとするであろうか?
そう考えると、もしかしたら戦争の火種を先送りしているだけなのかもしれない。
とはいえ、これはあくまでも湊、ひいてはアンリエスト王国が東方世界から身を引いたらの話だ。
義國の子孫たちがこの先どれほど外に領土的野心を抱こうが、飛び地といえどこの地を領有するアンリエスト王国が必ずその蓋となってその野心を挫くことになる。
いや、むしろ隣にそれほどまでに圧倒的な国家が存在すれば、最初っから外に向けて野心を抱くことすらないかもしれない。
もしかしたらだが、義國はその未来すらも見越して大陸東方の領有権を湊たちに委ねたのかもしれない。
そうなると逆に、隣国の王が湊であるという点は、奥羽国にとって極めて都合が良く働くからだ。
『能力者になると5年ほどで死ぬ』という一種の呪いを解除することに成功した湊たちは、結果として老化しない体と無限ともいえる寿命を手に入れた。
無論、範例が過去に全く存在していないのだから、本当のところその寿命がどれほどまでに長くなっているのかは誰にも分からない。
ただ現在に至るまで、呪いを解かれた能力者の中に寿命で生を終えた者は一例として確認されておらず、最年長で130を超えても能力者に目覚めた当時と全く変わらぬ、いや、むしろやや若返りすらして元気にぴんぴんしているという複数の事例からそう判断されているだけで、意外と150歳や200歳くらいでぽっくりといくことだって十分にあり得るのだ。
ただ、能力者由来の力とは全く異なる別の力(※2)の作用により平安時代から1000年以上も生きている妖怪のような人物を湊は知っている。
それと似たような効果が呪いを解かれた能力者にもあるとすれば、もしかしたら同じくらいは生きることが出来るのかもしれない。
いずれにせよ、呪いというくびきから解放された能力者が長寿であることは紛れもない事実であるので、この世界の中で突出した技術力と武力を持ち合わせていながら他国の領土を支配することに一切関心がなく、また翻意する可能性も極めて低い湊が隣国の支配者であり、更には同盟国としていざという時には強力な味方となってくれるアンリエスト王国の存在は、適切な付き合いさえ維持できれば奥羽国の長きに渡る安定に大いに貢献することになるわけだ。
更に言うのならば、友好国としてこの先貿易相手としても多大な利益を奥羽国にもたらしてくれることにも期待できる。
ある程度までならその進んだ技術だって手に入るかもしれない。
地球の国家に例えるなら、日本に対する湾台のような立場を狙っているということである。
あの義國ならば、間違いなくこれくらいは考えているだろう。
そして、湊の立場から答え合わせしても、その予想は概ね正しい。
大雅国のあったこの大陸東部は、地球で言うところのユーラシア大陸東部、つまり崇王たちの故郷である大華国の領土と比べても遥かに広大な上、その大華とは比べ物にならないほど豊富な資源が眠っている地でもある。
そもそもかつてこの地を支配していたアゼンダ国は金・銀・銅・鉄・亜鉛・ミスリル(※3)そして各種宝石類などを外国に売ることで利益を上げていた国家であり、その作業も全て手掘りで進めていたため、今までに採掘された量は全体埋蔵量のおよそ10%程度でしかない。
更に大雅国が掘り当てた油田は豊富な埋蔵量を誇る上、それと同等の豊富な埋蔵量が見込まれる場所が国内に幾つも存在している。
終戦後に湊たちが行ったざっとした調査だけでもその石油埋蔵量は地球で言うところのベネズエルラ(※4)のそれに匹敵するレベルだ。
また、アゼンダ国は価値を見出すことが出来ていなかったようだが、プラチナ・タングステン、モリブデン、リチウム、ニッケル、コバルトなどの希少金属も、各地で見つかっている。
正直なところ、これだけのものが揃っていてどうして大雅国があのような拡大政策を取ったのかが湊には全く理解できなかった。
戦争で浪費するリソースがあるくらいなら、国内の開発にそれを割り振った方がよほど効率的に国力が上昇するであろうからだ。
これに関してはまあ、崇王が己の支配欲と領土拡張欲を抑えることが出来なかったからであろう。
『俗物が!』と思わず言いたくなってしまうが、地球の歴史を見ても支配地を広げるため領土拡張に情熱を捧げた王は決して少なくはない。
アレクサンダー大王しかり、チンギス・ハーンしかり、カエサルしかり、ナポレオンしかりである。
だからと言って一概に彼らが俗物という訳ではないが、少なくともまあ、良いか悪いかは別として、野心が旺盛だったのは確かだろう。
他の世界から進んだ技術を持ってきて、そのアドバンテージでやったことと言えば侵略と略奪と強権支配。
弱者を虐げて力を振りかざし、そして奪うことしかしていない。
価値観が歪んでいる国の出身であるとはいえ、現代人の価値観を有しているのにこれである。
まあ、これからはその立場が完全に逆転して、今まで虐げてきた人々の下で肉体も精神も擦り切れるまでこき使われることになるのだから、ある意味自業自得と言えるだろう。
悪意の総本山、大雅国の元国王ともなれば、さぞかし住民の恨みを買っているであろうから、殊更に可愛がってもらえるに違いない。
幸いなことに仕事は腐るほどある。
資源が豊富ということは、それを採掘する人員が必要不可欠だからだ。
地球、それも大華国ではレアアースの採掘や精錬の過程で放射性物質を始めとする化学物質により土地や採掘者への汚染が問題になっていた。
特に大華国共生党は人民をただの消耗品としか考えていない節があり、作業に従事する者の健康被害を軽視する傾向にあった。
実際、大雅国の鉱山でも鉱山夫の健康や安全、食事や労働時間にも全く配慮というものがなされていなかった。
それどころか、成人男性ばかりか、か弱い女性や、中には幼い子供までもが強制的に駆り出されて、ろくな食事も与えられないまま朝から晩まで働かされているケースすらあった。
要するに、今度はそれが丸々崇王たちの身に降りかかってくるということである。
もちろん、土地が汚染されるようなことはないよう周囲の環境には細心の注意を払う必要はある。
一方で、能力によって一度隷属契約を行ってしまえば、即死級の致命的な傷でもない限り自動で修復されてしまうため、強制労働に勤しむ彼らの健康被害を考慮する必要は全くない。
問題は、自動で修復されるからといって苦痛が軽減されるわけではないということだが、それこそが彼らの今までの悪行に課される罰であるともいえる。
崇王とその直属の部下たち、大雅国の将兵たち、役人、そして彼らに寄生して不当に甘い汁を啜っていた者たちとその関係者――もちろん悪事を働いていない者に関しては罰を免除となるが、残念ながらそのような高潔な精神の持ち主はほとんど存在しなかった――ということで、幸いなことに費用がほとんどかからずいくらでもこき使える働き手がこの国には幾らでも存在している。
都市の開発も、インフラの整備も、資源の採掘もやり放題である。
こんなことをやっていると、地球ではすぐに『犯罪者の人権がー!』などと言い出す輩が現れるのだが、そもそもが、大前提として犯罪行為そのものが他人の人権や生命、財産を害する行為である。
罪を償うというならば、最低限被害者あるいはその遺族へ奪った物と同等以上の物を返さないと本来の意味では償ったことにはならないのだ。
ただし、これが無事完了したとしても、あくまでも被害者への補填が済んだということだけで、帝国では、行った犯罪行為に対する罰はそれとは別に課されることになる。
盗んだものを返したからといって、盗んだ事実そのものは消えないのだから当然である。
これが他国に比べて帝国の『罰が重い』ということになり、『犯罪者の人権を侵している』と一部の人たちから批判される要因なのだが、そこは考え方の違いというやつで、帝国では『犯罪者の人権』よりも『被害者の人権』をより重視している。
奪われた者、あるいはその遺族が泣き寝入りしなくてはならないのでは話にならない。
だからこそ、犯罪によって害された『被害者の人権』もしくは『被った被害』が慰謝料を含めてきちんと清算されて初めて犯罪者自身の罰が執行できる状態になるのだ。
そして、他国に比してよりざまぁ色の濃いこの帝国の罰則システムは、他ならぬ犯罪被害者たちから極めて好評なのである。
一般に、犯罪者へ重い罪を課すことの一番の問題点は、冤罪である。
例えば、死刑が執行された後になって真犯人が捕まって処刑された者が実は無実だということが明らかになった場合、後からどう取り繕おうが取り返しがつかない。
どれほど多額の賠償金を支払おうとも、死者にそれを使うことは出来ないし、死者が生き返ることもないからだ。
しかし、帝国はその問題点を完全にクリアしている。
犯罪捜査には能力者の特殊能力が活用されており、更には裁判の審議においては虚実の判定が可能な『真実の珠』という魔道具が活用されているからだ。
この『真実の珠』は、幻術や催眠、精神支配などあらゆる事実改変を無効化する。
例え同じ能力者であってもそれに抗うことは出来ない。
それは、仮に円卓レベルの能力者であったとしても同じことだ。
この『真実の珠』の原理自体はそう難しいものではない。
湊の能力で対象者の能力を完全に無力化してから、円卓第3位の椎名麻耶の読心能力で対象の精神を鑑定する。
元来、椎名麻耶の能力を掻い潜って虚言を張り通すことだけでも不可能事だ。
サポート系能力であるにもかかわらず円卓上位に食い込んでいる彼女の能力には、円卓とて抗うことはできない。そんなに甘いものではないのだ。
しかし、何事にも絶対ということはあり得ない。
だからこそ、能力者の力を無力化出来る湊の能力によって対象者の能力を事前に完全に封じ込めておくことで、更に保険をかけているのだ。
そしてそんな両者の能力を、帝国最高の付与能力者である園田千春が媒介し、それを製造方法が秘匿されているヒヒイロカネ製の宝玉に付与している。
この『真実の珠』を搔い潜って虚言を述べることは不可能で、同時に複製も不可能。
これが『帝国に冤罪は存在しない』と言われる所以である。
ただ一つ欠点があるとすれば、帝国においてこの真実の珠を作成することが出来たのは湊が能力を失う前の時点までで、それまでに作成していた個数しか帝国にも現存していない(※5)ことである。
アリアレインを倒したことで能力が復活した今ならばその限りではないが、残念ながら文字通り住んでいる世界が違うのでこの場からではどうすることもできない。
とまあ、このように周囲からは色々な批判を受けることもある帝国の刑罰だが、罪を犯した犯罪者自身にとってもこれは決して悪いことばかりではない。
帝国のシステムは被害者(特に遺族)たちの心情はともかく、少なくとも与えた被害に対する金銭的賠償は強制労働によって完全に清算(失った物、特に人命などは決して戻ることはないが)されるため、刑が明けた時に犯罪者自身にかかる精神的負い目がより少ないというメリットも存在するのだ。
まあ、崇王たちのように被害清算後に直接処刑台行きというケースも存在するのだが、その被害の清算には軽く数千年は要することであろうから、いずれ処刑台に行くことが出来るという事実は彼らにとっては逆に地獄の中の救いの光となるのかもしれない。
このように、確かに犯罪者へ帝国の課す罰則は重い。
しかし、だからこそ帝国で行われる犯罪の件数は他国に比して劇的に少ないという側面もある。
衝動的な暴力事件や殺人事件などは別としても、計画的な犯罪、特に組織犯罪などについては以前にも触れた通り、黒幕に近ければ近いほど賠償金額が累積して大きくなっていくため、利益に対してのリスクが完全に割に合わないことから帝国内ではほとんど見られることはない。
これには犯罪捜査に能力者の能力が加わって、他国に比べ検挙率そのものが異常に高い(というかほぼ100%)という事実も大きく影響しているのだが、いずれにせよ、犯罪者が少ないということは同時に人権派弁護士などが意味不明に主張する『犯罪者の人権』が害されることも少ないということであるので、正に一石二鳥な方策だと思うのだが、どうしてか彼らはこれに納得してくれることはないのだ。
これについては、完全に見解の相違というやつなのだろう。
そもそも世界一の技術と国力を誇る帝国で、その豊かさと手厚い社会保障の恩恵にどっぷりと漬かりながらあーだこーだと無責任に批判だけしていられることがどれだけ幸せなことか、彼らは分かっていないのだ。
いずれにせよこれが帝国の犯罪者への向き合い方であるし、それが嫌であれば帝国を出ていけば良い話である。
帝国側としては去り行く者を特に引き留めるようなことはしないし、それにちょっと海を渡って南に行けば左派やリベラルの聖地ともいえる南時苗共和国がある。
あちらはちょっと通貨の価値が低いのに物価はものすごく高くて、食料品、衣料品、医薬品などの生活必需品や娯楽品などが不足しがちで、おまけに現在『書記長派』と『知事一派』が仁義なき政争を繰り広げている真っ最中でかなり政情不安定であることを我慢しさえできれば、きっと良いところである。
普段は散々『人権がー』『平和がー』『友好がー』言っているのに、いざ自分と主義主張が異なる相手に対すると極めて攻撃的で、時として平気でその権利や尊厳を犯し、己の理想を完遂するためには時として不法行為や暴力的手段に訴えることさえ辞さないという意味不明な人たちであるが、政治的思想が同じであればきっと大丈夫であるので心おきなく国籍移転して欲しいところである。知らんけど。
――――とまあ、こうして湊はアンリエスト地方とこの極東地域を領有することになったのだが、それにあたって義國から自分の妹を湊の嫁として正式に輿入れさせて欲しいという正式な要請があった。
表向きの理由としては、両国の同盟関係を円滑に進めるための橋渡しとして、ということになっているのだが、実際のところは、本人の希望ではあるのだが雪乃姫を能力者にするため湊が彼女を眷属化してしまったことで、結果として湊に生殺与奪の権利を握られてしまうことになったことから、奥羽国内の貴族たちへ嫁に出すことが出来なくなってしまったからという面が大きいだろう。
もし奥羽国内で雪乃姫が輿入れするとしたら国内の有力貴族のいずれかということになるだろうが、いくら友好国の王でその権利を行使する可能性は極めて低いからと言って、その有力貴族の嫁に隣国のトップがいつでも命令を下せる状態なのは国防上極めてよろしくないということだ。
逆に言うと『うちの妹をそんな状態にしたんだからお前きっちり責任とれよ』ということでもある。
それについては、雪乃の護衛である葉山黒鉄=七七についても同様である。
幾ら奥羽最強戦力といえど、本人の意思によらずいつ強制的に裏切られてしまうのか分からないのでは、手元には置いておくことは難しいであろう。
なので、彼女についても奥羽最強の『黒鉄』の称号は返納した上で湊の配下に加わることとなった。
雪乃姫としても姉妹同然に育った彼女が共にアンリエストへ来てくれるのは嬉しいだろうし、何より、カタリナ妃にはセリネとノワール、場合によってはロジエかウルミラが護衛に付いているのと同じように、雪乃姫にも七七が専任で付いてもらえるのは湊としても非常に有難いことだった。
そして、雪乃姫の護衛兼友人枠(※6)で言えば、七七の他にもう一人、天狐族の霞がアンリエストへと付いてくることになっている。
霞は銀髪の頭から特徴的な狐耳が生えている、見たところ十代後半くらいの美しい少女だ。
この天狐族というのは、代々『雷』を司る神人である『空狐』を輩出する一族のことで、この霞は今代の空狐である玉藻の実の娘の一人であるらしい。
この霞は次代の『空狐』として期待されてるほどの実力の持ち主で、天狐族の固有能力である『雷』の扱いに長けているのみならず剣術や体術の扱いも一流らしく、先の奥羽奪還戦や大雅国攻略戦でも目覚ましい活躍を見せていた。
雪乃姫や七七だけでなく彼女まで送り出してしまって奥羽の戦力は本当に大丈夫なのか?と正直思わないでもないのだが、それだけ義國は自分の妹が可愛いということなのだろう。
なお、大雅国撃退及び極東地域の領有にあたり、奥羽国と同じく大雅軍の侵略を受けていた天竺国の王からも自分の娘を嫁にという話が持ち上がったが、今は雪乃姫を迎え入れている最中で宮内がゴタゴタしているとかなんとかいう理由で誤魔化し、とりあえず不可侵条約と対等な立場での通商条約を結ぶことで何とかその場を乗り切ることに成功した。
ただし、後学のためにその娘をアンリエストに留学させたいとの強い要望を受けているので、天竺王が本当に婚姻を諦めてくれているのかは正直なところ分からない。
いずれにせよ、広大な魔の森や交通の要衝、そして強大な軍事力を抱えていたとはいえ、それまではクレッサール王国内の、それも一地方分でしかなかったアンリエストの領土が一気に拡大し、西方諸国のあずかり知らぬところでへムガール王国をも大きく上回る大陸最大の国家が誕生することとなった。
『強力な軍事力と並外れた技術を持つものの、所詮は小国』とあなどっていた西方諸国(カタリナから情報を得られるクレッサール王国を除く)がその事実を知り、驚愕に包まれるのはもう少し先のことである。
(※1)階位騎士第21位、藤井京子のこと。あらゆる傷や病を一瞬で治すことができる帝国最高の治癒能力者。
(※2)誰とはあえてここでは言及しないが、その人物はギルド動乱時に能力者でもないのに自分の目の前に能力者たちの屍の山を築き上げたと言われている。
(ちなみにep.50『設定資料 魔法帝国神無とは?』を読み返せばその正体はおおよそ察することが出来ます)
(※3)ミスリルは特殊な環境下で魔力を帯びて変質したチタンのこと。もちろん魔力を帯びていない普通のチタンもある。魔力を帯びている方は極めて希少性が高い。
ちなみに、タングステンも同様に魔力を帯びたものはアダマンタイトと呼ばれる。
オリハルコンは完全に地球には存在しない異世界固有の金属で、その性能と希少性はミスリルやアダマンタイトの比ではなく、地域を代表する大国がオリハルコン製の剣を一振り所有しているかいないかというレベル。
アンリエスト王国にも一振り存在しているが、それは元からアンリエストにあったものではなく、アリアレインが持っていたもの。おそらく過去にアリアレインを討伐しようと挑んで返り討ちに遭った高名な剣士が所有していたものであろう。現在その剣は紗希たちの研究のためのおもちゃになっている。
ただ一つぶっちゃけると、あらゆる性能面で四橋重工謹製の魔法金属ヒヒイロカネの方が性能が高いため、湊がオリハルコン製の剣を手にするようなことはおそらくないと思われる。
(※4)ベネズエルラの石油埋蔵量はおよそ3000億バレルで世界一。
(※5)敵ギルドからの諜報対策として渋谷ギルドの能力者は全員これを所有していた+いざという時の予備分が存在していたため、総個数は50程度ある。
そして、更にその内の10個程度が湊たちによってこの異世界に持ち込まれている。
全体の五分の一が異世界に持ち込まれたとなるとその割合が高すぎると思うかもしれないが、湊と共に渡ってきた仲間に渋谷ギルド出身者が多かったこと(個人所有分)と、いざという時の予備分を含めると自然とこの個数になる。
(※6)彼女たちはあくまでも護衛兼友人枠であって、もちろん雪乃の傍仕えとしてアンリエストへとやってくる侍女たちの数はもっと多い。




