第十六話◆出会いと襲撃、そして後悔
「行ってきま〜す」
弥彦がいつもの様に家を出る。あの戦いの後、葉月と暫く話、それからは何も無かった。だからいつも通り学校へ向かう。
そういえば、もうすぐ夏休みだなぁ〜……今年は色々疲れたからゆっくり休みたいな……
そんな事を考えながら弥彦が学校へ着くと、なにやら騒がしい。
騒ぎの中心になっている所へ弥彦も行ってみる。正門の直ぐ近くに生徒達が輪を作っている。それを押し退け前に出るのは一苦労だ。
「はぁっ、やっと前に来れた……て、ぐわあっ!」
前に出た瞬間、弥彦に人が飛ばされて来た。
「つぅ〜」
弥彦は飛ばされて来た人物の顔を見る。坊主頭にソリを入れていて眉毛も無く、制服をボロボロにしているその姿はどう見ても不良だ。しかしその不良は鼻血を吹き出し、前歯が折れていて、泡を吹いている。
既にやられているのだ。
コイツは確か三年の学校で一番強いと噂されている徳間 元か……コイツをぶっとばすなんて一体誰が……
と、その瞬間脳裏にある人物の姿が浮かび上がる。
「自分から喧嘩を売っておいてもう終りか?」
聞いた事のある声。
「葉月!!」
「よぉ、弥彦」
葉月は何事も無かったかのように弥彦に話かける。
その後継を見て周りを囲んでいた生徒達は絶句する。
それもそのはず、クラスで一番暗く不気味な雰囲気をかもしだす弥彦と、三年生を軽くあしらう強さを持つイケメン不良転校生葉月が仲良く話ているのだ。
と、弥彦はその視線に直ぐ様気付いた。
あぁ〜!やばい注目浴びちゃってるよ……確かにこのコンビは異色かもしれないよな……
「うわっ」
弥彦は突如何かの突進により吹っ飛ばされる。『何か』とは女子の群れだ。その中には二年生だけで無く、一年生や、三年生の女子も交じっている。
「うおぉ…凄い人気だな葉月」
弥彦は独り寂しく、背中に哀愁を漂わせながら歩いて行く。その姿はさながらリストラされたオッサンの様だ。
弥彦が教室へ向かうべく学校の廊下を歩いていると、一人の少女と肩をかすめる。
「あ、すいません」
相手の顔も見ずに弥彦は直ぐに頭を下げ謝った。しかし、返事が返って来ない。弥彦は頭を上げてみる……
少女は弥彦を無視し歩いていた。
「んだよアイツ……態度悪いなぁ」
その少女は茶髪で背が高いモデルの様な体型なのが、後ろ姿から確認出来た。良く見ると周りにいる男子達がコソコソと何かを話ている。
「やっぱ“宮城”さんは可愛いよな」
「いや、寧ろ美しい!」
「いや、寧ろ萌える!!」
「いや(ry」
なんだ?やっぱ人気なのか……でもやっぱり人は中身だよなぁ、ぶつかっといて謝罪の一つも無しに行っちゃうなんて……忙しかったのか?
「でも宮城さんの魅力はあの冷めた性格だよな」
「いやぁ〜もうちょと優しい方が可愛いと思うよ。なんかトゲトゲしいんだよな、言動とか」
「馬鹿が!きっとツンデレなんだ、やはり萌える……」
なんとなくどんな人物なのか想像出来た。ま、顔は普通で良いから優しい子が俺は好きさ
……なんて人を選べる人間じゃないな、俺は
教室に入り自分の席に着く、暫くすると先生が入って来た。HRの始まりだ。先生が話を始めると遅刻して遅刻して葉月が教室に入って来る。何やら制服がよれよれになっていて、女子達にもみくちゃにされた様子だ。
女子、恐るべし!
「遅いぞ相羽!」
先生が注意する。
「うっせぇんだよ先公が!」
不良の代名詞の様な台詞を吐き葉月は席に着く……俺の横の席に……
先生は口を開けて暫くポカーンとしていたが、気を取り直し話を続けた。
――夏休みまで後四日だそうだ。
HRの後、俺は教室を出て別のクラスに向かった。親友、太四郎のいるクラスだ……しかし
「え、高橋?今日も来てないよ」
クラスの人に聞いてみたところ、太四郎は学校に来ていないようだ。二日来ていない……普通は風邪かなんかだと思うのが普通だが、弥彦は深く考える。
太四郎が風邪をひいた事は今まで一度も無かった。それに人当たりが良く皆に慕われ、責任感や正義感の強い太四郎の事だ、虐めや不登校なんて事は無いだろう。
何かあったのか?今日は帰りに太四郎の家に寄ることに決めた。
学校が終わり弥彦は太四郎の家に行こうとした。
「弥彦!」
何かが弥彦を引き止める。葉月だ。
「なんだよ?俺今日行くとこあるんだけど」
「何だよ、用事あんのか……じゃあいいや。またな、殺されるなよ」
葉月は笑いながら言ったが笑い事じゃない。
葉月の家は学校から30分程度だ、弥彦はゆっくりと歩いて行く。
太四郎の家に着いた、インターホンを押すと太四郎が出てきた。親は今出かけていていないのだと言う。
「あぁ、弥彦」
「太四郎どうしたんだ?学校来てないけど」
「ん、ちょっと風邪ひいちゃって」
「お前が!?珍しいなぁ」
「うん、生まれて初めて風邪をひいたよ。あ、御見舞いに来てくれて悪いけどまた今度ね……薬のせいで眠くて……」
「そうか、じゃお大事に」
普通だった。ちょっと元気が無かったが、気にする程の事でも無いだろう。
帰りに寄り道をすることに決めた。何処へ行くかは決めて無いが、とりあえず何処かへ行きたい。時々こういう衝動に駆られるのはゲームや漫画のせいだろうか?
弥彦は電車に乗り、少し田舎チックな場所へ降りた。自分の家から三駅しか通って無いのに、雰囲気がまるで違う。
いつもと違う場所に行くと何故かワクワクする。弥彦は人通りの少ない路地を歩いた。狭い道だが車も少なく、歩くには最適だ。だんだんと太陽が落ちてきて星が見えて来る。そろそろ帰ろうか?そう思った矢先、後ろから気配を感じる。
確実に付いて来ている。
まさか……弥彦は思った。
そして、予想は的中する。
弥彦は後ろを振り向く。すると後ろから紫のコーナーをはおった男三人が現れる。
またか!やっぱ寄り道なんかしなきゃよかったああぁ!
後悔後に立たず……そんな言葉あったかな?
「なんですか?」
弥彦はビクビクしながらも尋ねる。
しかし男は答えなかった。かわりにポケットに手を突っ込み、拳銃を取り出す。
そして弥彦にめがけ発砲する。サブレッサーを付けているのか、発砲の発砲時の音は空気が抜けるような音だった。
反射的に体をくねらせ、弥彦は弾をかわした、男はそれに対し舌打ちをする。
「やはり拳銃では……」
「仕方がないだろうこんな町中では」
「うるさい、俺は一撃で殺したかったんだ!」
「奴はabilityだ。拳銃じゃ当たったとしても殺せないさ」
なんなんだあの連中は?ビプロイツなのか…それにしてはいつもと雰囲気が違うような…とりあえず銃を持ってるんだ、今は逃げないと。
「逃がすか!」
男は銃を撃ち弥彦の道を遮る。
「うわあっ」
「貰った」
弥彦が戸惑っている瞬間に、もう一人の男が弥彦に接近し、蹴りを浴びせる。
「痛っ」
蹴りを放った男は、弥彦が吹き飛び、地面に着く直前に銃を撃ち追撃を加える。
しかし、弥彦は空中で地面に手を付き、手で地面を押し返し翔び上がり銃弾を避ける。
「なんだと!?」
地面に着地した弥彦は呟いた。
『そんな玩具で我を殺す気か?笑止!』
弥彦、否ディアボロスがそう言い、右腕を変化させる。ディアボロスは変化した右腕を見て不気味に笑う。
「く、やはりディアボロスが現れたか……ビプロイツとの戦いで秋草弥彦は命の危機が迫るとディアボロスが現れると分かっていたが……本当だったか」
「こうなることは分かっていた。これより目標を抹殺する」
「了解」
男達は両手に銃を構え発砲していく。
しかしディアボロスは右腕を盾にし、銃撃をかわしながら接近する。男達は散開し三方向から銃撃を見舞う。
『こざかしい』
一人の男に狙いを付け、右腕を伸ばし捕えようとする。
男は銃をしまい、剣を取り出した。迫るディアボロスの腕に剣をぶつける。しかし剣はディアボロスの腕に弾かれてしまう、しかし、その衝撃で男は迫る腕をかわす。
その間に他の二人が隙だらけのディアボロスを銃で攻撃する。しかし、生身の部分に当たっているはずなのに、弾が当たって出血はするが直ぐに再生してしまう。
「なんだと!?どうなっているんだ」
「分からない…が、銃は効かないと言うことは分かった」
ディアボロスが腕を戻そうとすると、ターゲットにした男が腕よりも速い速度で、ディアボロスに接近し、同時に飛び膝蹴りを顔面に与える。
怯んだディアボロスに他の二人が銃で援護し、再び三人が固まる。
動きの止まったディアボロスを見て三人の男はマガジンを取り替える。
『汝ら、我に爪を立てた事、後悔するがいい』
不気味に口元を歪めディアボロスは三人の男を睨んだ。
今回は久々に長い話ですね〜。
とりあえず気分的にはプロローグが終了して、気合を入れてる状態です。
では、感想御意見などお待ちしております。
PS,エアガンのサブレッサーは全然消音効果がありませんね(笑