第十一話〜消滅の神VS闇の騎士〜
消滅の光は、進路をも削り取りながら、一直線に突き進んだ。
「なに、考えてるんだよ!!あいつぁ」
葉月が驚きを隠せない表情で硬直している。
葉月と戦っている三十人ほどの白コート達も、焦り、急いで回避行動に移る。
――光は、葉月達がいた空間を呑み込み、そのまま後ろに控えていた、廃虚病院をも吹き飛ばした。
『ククク…まだ、生き残りがいるか』
ディアボロスは辺りを見回し言った。 周囲は煙に包まれていて、視界は非常に悪い。
「っの――」
煙から何かが飛び出した。
「馬鹿野郎! 俺まで殺す気か!?」
葉月だ。 葉月は、右腕で弥彦の襟首を掴み上げ、宙に浮かせ、武器と化した左腕を、弥彦の頬に近付けた。
「学校で手を叩いたのは悪かったけど……お前はやり過ぎだ!!」
葉月は怒りをあらわにして、弥彦を怒鳴りつける。
『貴公は……ダークナイトか。
貴様の様な、道を外れ落ちぶれた騎士が、我に牙を向けるとは……何事だ!』
「なっ――お前、……一体」
『貴公も消してくれる!』
ディアボロスは、足を大きく振り上げ、そして葉月を蹴り跳ばす。
「ぐはっ」
葉月は地面を擦りながら吹き飛び、数十メートル飛ばされてから、止まった。
「の、野郎ぉ……俺を怒らせたな」
葉月は立ち上がり、左腕を構えた。
『面白い、歯向かうかダークナイト』
「死ねぇ!!」
地面を蹴り加速、左腕を突きだし弥彦を串刺しにしようとする。
『貴公の攻撃など、避ける必要すら無い』
ディアボロスは右腕を差し出し、葉月を迎え撃つ。
「なめるなぁ!!」
一気に撃ち出された突きは、ディアボロスの右腕に当たった。
だが、高い金属音が響き渡り……ディアボロスの右腕は無傷。
「な……に」
『消えろ』
自分の攻撃が効かず、動揺し、動きを止めた葉月に、ディアボロスは左腕でパンチを繰り出す。
「つっ」
葉月は間一髪、右腕でパンチを受け止めた。 しかし
「ぬぁっ!」
再び衝撃により吹き飛ばされる。
「っとお……どうなってんだ。 abilityは右腕だろ……なんで普通のパンチでこんなに吹き飛ぶんだ」
葉月は見事着地し、疑問を浮かべた。
それもそのはず。 通常、abilityは体の一部が変形して武器となるもの。
そして武器となった部分には、そのabilityによる様々な……その名の通り、“能力”を得ることが出来るのだ。
しかし、それはabilityの部分だけ……葉月であれば槍となった左腕“だけ”に能力が宿る様に……
つまり、生身の部分で、あれほどの攻撃力を生み出したのは、不思議でしかないのだ。
弥彦の体はどう見ても、先程の一撃を繰り出せるとは思え無い程、細く、貧弱なのだから……
「ダークナイト……“あれ”をやろう」
弥彦はポツリと左腕に話かけた。
それに呼応するかのように、葉月の左腕は、赤く、燃え上がり、炎を身に纏った。
その炎は葉月の髪と、目と、同じ赤色だ。
「俺を怒らせた罰だ。 ……燃え尽きろ!!」
葉月は燃え上がった左腕を突きだし、猪の如く弥彦めがけて突進。
『愚かな……そのような攻撃は無駄だと、何故気付かぬ』
ディアボロスは右腕を葉月に向けた。 そして『デイストーション』
あの破壊の光を発射した。
「こっのぉ!!」
葉月は捨て身のつもりで、弥彦の心臓をめがけ槍を伸ばした。
しかし、その一撃を避けたディアボロスは、デイストーションの狙いをずらした。
消滅の光は空を切り、空に浮かぶ雲を切り裂いた。
『くぅ、まだ不完全か……そろそろ中に戻され……』
突如ディアボロスの体が動かなくなる。 それを見た葉月が、
「貰ったぁ!」
飛び上がり、心臓をめがけて槍を突き出す。
『この体に傷はつけられない……』
ディアボロスは最後に右腕を盾にして、葉月の攻撃を防ぐ。
燃える葉月の槍は、硬質な金属よりも硬いであろうディアボロスの右腕を貫き、燃やし、切断した。
ん、おぉ、やっと意識が戻って来た。 一体、俺はどうなった?生きてるのか?
「これで終わりだあぁ!!」
葉月が槍を弥彦に突き刺そうとしている。
て、おいチョットォォ!なんだこりゃあ! 起きてそうそう、殺されそうだ!!
「たったっ……タァーイム!」
んな事言って止まる訳ないか……俺、死んだ。
「え?」
葉月の動きが止まった。
止まってくれたあぁぁ!!
「えと、あの……」
弥彦は目を涙ぐませながら……
「ありがとぉう!」
葉月に礼を言ってしまった。 葉月は、突然の豹変ぶりに、口を開け呆然としてしまった。
今回はもうちょと長く書きたかったのですが、色々あって少し短くしました。
ん〜なんか同じ表現の使い過ぎが、少しテンポを悪くしてるような気がします……