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最強の学園で、最凶の運命に挑む ―それでも、俺たちは運命に抗う―  作者: sakura


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適性検査

 水晶を配り終えたセドリックが教団に戻り、説明を始める。


「では、こいつの使い方を教えるぞ。まず、水晶に手のひらを向けて魔力を練るんだ。この時、間違っても魔法を発動させるないように注意するんだぞ。しばらくすると、適性のある属性に応じて水晶に何かが浮かび上がるだろう。火に適性が有れば炎が映し出たり、水なら海とか。とにかく、適性に応じた何かが浮かび上がってくるからしっかり確認するだぞ」


 そう言いながらセドリックが実演を始めた。彼が水晶に手を向けると、水晶には轟々と燃え盛る炎が写し出される。


「このようにわしの適正は火だから燃え盛る火が映し出される。ここで、魔力を練ることをとめずに続けると今度は、水晶の中に色が浮かび上がってくる。それが魔力量を示している。」


 しばらくすると、写し出されていたものがだんだん消えていき、透明なった水晶の中に色が現れ始めた。青、緑、黄、赤、そして紫へと次第に色が変わっていく。


「わしの場合、紫色だ。これは大体、大魔法を10発ほど撃っても平気なラインだということだな。ただし、これはあくまで目安だ。魔力を無理に使えば枯渇するし、回復も追いつかん。過信は禁物だ。」


 そう言うセドリックの視線は厳しく、どの生徒に対しても容赦のないものだった。


「では、各自やってみろ。」


 その言葉を合図に各グループ自分の机に向き直り、誰が最初に確認するか話し合い始めた。


「じゃあ、まずは私がやってみてもいい?」


 元気よく手を挙げたのはティアだった。


「ああ、かまわないぞ。」

 

 レオンが頷くと、ティアはにこりと笑って「ありがと」と礼を言い、水晶に手を向けた。


 しかし、しばらく待っても何の反応も起きない。ティアだけでなく、レオンや周囲の生徒たちも戸惑った表情を浮かべる。


「……ん?何も起きないな?」

「これって……もしかして適性がないってこと?」


 教室のあちこちから似たような声が上がり始める。動揺が広がる中、ティアは苦笑を浮かべつつ、レオンに振り返った。


「ねえ、これって……何か間違えちゃったのかな?」


 ティアの水晶が無反応のまま時間が過ぎ、彼女は困ったように首をかしげた。


「うーん、なんでだろう?魔力はちゃんと練ってるつもりなんだけど……」

「そう焦るな、ティア。俺も同じことが起きたらどうするか考えとくよ。」

 

 

 レオンが微笑みながら言う。その後も続けるが何も反応が起きない。


「……できないのかも。私、みんなと違ってるのかな。」


 小さく呟いたその声は、誰にも届かないほどか細かった。

 教室内がざわつき始めたころ、セドリックが生徒たちを見回しながら重い声で言った。


「静かにしろ!騒ぐな、これは普通のことだ。」

 

 全員がセドリックの方を向き、彼の話に耳を傾ける。

 

「いつも魔力を使うときは魔法を発動するときだから、感覚がつかみにくいのだろう。魔法を放つときとは違う、もっと自然の流れを意識しろ。コツは血流のように体を巡らせる感覚だ。それを意識して魔力を水晶に流せ。」


 生徒たちはセドリックの言葉を反芻しながら、それぞれ再び水晶に向かい始めた。ティアも深呼吸して心を落ち着けると、もう一度挑戦した。


「……血流みたいに、ね。」

 

 ティアは深呼吸し、心の中で「大丈夫、やれる」と自分を励ました。手を向けた瞬間、水晶の周囲に透明な膜が現れ、それが次第に輝き始めた。同時に、水晶にも何かが写し出されていく。木々や花が急成長していく。ティアはそのまま魔力を練り続ける。すると水晶はやがて紫色に染まり、安定した光を放った。

 

「やった!ほら、見て!」

 

 彼女は嬉しそうに声を上げたが、セドリックが軽く咳払いをすると、慌てて静かにした。


「どうやら君は結界術や回復などのサポートが得意のようだ。魔力も私と同じくらいはありそうだな。」


 他の生徒たちも徐々にコツをつかみ、それぞれの適性や魔力量が浮かび上がっていった。


 次はレオンの番だ。彼は水晶に手を向け、言われた通り魔力を巡らせる感覚に集中する。しばらくすると、水晶の中には激しい吹雪が写し出されていく。最後に水晶は黄色を示した。


「適性は氷と風と言ったところか。魔力量は中程度……まあ、妥当なところだな。」

 

 セドリックが結果を伝えると、レオンは肩の力を抜いて水晶から手を離した。

 

「なんとかできたみたいだな。ただ中程度か……無駄遣いはしないようにしないとな。」

 

 レオンが軽く笑いかけると、ティアが笑顔で親指を立てて応じた。


 次はカイルの番だ。彼は意外にも軽い表情で水晶に手を向けた。水晶の周りに水滴が浮かび始めると、さらに微かに揺らぎが生じる。水晶の中では蜃気楼のような現象が起きる。そして水晶には青みがかった緑色が薄く浮かび上がった。


「カイルの適性は水と……幻影か。幻影は特異な適性だ。敵を惑わせたり、隠れる技術に向いている。ただし、使い手の創意工夫が重要だな。そして魔力は、平均以下か。」

 

 セドリックの指摘に、カイルは拗ねたように口を尖らせて肩をすくめた。

 

「まあ、使い方次第だろ。少なくても、工夫すりゃなんとかなるさ。」


 最後にリリスが前に出た。彼女が水晶に手を向けると、すぐに火のような熱と土埃を伴う力が現れた。生徒たちがざわつく中、水晶には何の色も現れないまま、そのまま淡い光を放ち続けている。


「リリス、君は魔力操作が苦手なようだ。魔法が漏れ出ているぞ。適性は火と土だが……魔力量は測定不能、か。」

 

 セドリックが腕を組んで考え込む。


 「そ、測定不能ってどういうことだよ?」

 「そんなことあり得るのか……?」

 

 生徒たちのざわめきが一気に広がるが、リリスは静かに水晶から手を離した。

 

「測定不能って……どういうこと?」

 

 ティアが尋ねると、セドリックは眉をひそめながら答えた。

 

「単純に言えば、普通の範囲を超えているということだ。管理を怠れば暴走する可能性もあるだろう。君は模擬戦でも暴発したようだし特に気をつけろ。」


 リリスは冷静な表情を崩さなかったが、その瞳の奥にはわずかな不安が見えた。


「特に感情の高ぶりには気をつけるんだ。君の魔力は極めて大きいが、だからこそ均衡を失えば危険だ。冷静さを忘れるな。」

 

「分かりました。しっかりと管理します。」

 

 彼女の静かな決意を感じた教室の空気が、少し引き締まったようだった。


 その後、全員が測定を終わり授業も終了に差し掛かっていた。


「全員、結果は出たな。覚えておけ。魔力は使いどころ次第で何倍にもなる。自分の適性と向き合い、工夫を重ねろ。それが戦いで生き残る鍵だ。」


 セドリックが言い終わると同時に終了を告げるチャイムが鳴った。


「ではこれにて今日の授業を終了する。」


 セドリックの声に続いて、生徒たちは片付けを始めた。慌ただしい動きの中、ティアがリリスに近寄って微笑む。


「リリス、一緒に寮に戻ろう!今日の話も色々したいしさ。」


 リリスは静かに頷き、少しだけ口元を緩めた。


「ええ、行きましょう。」


 一方、レオンは荷物をまとめながら隣のカイルに目を向ける。


「僕たちも寮に戻ろうか。さあて、今日の御飯は何にしようかな。寝坊したせいで何も食べれてないからお腹ぺこぺこだよ」

「俺なんか昨日の夜から食べて無いせいでもっと空いたよ。」


 そんな軽口を交わしながら、それぞれが教室を後にする。


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