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最強の学園で、最凶の運命に挑む ―それでも、俺たちは運命に抗う―  作者: sakura
揺らぎ始める日常

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剣は傷つき、錆びる


「で、ミレーナ先生達に運ばれて来たってわけよ」


 保健医はカルテに検査結果を記入しながらレオンが気絶してからのあらましを話をしてくれた。


「ミレーナや先生たち、たくさんの人に助けられて守られたんですね……」


 顔を伏せてしまっているため、レオンの気持ちを表情から伺うことはできない。だが、膝の上で強く握られている拳が彼の気持ちを表しているのは誰から見ても明らかであった。

 これ以上彼の心を、プライドを傷付けないため彼女は話を終わらせ部屋を出る準備を進めていく。

 荷物の整理も終盤になった時、彼女がまた声を発した。


「そういえば。あなた、1ヶ月以上寝たままだったから過激な運動とかは控えるようにする事ね」

「は?」


 その言葉はレオンにとってとても衝撃的なものだった。自分が負けた、死にかけたそういった話よりも理解するのを脳が拒んでいた。

 

(今、何て言われた?1か月?寝てた?)


 伏せていた顔を勢いよくあげ保健医に確認を取った。


「え、あ、あの!1か月寝てたって、本当ですか……?」

「ん?ああ、本当だぞ。正確には1か月と半月かな」

「な、なんで……」

「なんでって。さっきも言ったけどあなたは魔力欠乏症で倒れてたの。」


 そういいながら保健医は椅子に腰かけながらレオンに説明を始めてくれた。


「まあ、これについて詳しい人も少ないししょうがないけどね。いいわ、説明してあげる」


 途中から熱が入ってきたのかどんどんどんどんいろいろ話に逸れながらも説明してくれた。

 要約するとこうであった。


 そもそも魔力とはすべての生命体の体を巡るものであり、それは血液と同じように身体機能の一部としてとても大事なものである。魔力欠乏症とはその体内を巡ってる魔力が不足もしくはなくなってしまったことを指していてそんな状態に少しの時間でも陥ってしまえば非常に危険な状態に陥ってしまうなど想像に難くなかった。

 レオンもデスグリズリーに全ての魔力を使って攻撃を仕掛けたためもれなく魔力欠乏症に陥った。本来であれば魔力濃度の高い場所などで療養させたりするのが普通であるが、それでも魔力の回復も本来は周囲に漂っている魔力を体内の魔力に混ぜて馴染ませながら自分の魔力に変換させるため、そもそも欠乏症の状態では回復させること自体非常に困難なものになるそうだ。その為、普通は魔力欠乏症になったら数か月単位で意識が回復しなかったり、最悪死んでしまったり、目覚めても後遺症が残ってしまったりと危険なものらしい。

 

 そんな中今回のレオンはとても運が良かった。それは、スフィラと契約していたり、その場に駆け付けたのが魔法研究の第一人者ダリルであったり、精霊研究の権威セドリック、生まれながらに精霊に好かれやすくその力を100%発揮させることができるミレーナという状況にとても最適な者たちだったこと。

 彼らの閃きやこれまで積み重ねてきた知識の結果レオンは普通ではありえない速度で魔力を回復させて目を覚まし、後遺症も残っていないというとても恵まれた状態にいるらしい。


「そんなわけであなたはいろんな人に生かされたの。それを忘れずに、先生たちに会ったらちゃんとお礼を言うのよ。じゃ、わたしは戻りますね。それじゃあ」


 そう言い残し保健医は病室を後にした。


 病室が自分一人になってしばらく考え込んでいた。

 一人では誰も守れなかった。

 どうして守れなかったんだ。

 弱いから、誰も守れなかった。

 自分がもっと強ければ仲間たちが傷つくことはなかったのかもしれない。

 今までの訓練は何だったんだ。

 意味がなかったのか。

 なんのために訓練をしてきたんだ。

 ミレーナが教えてくれたのにそれをすべて無駄にしたのか。

 どうして……

 なんで……

 どうして、俺は………………。




 

 「ふざけるな!!!」



 

 

 強く握った拳をベッドに打ち付ける。いくら柔らかい素材とはいえ本気で殴れば多少の痛みはあるがそんなものは気にならなかった。

 声も、物音も誰が聞いてくれるわけでもなく、どこかに吸い込まれるように消えていった。

 気持ちを落ち着かせるため何も考えずにしばらくじっとしていると病室の扉が叩かれた。


『レオン、起きてるか?入るぞ』


 聞き覚えのある女性の声が聞こえたと思ったら返答も待たずに病室に入ってきた。


「ミレーナ、せめて返事くらい聞いてくれ」

「そうだな。お前も男の子だもんな」


 ニヤニヤしながら言ってくるミレーナにイラついてくる。今は一人にしてほしい。それが本心であった。


「悪いんだけど今は一人にしてほしいんだ。頼むよ」

「ああ。今がそういう時期なのはわかってる。でもな」


 優しい笑みを浮かべながらレオンに近づいてくる。


「私はお前を息子のように思っている。息子が目を覚ましたと聞いたんだ。無事な顔を少しくらい見せてくれよ」


 ミレーナはレオンの頭を優しく抱きしめる。


「レオン。生きていてくれてありがとう。」


 レオンの心が少しだけ溶けていった。


「ごめん、ミレーナ。助けてくれてありがとう。」


 そういってミレーナの背中に手を回そうとしたその時だった。病室の扉がまたノックされた。

 背中に回そうとした手でそのままミレーナを退ける。危機一髪で扉が開く前にミレーナを引きはがすことに成功し胸をなでおろす。


「見舞いに来たぞー、ってミレーナ先生!」


 そこには最近よく見慣れた顔が4つ並んでいた。会いたくないと思っていたのに、顔を見ると少しだけ胸が軽くなるのを感じた。


「おお!君たちはレオンと班を組んでくれていた子と、ともだちのスフィラじゃないか!君たちのケガももう大丈夫そうだね」

「はい!先生たちのおかげでもうばっちりです!」


 ティアが元気よく返事をしながらいろいろなポーズを取りアピールをする。


「君は素直でかわいい子だね!レオンもこれくらい素直になってくれればいいんだけどね。オヨヨ……」

 

 ティアの頭を撫でながら泣き真似をしながらレオンの方をチラチラしている。いい加減我慢の限界を迎え出てけと叫びそうになると、それを察知したミレーナがレオンに向き直り話始める。


「無事そうな顔も見れたしそろそろ帰ろうかな。私も暇じゃないからね」


 手をヒラヒラさせながら逃げるように病室を後にするミレーナの後ろ姿にため息がつい出てしまう。

 だがさっきまで胸の中を渦巻いていた感情が少しだけ無くなった気がしていた。検査も終わったばかりだし少し横になりたいなと思っていたが、目の前の光景がどうやらそれを許してくれないことを予感させていた。

 

あけましておめでとうございます。本年も私と作品をお願いします。


お正月に2章の話ごとの細かいプロットを作成して書き始めたのですが、今回の話で書きたかった半分くらいしか書けませんでした…なんかこいつら勝手に動いてるんだよ…

書きながら「あれ?こんなシーン入れるってプロットに書いたっけ?書いてないんだよなあ」ってのを何回か繰り返しました。でも、彼、彼女らが動きたいように動いてくれればこの物語もいきいきしてくるかもしれませんね。そうやって目をそらすところから始まった2026年ですがみなさんよろしくお願いします。

PS.ドンデコルテ好きです。

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