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最強の学園で、最凶の運命に挑む ―それでも、俺たちは運命に抗う―  作者: sakura
入学式と討伐訓練

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静寂を砕く恐怖の影


 静寂が支配する森の中、四人は息を殺して待ち構えていた。微かな風の音が葉を揺らし、草むらの中で何かが動くたびにその音が彼らの耳に届く。


 ゴブリンロードの足音は、ますます近づいてきている。それは重く、鈍く、そして力強い。しかし、今の位置からはまだその姿を確認できない。


 レオンは剣をしっかりと握り、目を凝らしながら息を呑む。彼の背筋はぴんと伸び、体の中に温かい戦闘のエネルギーが流れ込むのを感じる。彼の脳裏に浮かぶのは、仲間を守るという強い決意だけだった。


「ティア、準備はできてるか?」

「うん、いつでもでも撃てるよ。」


 カイルの声に、ティアはうなずいた。彼女はすでに矢を放つ準備を整え、風の精霊の力をその身体を媒介にし矢に注いでいる。自分の放つ一撃が戦いの流れを決めるという重圧の中、不安で心が折れそうになっていたが彼女の目はどこまでも冷静に敵がその姿を出す瞬間を逃すまいと集中していた。

 カイルはレオンより少し後方でじっと周囲を見守っている。その表情は、どこか冷静さを保ちながらも、心の奥では緊張を感じているのがわかる。


「レオン、ティアの初撃がゴブリンロードに当たったらいよいよ本番だ。君が動いたら、僕が後ろから追撃する。焦らずに、慎重に。背中を預けるのが僕じゃ頼りないかもだけど、信じてくれ。」


 その言葉にレオンは頷き、さらに気を引き締めた。


「信じないわけないだろ。背中は任せたぞ。」


 そして、ついにゴブリンロードの姿が茂みの向こうに現れた。巨大な体、鋭い爪、そして獰猛な目。見た目に反して、その動きは速く、恐ろしい力を秘めている。


「来た……!」


 ティアの言葉と同時に、レオンは大きく一歩前に出た。剣を構え、ゴブリンロードと視線を合わせる。その瞬間、ティアが風の精霊を解放し、矢を放った。


 風の矢は空気を切り裂き、鋭い音を立ててゴブリンロードに向かって飛んでいく。その速度は尋常ではなく、矢がゴブリンロードに命中する瞬間、力強く風の衝撃が広がった。ゴブリンロードの動きが一瞬鈍る。


「今だ、レオン!」


 カイルの声が背後から聞こえる。


 レオンはその合図を待っていたように、ゴブリンロードに向かって突進する。巨大な敵に立ち向かうため、全身を使って攻撃を仕掛けた。剣を大きく振りかぶり、その一撃でゴブリンロードの体に深く食い込ませる――


 はずたったが、ゴブリンロードはその巨体に似合わず予想以上に素早かった。レオンが振り下ろした剣を受ける前に、その巨体が猛然と反応し、突如として巨大な腕で彼を打ち飛ばした。


「っ――!」


 ゴブリンロードの攻撃が当たった瞬間、ウィンターエッジを地面に刺しなんとか遠くまで飛ばされるのを防いたが前線はカイル1人になってしまった。


「レオン!」


 ティアが声を上げ、すぐに駆け寄ろうとするが、ゴブリンロードはその体重を利用して前に出てきて、地面を揺らしながらさらに攻撃の準備をしている。ゴブリンロードの動きに思ったように動けずティアは顔を歪める。


「くそ……!」


 カイルも焦りながら、剣を構え応戦するが、ゴブリンロードの手ごわさを前に、思ったようにダメージを与えられないでいた。


 リリスはじっとその場に身をひそめているものの、戦いの行方を見守りながらいざとなった時に自分も戦えるように準備を始めていた。


 レオンは歯を食いしばり、なんとか体勢を立て直す。目の前ではカイルがなんとか攻撃を受け流し、ティアが距離を保ちながら精霊の力を借りてダメージを与えていた。


(このままじゃ、みんなが危険だ――)


 レオンは再び立ち上がると、今度はより一層強くゴブリンロードに向かって突進した。だが、その動きがゴブリンロードには見透かされ、攻撃をかわされてしまう。


 カイルと前線を交代し息を切らしながら、何度も攻撃を仕掛ける。その瞳には決して諦めの色を見せず、ただひたすらに目の前の敵を倒す覚悟が宿っていた。だが、ゴブリンロードの巨大な腕が再び迫ってくる。次の一撃が来るのを感じ、レオンは身をひねってかわそうとしたが、先ほどのダメージのせいで思うように身体が動かない。


「っ……!」


 ゴブリンロードの腕がレオンの肩を捉え、彼を大きく吹き飛ばした。なんとかウィンターエッジで攻撃を受けることは出来たもののその威力は強大で意識が飛びかけていた。


「うっ……」


 頭がぼんやりとし、身体が麻痺したように動かない。だが、レオンの心はまだ燃えていた。彼は必死に手をついて起き上がろうとしたが、ゴブリンロードがレオンへ追撃を仕掛けるために近づいてきておりその振動で上手く立ち上がれずにいた。


 そのとき、ティアがすぐさま弓を引き絞り、今度は火の矢を放った。火の矢はゴブリンロードに向かって飛んでいき、その足元を狙う。しかし、ゴブリンロードは反応が早く、矢を大きく弾くように腕を振り上げた。


「ティア、下がれ!」


 カイルが声を上げ、ゴブリンロードの背後から攻撃しながらティアへと叫んだ。しかし、ティアは後ろに下がることなく矢を放ち続ける。風の精霊の力が込められたその矢は、次々とゴブリンロードの防御をかいくぐり、弾けるように命中していく。


「もう少し……もう少しで!」


 ティアの目には強い意志が光っていた。その矢を放ちながら、次に何をするか、どうすればゴブリンロードを止めることができるか、冷静に考え続けていた。


 だが、その瞬間、ゴブリンロードが鋭い叫び声を上げた。一撃一撃は大したダメージにはならないが、こうも連続して当てられると溜まったものではなかった。ゴブリンロードが一瞬足を止め、鋭い目でティアを捉えその巨体に似合わぬスピードでティアへと迫った。


「くそ!俺のことは無視かよ!ティア、気をつけろ――!」


 カイルが叫ぶが、その声はすでに間に合わない。ゴブリンロードの巨大な足が勢いよく振り下ろされ、ティアを狙って真っ直ぐに踏み込んでくる。


「……っ!」


 ティアはすぐさま反応し、身をよじって回避しようとしたが、その動きがわずかに遅れた。ゴブリンロードの足が地面を叩く音とともに、ティアは体勢を崩し、ひっくり返るように倒れた。


「ティア!」


 レオンが必死に叫ぶ。まだぼやっとする頭を自分で殴りつけ無理矢理覚醒させ、体と心を奮い立たせる。そのままゴブリンロードからティアを守るために今出せる最高速度で走り出す。しかし、ゴブリンロードは無慈悲にもその巨大な足を振り上げ、ティアへと再度攻撃を繰り出そうとする。


 ティアは急いで立ち上がり、素早く弓を構えるが、その視線の先にあったのは、ゴブリンロードの無慈悲な足の先端だった。次の一撃が来るのは時間の問題だ。


「っ――!」


 もう避けることも出来ないと目を瞑ったその時――


「間に合えっ!!」


 レオンの声が響いた瞬間目の前で轟音が響いた。

 なんと、レオンが愛剣でゴブリンロードの攻撃を受け止めていた。


「レオ……ン……?」

「間に合って良かった!早く退くんだ!」


 ティアに攻撃が当たるギリギリの所で間に合ったレオン。

 目の前で何が起きたのか分からずに立ちすくむ。震えた声で名前を呼ぶ。レオンを助けるために距離を取り弓を射る準備をしなければいけない。頭では分かっていても足が地面に縫い付けられたような動けずにいた。


 (動いてよ!私の身体!)


 喉の奥で言葉が使える。次第に呼吸も荒くなっていく。動き出せずにいるティアにレオンも焦っていた。


「カイル!早くティアをつれて離れろ!」

「まかせろ!」


 ティアを守るために既に動き出していたカイルがティアを抱えてレオン達から離れる。その姿を確認したレオンの心に安堵が広がり一瞬ではあるが気が緩んでしまった。その隙を逃すゴブリンロードではなかった。レオンに受け止められていた足の拘束を抜け出し地に両足を付けたかと思うと、次は両手を組み上空へ振り上げた。

 拘束を解かれた事で怯んでしまったレオンは次に来る衝撃に備えることすら出来ず強烈な一撃をモロに食らってしまった。


「しま……った……」


 そののまま地面に倒れ込むレオン。


「「レオン!」」


 カイルとティアはレオンの名前を叫んで駆け寄ろうとするが、ゴブリンロードの視線は既に2人を見据えていた。

 

 レオンを助ける為にティアは弓を構えていた。しかし、指先が震え上手く矢を引けずにいた。

 心臓がうるさいほど暴れて、胸の奥が痛い。

 目の前の影――ゴブリンロードが一歩踏み出すたびに、足首から冷たいものが這い上がってくる。


「動いてよ……動けってば……!」


 頭ではわかっているのに、足が土に縫い付けられたみたいに動かない。

 レオンが倒れた瞬間、息が喉で引っかかって、肺が空気を取り込むことさえ忘れてしまった。

 カイルがゴブリンロードへ突撃していくが、剣がゴブリンロードへ当たる直前、その巨体は高く飛びティアの目の前へ降り立った。


「……いやっ!」


 ティアへゴブリンロードの無慈悲な一撃が振り下ろされる直前、レオンの周囲を暖かい風が包んだ。

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