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最強の学園で、最凶の運命に挑む ―それでも、俺たちは運命に抗う―  作者: sakura
入学式と討伐訓練

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静かなる作戦会議


 ティアの言葉に、全員が顔を上げた。


「親玉……ゴブリンロードって、マジかよ……」

 

 カイルが喉を鳴らしながら呟く。空気が一気に張り詰める。


「リリスが消耗してる今、強敵と戦うのはリスクがある。ひとまずここを離れるぞ。」

 

 レオンが立ち上がり、剣に目をやると光の粒子となり消えた。


「私がもっと魔力の制御ができれば良かったけど…ごめん…」


 リリスが申し訳なさそうに頭を下げるとティアがすごい勢いで頭を振りながらそれを否定する。

 

「リリスが謝ることなんてないよ!あのすごい魔法のおかげでゴブリンが倒せたんだから!」

「リリスが倒して無かったらあの数のゴブリンに加えてゴブリンロードまで合流してたかもしれないんだ。」

「想像しただけで冷や汗ダラダラだよ……」


 ティアに続いてレオンにカイルも励まそうと言葉を紡ぐ。そんな3人の様子が少しおかしくもあり、嬉しくもあって心が暖かくなるのを感じたリリスは照れたように笑う。


「みんな、ありがとうね」


 今まで見たことの無いの優しい表情に少し心を奪われた3人であった。

 故郷では魔力の制御が出来ない未熟者として除け者にされてきたリリスにとってみんなの優しさが心に染みる。


 リリスは胸元で手を握った。

 そこに宿る鼓動が、いつもより少しだけ強く感じる。

 

(……ああ。私、ちゃんと……ここにいていいんだ……)

 

 その思いが込み上げた瞬間、彼女の瞳に柔らかな光が宿った。

 こぼれた微笑みは、彼女自身すら気づかず自然なものだった。

 素直な気持ちを伝えるにはまだ天邪鬼なリリスだが、その心は次第に溶けていく。


「さあ、今はここで悠長にしてる時間はないよ!私が先導するからついてきて!」


 ティアの声で現状を思い出した3人は移動する準備を整えた。


 ――――――――――


 ティアが駆け足で先導する形で、四人は森の西へと向かう。太陽の光を拒絶するかの如く木々が生い茂る森の奥――不意に、地鳴りのような振動が地面を揺らした。

 

 ――ドン、ドン。


 重く鈍い振動が地面を伝ってきた。

 森の闇の向こうで、何かが確かに迫っている。


「くそ!完全に狙われてる!……このままじゃ追いつかれる!」


 カイルが低く叫び、ティアも振り返りざまに叫んだ。


「このままじゃ間に合わない!一旦そこの草むらに隠れよう!」


 4人は無言で頷き合い、すぐ脇にあった背丈ほどの草むらへと飛び込んだ。湿った土の匂いが鼻を刺す。葉をかき分け、身をかがめる。リリスはレオンに支えられながら静かに腰を下ろした。


「っ……く……ごめん……」


 悔しそうなリリスの声に、レオンは首を振った。


「謝るな。さっきも言ったけど、リリスのおかげで被害が0だった。」

「そうだよ!次は私たちがリリスを守る番!」


 彼らの短いやり取りに、リリスは言葉を飲み込んだ。


 ティアは、そっと茂みの隙間から周囲を窺った。木々の間から漏れるわずかな光の下、遠くの影がこちらを探すように動いているのが見える。

 ゴブリンロード――その存在感は、ただそこにいるだけで空気を凍らせるほどだった。


「……作戦を立てよう。戦うしかない。」


 カイルが静かに切り出す。彼の声もまた、緊張を孕みながらも落ち着いていた。


 ティアが顔を上げ、少し迷った後、意を決したように言った。


「私、下級精霊たちに力を借りて、属性の矢を撃てるの。……でも、全部の属性を使えるわけじゃない。」


 ティアは手を広げ、小さな光を集める。そこにふわりと火と風の精霊の気配が漂った。


「この森は火と風の精霊が多いみたい。だから、この二つの属性矢は使えるよ!」


 ティアは続ける。


「風の矢なら、速度と貫通力を上げられる。うまく当たれば動きを鈍らせられるかも。火の矢は命中したら爆発して、大きなダメージを与えられると思う。」


 カイルが頷きながら問い返した。


「土とか水は?」


 ティアは肩をすくめ、苦笑した。


「土と水の精霊は、ここにはほとんどいない。だから、その矢は威力も低いし……陽動くらいにしかならないと思う。」


 静かに聞いていたレオンが、愛剣ウィンターエッジを再召喚していた。

 

「わかった。ティアの属性矢、火と風を主力にしよう。」


 カイルは考え込みながら、全体の配置をまとめるように続けた。


「レオンは前線でゴブリンロードを引きつける。俺はレオンの支援をする。リリスは……ひとまずここで待機しててくれ。もし、魔力を練れるくらいに回復できたら合図が欲しい」

「わかったわ」


 リリスは悔しそうにうつむきながらも、静かに頷くしか無かった。この場で1番の足手まといは自分だと認識していたリリスは役に立てるように魔力の回復に努めることにした。


 カイルはティアの方を向く。


「火力はティアに任せる。状況を見ながら、どっちの属性が通りやすいか探ろう。」


 ティアは弓を握り直し、凛とした声で応えた。


「うん! まずは風の矢で小手調べしてみる。……頼んだよ、みんな。」


 レオンが短く頷く。

 ゴブリンロードの気配は、確実にすぐ近くまで迫ってきている。


(仲間は絶対に、守り抜く――)


 それぞれの胸に固い決意を秘めながら、四人は静かに、しかし着実に戦闘への準備を進めた。


 

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