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最強の学園で、最凶の運命に挑む ―それでも、俺たちは運命に抗う―  作者: sakura
入学式と討伐訓練

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陽光の下で交わす言葉と世界の影

 朝日が窓から差し込む中、レオンは剣の手入れを終え、制服を整えて立ち上がる。澄んだ空気が部屋に満ちており、静かな朝の時間が流れていた。


 しかし、その静けさを破るように、目の前のベッドでは未だにカイルが布団に包まっている。


「カイル、起きろ。」


「……あと五分……」


「十分前も同じことを言ってたぞ。」


 レオンはため息をつきながらカイルを見下ろした。朝の陽光がカイルの顔に当たっているが、彼は器用に顔を背けて避けている。


 起きる気配のないカイルに、レオンは少し考え——


「しょうがないな。」


 そして、カイルの布団を勢いよく引っぺがした。


「うおおおおお!?寒い!!!」


 布団を奪われたカイルは飛び起き、ガタガタと震えながらレオンを睨む。朝の空気が容赦なく肌を刺し、彼の寝ぼけた頭を一気に覚醒させた。


「ひどい!人の安眠を!!」


「何度も起こした。悪いのはお前だ。」


「ぐぬぬ……!」


 そんなやりとりをしつつ、カイルは渋々着替え始めるのだった。


――――――――――――――――


 レオンとカイルは並んで学園へ向かっていた。朝の冷たい空気が肌を引き締め、吐く息が白く染まる。石畳の道は夜露で少し湿っており、街並みはゆっくりと目を覚ましつつある。


「気づけば入学してからもう数日か……なんか、あっという間だったな。」


 カイルが伸びをしながら呟く。街路樹の葉が風に揺れ、朝日を受けてきらめいている。


「そうだな。特に授業が始まってからは、毎日が忙しい。」


 レオンは淡々とした口調で返す。実際、学園生活は剣術の訓練、魔法の講義、座学と盛りだくさんだった。ふと遠くを見やると、すでに学園へ向かう生徒たちの姿がちらほらと見える。

そこへ、後ろから軽やかな足音が近づいてくる。


「おはよー!」


 元気な声とともにティアが駆け寄ってきた。彼女のキャラメルブラウンの髪にヘーゼルグリーンの瞳が朝日に照らされ、光を帯びたように見える。


「おはよう、ティア。」


 レオンが軽く挨拶をすると、ティアはにっこり笑う。


「ふふ、もうすっかり学園生活に慣れたみたいだね!最初はちょっと硬かったけど?」

「……そう見えたか?」

「うん、でも最近はいい感じ!剣の訓練も真面目だし、先生たちも評価してるよ。わかんないけど。」

「なんだそれ。」


 苦笑いを浮かべるレオンだが、楽しげに話しているティアを見たあと助けを求めるようにカイルを見るとつられて笑っていた。やれやれとレオンもふっとわらって居ると背後から、今度は静かな足取りが近づいてきた。涼やかな空気を纏うようにして、リリスが姿を現す。


「おはよう。」


 彼女は相変わらず落ち着いた様子で、冷たい風に揺れる銀髪が朝日に淡く輝く。


「リリスもおはよう!」


 ティアが手を振る。


「みんな朝から元気ね。」

「いや、僕はもうちょっとゆっくりしたいんだけどね……レオンが容赦なくひん剥いてくるからさぁ……」


 カイルがぼやくと、リリスは小さく息を吐いた。


「どうせだらけてて布団を取られたとかそんなところでしょ。」

「うっ……!」


 鋭い指摘に、カイルは肩を落とす。


「でもまぁ、本当にあっという間だったよな。授業のこととか、戦技訓練とか、色々あったけど……これからもっと大変になるのかな。」


 カイルの言葉に、ティアもうなずく。


「この学校の授業ってほんとにレベルが高いよね。私なんてついていくだけで精一杯だよ…それなのに1週間後には討伐訓練だもんね。大変だよー!」


 肩を落としながら話すティアに苦笑いを浮かべながらも、レオンは前を見据える。


「そうだな。けど、やるしかない。」

「さすがレオン、いつでも真面目だね!」


 その言葉を聞き、ティアの顔にはいつもの笑顔が戻った。リリスは無言でそのやり取りを見つめ、静かに前を歩いていく。


「……当然のことを言っただけだ。」


 そんな話をしているうちに、学園の門が見えてきた。朝の陽光が正門の装飾に反射し、輝きを放っている。門をくぐる生徒たちの姿が次々と増え、学園の活気が感じられる。


「さて、今日の授業はなんだったかしら。」


 リリスが問いかける。彼女の視線は既に学園の建物へ向けられていた。


「今日は午前中に歴史の授業で午後はホームルームだけやって解散だね。」


 カイルが答えながら、どこかほっとしたような顔をする。午前中は座学で午後は軽めのスケジュール、それを思うと少しだけ気が楽になるのかもしれない。


「あ!じゃあさ、じゃあさ!今日の放課後にみんなで討伐訓練の作戦会議でもしようよ!」


 ティアの提案に皆頷きながら校門を潜っていく。



――――――――――



「さて、それでは早速授業を初めて行きましょうか。」


 教壇には歴史の担当教師であるソフィが立って授業開始の合図を出していた。黒髪に丸メガネを付けた可愛らしい女性にクラスの男子達のテンションが密かに上がっていた。


「まずは、世界の成り立ちの神話についてです。」


 黒板に重要な部分などについてイラストなどを描き分かりやすく説明を始めてくれた。


 ――


 何もない暗闇に一筋の光が差した。光は次第に明るくなり、その明かりが空間のすべてを照らすと徐々に暗闇が空間を支配し始めた。

 そして光のすべてがなくなるとそこに一つの生命体が産声を上げた。

 彼、もしくは彼女は自分の生まれた空間を歩き続けた。何かを探すわけでも、何か目的があるわけでもないなか、無心で歩き始めた。


 歩き始めてから何時間、何日、何か月、何年歩いたのかすらわからない。だがなにも見つけることはできなかった。歩き疲れてしまい歩みを止める。その時に初めて自分の歩いてきた場所を振り返る。そこには道ができていた。その道を中心に世界が広がり続けていく。世界が色づき広がっていく光景を面白いと思い、さらに歩き続けた。


 だがそれもしばらくすると飽きはじめた。ふと周りを見渡すとそこには自分とは違う生命体が群れを形成していた。


 世界は自分が願ったように作られるのだと思い、こうなればいいなと思うものを創造し続けた。


 これは、いずれ神と呼ばれる者の物語である。


 ――――――――――



「つまり、この世界の基礎は魔力によって作られたというのが神話や文献などから現代の学者が導いた結論になります。」


 この世界最古の書物である創造神話の序章を読んだのち、ソフィは世界の構成について有力とされている文献を紹介した。

 チャームポイントの丸メガネをかけ直して生徒に向き直るとそこには難しいや興味がないといった感情を臆面も隠さずに表情に滲ませている生徒たちに苦笑いをする。


 「やっぱり、この話に興味のある子って少ないよね……」


 肩を落とすソフィだったが慣れっことばかりに気持ちを切り替え話を続ける。


「私も若いときは興味がなかったわ。だって難しいし、嘘みたいな話だもん。でもね、世界にはそんなウソみたいな話を信じて本気でそうだと思ってる人たちがいっぱいいるの。そういった情熱に触れ続けるといつかその熱に絆される日が来るわ。」


 彼女は持っていた本を優しくなでながら何かを懐かしむような表情をする。


「でもね、これだけは肝に銘じてほしいの。」


 生徒に向き直り真剣な表情で言葉を続ける。


「いま“世界の主流”として語られている歴史なんて、誰かが都合よく書き換えたものかもしれないわ。

 だから――目の前の情報だけを鵜呑みにしないで、自分で考える力を持ってほしいの。

 それは何も歴史に限った話じゃない。自分が信じているものは本当に正しいのか。

 逆に、間違っていると思い込んでいるものは、本当に間違いなのか。


――そういうことを、自分の頭で考えてみてほしいの。先生はね、そう思っているわ。」


 そういって優しく微笑むソフィにクラスの男子たちが見とれていたのは内緒である。

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