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最強の学園で、最凶の運命に挑む ―それでも、俺たちは運命に抗う―  作者: sakura
入学式と討伐訓練

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決意の一閃


 訓練場の空気が再び引き締まり、クラスメイトたちが見守る中、ラグーザが場内に立ち、ゆっくりと手を挙げる。


「次の試合は、レオンとライズだ!」


 その名が告げられると、小さなざわめきが広がった。ライズはガルド帝国オズガル領を治めるマークベイン侯爵家の長男であり、その剣技は優雅さと速さを兼ね備えていることで知られていた。派手さこそないものの、彼の実力を侮る者はいない。

 訓練場の中央に、ライズが軽やかな足取りで現れる。彼は高貴な家柄にふさわしい自信を湛えた表情で、木剣を軽く手に馴染ませていた。その姿には自信家らしい余裕が漂うが、不快さを感じさせない快活な雰囲気も持ち合わせている。


「レオンと言ったかな、手加減はなしだ。俺も全力でいくからな。」


 ライズが爽やかな笑みを浮かべて言う。その言葉には、プライドと誠意が込められていた。

 そして、レオンが静かに訓練場の中央へと歩を進める。その顔には焦りも迷いもない。だがその奥底にはゼフィスとの模擬戦で敗北した悔しさと、それを乗り越える強い決意が宿っていた。「次は負けない」――その思いが、レオンを突き動かしている。


「準備はいいか?」


 ラグーザが二人に確認すると、ライズは自信満々に頷き、レオンも静かに首を縦に振った。その瞬間、場の空気が一気に緊張感で満たされる。


「始め!」


 その掛け声とともに、ライズが一瞬で間合いを詰めた。彼の動きは速く、力強い。木剣がレオンを狙って鋭く振り下ろされる。だが、レオンは冷静だった。ほんの一歩後ろに下がるだけで、ライズの攻撃を難なく避けた。


「ふん、やるな。でも、これからだ!」


 ライズはさらに攻め込む。風のように鋭く早い攻撃がレオンを襲う。しかし、レオンはそれらの攻撃をすべて紙一重で避け、あるいは最小限の動きで受け流していく。

 次第に、二人の攻防は激しさを増していく。レオンの木剣が鋭い角度でライズに迫れば、ライズも素早い身のこなしでそれをいなす。木剣同士が打ち合う音が響き渡り、互いの剣筋が火花を散らすような緊張感を生み出していた。木剣が交錯するたびに、乾いた音が訓練場に響き渡る。観客の中には息を止めている者もいた。砂埃が舞い上がり、微かな汗の匂いが空気に混じる。


(なんて冷静なんだ……!2人の動きに無駄がない。特にレオンだ。ライズの攻撃を必要最小限の動きで捌いてる。)


 カイルは息を飲みながらその光景を見つめていた。ライズの猛攻にもレオンは全く慌てる様子がない。その動きには計算された正確さと、長年の鍛錬を感じさせる何かがあった。


「避けているだけじゃ勝てないぞ!」


 ライズが攻撃の手を緩めずに叫ぶ。その声には気負いが含まれていたが、ライズの顔にはまだ戦意が漲っている。


「なら、こっちから行かせてもらう!」


 その言葉と同時に今まで防戦一方だったレオンが初めて前に出た。その瞬間、彼の木剣が静かに、しかし力強く動いた。その一撃には無駄な力がなく、ただ確実に相手を捉えようとする意図が感じられる。


「くっ……!」


 ライズは慌てて木剣で受け止めたものの、予想だにしなかったその衝撃に足を一歩引かされる。ここで先日のそれぞれの模擬戦を見ていたクラスメイトたちの間から微かな驚きの声が漏れる。先日のレオンの戦いぶりからは想像が出来ないほどにライズに対して優位に立っていた。

 その後も、レオンの攻撃が続く。彼の一撃一撃は重く、正確で、迷いがない。それに対して、ライズは次第に防戦一方となり、体力を消耗していく。


(レオンは……攻撃だけじゃない。まるで相手の動きを完全に読んでいるみたいだ。)


 カイルは思わず拳を握りしめながら呟く。レオンは先ほどまでの自主鍛錬にて強くなるためにと自分の鍛錬の最中に他の者らの動きをよく観察していた。相手の剣の振り方や重心の置き方など細かく見ていた。そしてその冷静な判断力が、ライズという実力者を相手に互角以上の勝負を繰り広げる原動力となっていた。


「まだだ……俺はまだ終わらない!」


 ライズが気合いを込めて大きな一撃を繰り出す。その剣筋は速く、鋭く、威力十分だった。しかし――


「そこだ!」


 レオンはその攻撃を見事に見切り、わずかな動きでかわした。そして、ライズが体勢を崩した瞬間、その木剣を一閃。ライズの木剣を弾き飛ばし、その刃先を喉元に突きつけた。


 静寂。


 誰もが息を飲む中、ラグーザの声が響き渡る。


「勝者、レオン!」


 その瞬間、教室内は抑えたざわめきと驚きに包まれた。ライズを破る者が現れるなど、誰も予想していなかったのだ。


「すごい……」

「この前の模擬戦の時よりも、明らかに動きが違う……!」


 クラスメイトたちの驚きが抑えきれず、ざわざわと声を交わす中、ゼフィスが腕を組みながら一言、低く呟いた。


「ほう……」


 その短い声には、わずかながら興味が滲んでいた。

 

 ライズは一瞬呆然としていたが、すぐに口元に笑みを浮かべた。


「まいったな。完全に負けたよ。お前、ただ者じゃないな。」


 レオンは木剣を収め、軽く一礼する。


「ありがとう。君だってとても強かったよ。次やったらどっちが勝つか分からないさ。」


 その静かな言葉には、レオンの強さだけでなく、誠実さが込められていた。

 試合を終え、レオンが仲間たちの元に戻る。カイルが駆け寄り、興奮気味に話しかける。


「レオン! すごいじゃないか! お前、本気を出せばあそこまでやれるんだな!」

「カイル、少し落ち着いて。怪我に触るわよ。」


 ティアが苦笑しながらも、その瞳には誇らしげな色が浮かんでいた。リリスも腕を組みながら静かに頷く。


「悪くない戦いぶりだったわ。あんな負け方をしたとは思えないわね。」


 レオンは照れたように肩をすくめる。


「まだまだだよ。ゼフィスにリベンジするまでは、こんなところで満足してられない。」


 その真剣な表情に、仲間たちは自然と笑みを浮かべる。


 仲間たちと談笑した後、レオンはふっと息を吐き、ゆっくりと訓練場の隅へ歩いた。

 皆の視線が離れたのを確認すると、軽く握っていた拳をそっと胸元で握りしめる。


「……まだだ。あれくらいで満足してる場合じゃない。」


 誰に聞かせるでもなく、小さな声が漏れた。


 ライズには勝てた。確かに嬉しい。

 だが――ゼフィスに敗北した時、胸に刻まれた悔しさは消えていない。

 今日の勝利は、その痛みをほんのわずか和らげただけにすぎない。


 レオンは右手を見つめる。木剣を振り抜いた時の感触がまだ残っている。

 だが同時に、ゼフィスの魔法を受けた瞬間の衝撃もまた、鮮明に心に焼き付いたままだ。


「絶対に追いつく……。あいつに勝てるまで、止まらない。」


 静かな決意が、瞳の奥に炎のように灯る。


 その表情には、仲間たちの前では見せない、

 ただひとりの剣士としての強い覚悟が宿っていた。

 

 授業終了の鐘が鳴り響き、ラグーザが試合場に立ち、皆を見渡す。


「今日の模擬戦は見ごたえがあった。特に、レオンとライズ、お前たち二人の試合は素晴らしかったぞ。お互い全力を出し切り、良い刺激になったはずだ。」


 彼の鋭い視線がクラス全員に注がれる。


「これからも自分の限界に挑み続けろ。剣技だけでなく、心を鍛えることも忘れるな。その先にあるのは、剣士としての誇りだけでなく、人としての成長だ。」


その言葉に生徒たちは静かに頷き、それぞれ思いを胸に刻む。

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