第九話
ついに覚悟を決めた霧島は便座と蓋を外し、奇襲を仕掛ける。
「うぉらッ!!」
全力のスイングで便座を叩きつけ、相手の体勢を崩す。そしてすかさずフードとマスクを引き剥がす。
「!?貴様は……!ジュウジ!」
「‥十時だ。字も読めんカスが俺に触るなッ!」
現れたのは、十時頼春。矢利杉高校の生徒会長にして、全ての部活動に所属し、すべてを全国大会に導いたという超人。頭脳明晰・スポーツ万能。完璧な男……性格と顔以外は。
十時は刃物を振り回し、距離を取る。霧島は便座とフタを構えてにじり寄る。
「なぜ阿多丘を切りつけた!? アイツは俺たちの……金づ‥じゃなくて、仲間だっ!」
「妹たちの稼ぎで贅沢してるようなヤツは、ロクな人間にならん。死んだほうがマシだろ!」
「……これから先、どうなるかなんて誰にもわからんッ!」
「底辺が這い上がるより、転生したほうが早いだろ。俺はその手伝いをしてるだけだ!」
「底辺だのグズだの……人間は皆、平等だっ!」
「平等なわけねーだろッ!! お前らカスと、俺たちがっ?!」
「平等だ!皆、平等に価値なんて無いっ!! 一万年後には、誰も、何も、残らない!」
「凡骨はそうやって慰めるしかねぇよな……俺は違う。俺は、優れた人間なんだよッ!」
「この世にいるのは、ダメ人間と、これからダメになる人間だけだ!」
便座と刃が火花を散らす。