第一話
霧島真剣吉は、その日も真面目に授業をサボっていた。
というか、彼は真面目に見えるように生きている。
成績は優、態度は良、制服の着こなしは完璧で、笑顔にも死角がない。
だが、内心はずっとこう思っていた。
ルールって、クソだな。
数学の証明より、学園の秩序を崩す方法の方がずっと面白い。
でもそれを口に出すと、「なんでそんなこと考えるの?」と、また言われる。
だから彼は黙っていた。静かに、飽きながら。
そんな彼の机の中に、それは入っていた。
『犯罪クラブ、部員募集。ルール無用、人生一回限り。屋上で待つ。 意味不夢唯』
どこかで見たような字体の怪文書。
ふざけているのか、本気なのか、紙からは判断できない。
意味不夢唯。
先週、転校してきた謎の少女。
まるで都市伝説のような奇行と、意味不明な言動。
「盗撮した女子生徒の全裸写真や動画を売りさばき2000万売り上げた」とか、「下駄箱に小型カメラ仕込んでた」とか、
真剣吉のように飽きた側の人間からすれば、実にそそる情報ばかりだ。
彼は、そのビラを折りたたむと、静かに立ち上がった。
放課後のチャイムが鳴るよりも早く、屋上への階段を登る。
そこで彼を待っていたのは、制服を着崩し、ポケットにナイフを入れた少女。
校則違反の風に揺れる髪。
「やっと来たね。霧島真剣吉。今日からあなたは、この世界に犯罪を教える係。」
少女は微笑んだ。
それが、すべての始まりだった。