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17. シリウスの子

 柚花を引っ張って、部屋の中に入ると、ぼくは押入れから厚手のコートを引っ張り出して、柚花に投げつけた。見事にコートをキャッチしながら「どうするの?」と、柚花は訝る。

「決まってるじゃないか、星を見るんだよ。プラネタリウムでも、天体写真集でもなくて、本物の夜空の星を」

「何言ってるの? 星なんか見えなかったじゃん……」

「だから、奇跡を起こすんだよっ」

 そう言うと、ぼくは立て付けの悪い窓ガラスを開いて、半身を乗り出す。手を伸ばして、雨どいの強度を確認する。どうせ壊れないだろうけれど、なんだか星を見るための儀式みたいだった。

「奇跡なんか起こらない。そう言ったのは、ソラじゃない」

 ぼくの背中に、柚花が語気を強めて言う。

「奇跡を見せてって言ったのは、柚花だろう? もう時間がないんだ。ほら、ぼくが先に登って、お前を引き上げてやるからっ」

「ちょ、ちょっと、ソラっ」

 柚花の制止を無視して、ぼくは窓枠に脚をかけた。高いところが苦手だったはずなのに、慣れというのはすごいもので、もうちっとも怖くなんかない。雨どいを掴み、勢いをつけて屋根瓦の上に上がる。そして、体を反転させてから、上体を屋根から乗り出すと、両手を窓のほうに伸ばして、柚花を呼んだ。

 兄の行動に納得がいかない、そんな表情をありありと浮かべながら、コートを着込んだ柚花は、細い両手をぼくの方に伸ばした。柚花の体重は思うより軽くて、ぐっと力を込めて、引き上げてやれば、何のことはなく簡単に、屋根の上に上がる。

「ほら、やっぱりみえないじゃん」

 柚花の指さした夜空は、街の光が薄い膜を張ったように覆い、そこにあるはずの星なんて見えない。夜風が冷たくぼくたちの間を吹き抜けて行った。柚花は寒そうに身を凍えさせる。

 ぼくは腕時計の時刻を確認した。カンのいい柚花に作戦のことを悟られたくないから、桂たちとは連絡を取っていない。彼らが首尾よくやってくれるかどうかは分からない。特に、桂を手伝うと言った熊谷にいたっては、コンピューターについて素人同然なのだ。

 しかし、彼らを信じるなら、腕時計の秒針があと半分回れば……。

「もういいよ、ソラ。無理しなくても。わたし、ちゃんと分かってるから、奇跡なんて起こらない。わがまま言ってごめんなさい」

「いいから、空を見上げてろ。奇跡は絶対起きるから」

 屋根を降りようとする柚花の腕を掴んで止める。ぼくの真剣な眼差しに戸惑いつつ、柚花はもう一度夜空を見上げた。

「五、四、三、二、一……」

 左腕の腕時計の秒針を目で追いながら、カウントダウン。そして、最後の一秒。赤い秒針が動き、夜九時を指し示した。

「零っ!!」

 始まりの音があったわけじゃない。ただ、何かが途切れるような気配があった。それはまるで、雑音が静寂に飲み込まれていくような不思議な感覚だった。街の騒音は、光が一つ一つと消えていくのにあわせるように、吸い込まれて消えていき、住宅街は西から、国道沿いは東から、そしてはじめて屋根に上ったとき柚花がクリスマスツリーと形容したビルは地上階から順番に、光を失っていった。

 そして、すべての光が消えると、街一帯が無音で真っ暗な世界に早変わりする。それと同時に、見上げる空は真っ黒な夜空ではなく、淡い藍色のヴェールに、宝石のような小さな光の粒が散りばめられた満天の星空となった。

「星が……たくさん」

 瞳いっぱいに星空を映しこんだ柚花が、呟いた。見られない、奇跡は起こらないと、そう信じていた世界の隅っこに、見たこともないような満天の星空が現れたことに、柚花は圧倒されていた。

「数え切れないな、こんなにたくさん星があったら。なあ、柚花」

「うん」

 幾千もの星が瞬き、それだけで胸がいっぱいになるほどの、美しい夜空。天体写真ではなくて、手を伸ばせば届くくらい近い場所にきらめき、プラネタリウムのような人工的で温か味のない色の光じゃない。何百年、何千年も地球をそっと照らし続けた星は、文明の光に覆い隠されていただけで、ぼくたちの目の前にずっと瞬いていたいうことを知らしめてくれる。

「これって、奇跡?」

 星を見上げる柚花がぼくに問いかけた。

「そうだよ。柚花がぼくとの約束を守って泣かないでいてくれたから、ぼくも柚花に奇跡を起こしたんだよ。すごいか?」

「うん……すごいっ!!」

 ニッコリと微笑んで柚花は、じっと星空を見つめ続けた。きっと察しのいい柚花のことだ、これは奇跡なんかじゃなくて、タネもシカケもあることだと気付いているかもしれない。それに、奇跡を起こしたのはぼくじゃなくて、桂と熊谷なのだ。それでも、素直に喜んでくれる妹の横顔に、ぼくは嬉しくなった。

「わたしね……死んじゃっても、この星空はずっと覚えてるよ。きっとわたしみたいなわがままなヤツは、地獄に落ちちゃうと思うけどね。でも、この星空をずっと覚えていられたら、きっと寂しくなんかないから」

 柚花の愛らしい瞳から、ぽろぽろと透明な涙の雫がこぼれだす。涙は頬を伝いコートを濡らした。

「あれっ!? ち、違うんだよ。悲しいんじゃないんだよ。何で涙が出るの? おかしいなぁ。わたし、すごく嬉しいんだよ」

「嬉しいから涙が出るんだよ」

「そうなのかな? えへへ。なんか恥ずかしいや」

 そう言って、少しだけ笑い鼻をすすって、柚花はコートの袖で涙を拭った。だけど、止め処なく柚花の頬は涙が伝っていく。ぼくは、そっとそんな柚花の頭を撫でてやった。昔、柚花が泣きべそをかくたびに、ぼくはこうして柚花の頭を撫でてやったことを思い出す。

「ずっと、お前のことほったらかしにしていて、ごめんな。ずっと、お前が待っていてくれるなんて思ってもなかった。でも、考えてみたら、ぼくたちは世界にたった二人だけの兄と妹で、大切な家族なんだ。言い訳がましいけどさ、あの日父さんと母さんが別れて、ぼくもショックだったんだと思う」

「ソラ……」

「だから、必死で母さんやお前のことを忘れようとしてた。でも、間違いだったんだよ。忘れる必要なんかない。両親が互いに別の人になっても、母さんはぼくを産んでくれた母親だし、お前はぼくの妹なんだ。だから、お前のことを心配してもいいだろう?」

 星空を見上げながら言う。柚花が頷いてくれたかどうかは、ぼくの視界には入らない。

「ぼくだけじゃないよ。ぼくの新しい母さんも、ぼくたちの母さんも、熊谷も、友達の桂も、ひかりちゃんや夏生ちゃん。みんなお前のことをめいっぱい心配してる。そういう優しい人たちのことを、関係ないなんて言っちゃだめだ」

「でも、わたし……」

「お前は死んだりなんかしない……。母さんが言ってたよ、アメリカへ行って治療すれば、その病気は治るんだ。もっとも、それを聞く前にお前は家出しちゃったけどな」

「アメリカ……遠いね。あの星にたどり着くくらい遠くて、お金たくさんかかっちゃう」

「そんなもの、お前が心配するなって。ぼくが説得して、父さんにも出させる。新しい母さんは、納得してくれるよ。あの人は、底抜けにいい人だからな。それに父さんも反対できないよ。だって、父さんはお前の父親なんだ」

 ぼくが柚花の頭を軽く叩くと、柚花はうつむいた。その瞬間、停電の瞬間を巻き戻すように、消えた光が街に戻ってくる。三分なんて、あっという間だ。再び夜空は、人工灯の膜に覆われて星は消え黒く塗りつぶされていく。そして、反対に広がる街に灯る明りが星の瞬きのように見えた。

「あ、あそこに星が……!」

 驚きの声とともに、柚花が指し示したのは、クリスマスツリーのような形をしたビルの明りの上。そう、ちょうどそれは、クリスマスツリーの頂点に飾られる金色の星形の飾りみたく、キラリと星が一つだけ輝きを放っていた。

「あれは……」

 天体写真集で得た知識で、この時間、その方角に輝く星は青白く光を放つ、宇宙で二番目にもっとも明るい星だということに、ぼくは気付いた。

 どれほど、科学が生んだ光が輝度を増したとしても、消えることなく輝くその星の名前は、シリウス。

「あんなに輝けるなんてすごいね……こんなに街は光にあふれかえっているのに」

 と、柚花は星を見つめながら言った。

「わたしは、シリウスみたいに光り輝けるのかな?」

「もしも、街の光が眩しくて、柚花って言う名前の星が光り輝けないなら、ぼくが他の光を全部消して、奇跡を起こしてやる。何度だって」

 ニッと笑顔で言ったぼくの言葉が、冗談に思えたのだろうか、柚花は少しだけ声を立てて笑った。

「じゃあ、いっぱいわがまま言っていいの? お兄ちゃん」

 柚花の少し潤んだままの瞳がぼくの顔を見つめる。その「お兄ちゃん」という響きも、その顔も、昔から知っている妹の柚花の顔だった。

「ちゃんと、お前が病気を直したら、なんでもわがまま聞いてやるよ」

「それ、嘘じゃないよね?」

 疑いの眼差しに、ぼくはまるでお芝居に出て来るお城のじいやみたいな口調と仕草で、

「誓って、嘘なんかではございません。わがまま姫様!」

 と言った。すると、柚花もそれにあわせるように、腰に手を当てて胸を張るとまるで、お姫様のように、

「ふむ、よきにはからえっ!」

 ぼくたちはお互いの顔を見合わせて、吹き出した。きっと階下では、先ほどまで、停電に焦っていた大家さんが、今度は屋根の上から聞こえてくるぼくたちの笑い声に驚いていることだろう。だけど、ぼくたちはそんなこと気にも留めないで、シリウスの輝く星空の下でずっと笑い合った。


「そうだ、今度の日曜日のデート、何処に行きたい? リクエストに応えるよ」

 コンビ二で会計する間に、ぼくはレジを打つ恵野さんに尋ねた。恵野さんは、ピッピッと、バーコードリーダーを商品に押し付けながら、天井を見上げて考える仕草をした。

「じゃあ、映画に行かない? ほら、この前から始まったやつ」

 そう言って、バーコードリーダーで恵野さんが指した先には、映画のチケット販売のポスター。「星空の下で」というタイトルの映画。キラキラの夜空の下、人気の若手俳優と女優が手をつなぎあって、空を見上げている。

「友達がこの前観たって言ってたんだけど、すっごい泣けるラブストーリーらしいよ。ダメ?」

「分かったよ。じゃあ、映画館の前で待ち合わせしよう」

 財布から、代金を取り出しながらぼくは笑顔で頷いた。正直、ラブストーリーとかは苦手なんだけど、カノジョのリクエストとあれば、断るわけには行かない。

 コンビニの自動ドアが開いて、来客を知らせるベルが鳴る。「いらっしゃいませ」と、恵野さんは仕事の声で応対する。来店した客は、商品棚の方には向かわずに、真っ直ぐこっちへ向かってきた。

「なあに、お姉もソラくんもラブラブですなぁ。外は木枯らしだって言うのに、暑い暑いっ」

 どこかのオヤジみたいな野次を飛ばしながらやって来たのは、恵野さんの妹、ひかりちゃんだった。いつも通り、チェックのマフラーに顔の半分を埋めているけれど、その瞳はニヤニヤまでは隠しきれていない。

「うるさいな。悔しかったら、あんたも素敵な彼氏見つけたら?」

 恵野さんは妹の前で、これもまたいつも通りの棘のある口調で言った。

「あれれ? この前は、勉強しなさいって言ってたのに、今度は恋愛しなさいって? あたしが勉強と恋愛を両立できるほど器用じゃないのは、お姉ちゃんなら知ってるでしょう?」

「ぐっ、減らず口だけは達者なんだから……っ!」

「へへーん。それがあたしのとり得だもんねぇ。お姉ちゃんは、バイトと恋愛を両立するのが得意なのかなぁ?」

「このっ! バカ妹っ」

 この姉妹は顔をあわせるたびに、言い合いしているけれど、実は仲がとてもいいことをぼくは知ってる。実際、ぼくと恵野さんの距離を縮めたのは、ほかならぬひかりちゃんだ。だから、二人のちょっとした喧嘩を見るたびに、少しだけ苦笑してしまう。

「じゃあ、日曜日に。バイト、頑張って」

 ぼくは顔を赤らめる恵野さんにそう言うと、コンビニ袋を提げてコンビニを後にした。外は、ひかりちゃんの言ったとおり木枯らしが吹いて、冷たい風がぼくの頬を突き刺す。

 柚花が病気療養のためにアメリカへ旅立ってから、一年が過ぎた。再び街には冬がやって来た。柚花に奇跡を見せた後、ぼくと桂と熊谷はお互いに、停電事件の秘密を隠すことにした。三分間の停電は多少なりとも話題に上りはしたものの、大した事件も起こることはなかった。だから、悪事は三人で墓まで持っていくことにしたのだ。

 桂は、心血注いだハッキングソフトを捨ててしまうことを悔しがって、とうとう電算部を止めてしまった。一ヶ月くらいはしょんぼりしていた桂だったけれど、ある日無精髭を剃って、ボサボサの髪を解いて、眼鏡をコンタクトに変えると、真面目な顔をして、

「決めた、これから俺は、恋愛に生きる!! 柚花ちゃんがアメリカから帰ったら貰い受けるからな、覚悟していろ、此木……いや、お義兄さんっ!!」

 と息巻いた。人は変われば変わるもので、引きこもりの似合う男は妙に、いまどきの外見が似合う男になってしまった。ぼくは「柚花が認めたらな」と曖昧に答えたけれど、どうなることやら。

 一方熊谷は、相変わらずぼくをからかったりしながら、良き友人でいてくれる。喜多野さんとの仲も上々で、時折ノロケ話を聞かされる。また、熊谷は柚花にとってもよい先輩だ。アメリカへ渡る前、病気のことや治療のこと、言葉の通じない海外に緊張する柚花を勇気付けたのは、ぼくではなくて熊谷の方だった。こういうとき、同性の先輩と言うのは、とても力になるものなのだろう。ちょっとだけ悔しかった。

 柚花はそれからまもなく、遠いアメリカの空へと発っていった。偶然なのか、それとも神様の悪戯なのか、空港で柚花を見送ったのは、ぼくと父さんと母さんの三人だった。十年ぶりに、ぼくたち家族四人が顔をあわせた。久々の再会に、離婚した時あれほどいがみ合っていた父と母は、ぼくの心配を他所に、互いにぶつかることもなかった。十年と言う年月が、ぼくや柚花を成長させたように、両親をも成長させたのだろう。

「お兄ちゃん。今度帰ってきたら、わがまま聞いてくれるっていう約束忘れないでね」

 柚花は、デパーチャーゲートをくぐる前に、振り返ってぼくに言った。妹はぼくに、どんなわがままを言いつけるつもりなのだろう。それを考えると、ちょっと怖くて楽しみでもある。

 父さんと母さんは、それから変わることなく別々の人生を歩んでいる。でも、母さんは時折はぼくの事を気にして、電話なんかかけてくる。勿論、新しい母も同じで、ぼくには二人も母さんがいると言うことを改めて、嬉しいような、うざったいような、そんな気分を味合わされている。

 アメリカに渡った後、柚花からは月イチのペースでエアメールが送られてくる。いじわるな妹は、いつも英語で文面をよこすものだから、英語が苦手なぼくはいつも読めなくて腐心していた。

「きっと、恥ずかしいから、英語でごまかしてるんだよ。柚花ちゃんも可愛いところがあるじゃない」

 と、英語だらけの手紙を見て言ったのは、恵野さんだ。あれから、ぼくたちは大学でも顔をあわせることが多くなり、ひかりちゃんの後押しもあって、付き合いはじめた。あれほど、恋愛を敬遠していたのに、いざ恵野さんという恋人が出来ると、それは、それで毎日が楽しく思えてくるから不思議だった。

 でも、ぼくが恵野さんと付き合い始めたと言うことは、柚花には秘密だ。柚花が帰ってきてから、驚かせてやろうと思う。まさか自分の兄が、友達の姉と付き合っているなんて、思いもよらないだろう。

 いじわるにはいじわるでお返しだ。

 そんなことを考えながら、遺跡アパートまでの道を歩く。相変わらず、今にも崩れ去りそうな外観に、このアパートの本当の名前が「伊関アパート」ということを忘れがちになる。ちなみに、停電の後屋上で笑い合ってたぼくたちは、大家さんにものすごく叱られた。だけど、あの美しい星空の光景に興奮冷めやらぬぼくたちにとっては、大家さんの雷なんて、雑音にもならない。むしろ、大家さんの禿げあがった頭の上にも光る、シリウスの輝きにぼくたちは星空に思いを馳せた。

 それは、すべて一年前の出来事なのに、今だって鮮明に思い起こせる。十年前バラバラになったぼくと柚花を、もう一度兄と妹に戻してくれたのは、間違いなくあの星が瞬く夜空なのだ。そして、ぼくは優しい友人たちとともに、妹が元気な笑顔で帰ってくるのを待ってる。そして、いつものように笑って「お帰り」と言ってくれるのを待ってる。そう、こんな風に。

「お帰り、ずいぶん遅かったねぇ」

 妙に現実味のある声。ぼくの想像の声ではなくて、確かにこの耳が捉えた声。錆び付いた、階段を上りきったぼくは顔を上げて、二階の一番奥の部屋の前を見た。そこには、長い髪をした女の子が一人。

「なに、たった一年で、可愛い妹の顔を忘れちゃった?」

 呆然とするぼくは、思わず提げたコンビニ袋を落としそうになった。目の前で笑っているその顔は、柚花だった。一年前と変わらない明るい笑顔にぼくは、思わず言葉を失った。

「えへへ、ただいま。昨日アメリカから帰ってきました」

「帰ってくるなら、そう言ってくれればよかったのに……」

 ようやく口にしたぼくの言葉に、柚花は少し頬を膨らませる。

「エアメールにちゃんと書いたよ。まさかっ! 読んでないの? この薄情者めっ。めちゃくちゃ可愛い彼女が出来たからって、浮かれてるんじゃないわよっ」

「はぁ? あんな英語だらけの手紙、読めるわけないじゃないか。それよりも、恵野さんのこと、誰から聞いたんだよ?」

「薫さん」

 柚花の答に、悪友・熊谷のニヤリとした顔が思い浮かぶ。

「顔、赤くなってるよっ」

「うるさいなっ! まったく、お前らはぼくのことからかってばかりなんだから……そんなことより、病気は? もういいのか?」

「うん。元気いっぱいだよ」

 そう言って、柚花は顔一面に笑顔をたたえた。それを見ていると、ぼくをからかう妹のことをそれ以上怒る気にもなれない。それよりも、元気に帰って来た柚花に言うことがあったのを、ぼくは思い出した。

「お帰り、柚花」

「うん、ただいま、お兄ちゃん」


(おわり)

 


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