青の悪魔、別の女
初めて出会ったときの彼女は、それはそれは軽やかで美しき青の鳥のようでした。
けれど今となっては、僕からだまし取った財産を見せつけては、金を請求する亡者と成り果てました。
いえ、最初からそうだったのです。僕が気付かなかっただけで。
しかしながらこれは困ったものです。
彼女が僕の財産を奪ったのはちょうど僕が旅に出ているときで、というかそのために彼女と寄り添っていたのですが、突然あったものが無くなったので、ただいま困り果てております。
ひとまず別の女の子の力を借りて、この手紙を綴っているわけですが、蛮族のような彼女からどうやって財産を取り戻すかの答えはどうにも。
ああ、面倒だから捨ててしまおうか。
彼女と出会ったのはだいたい一年前、まだ素人の僕に、それはそれは笑顔でこちらに手を伸ばしてきまして、他の女を見る必要も無く、すぐに仲良くなり、根まで彼女の偽りたる優しさが染みこむまで、幾つもの思い出を描いてきたのです。
だからでしょう、とてもとても悲しい。泣きたくなる涙は苛立ちによるものですが、どうしたものか。
ちなみに財産を観察することはできるのです。家には一応入れるのです。
ただ、一歩でも足を踏み入れ取り返そうとすれば、女亡者はこちらの胸を弾いて金をせびるのです。
そして拒否して無理やりにでも財産を取り返そうとしても、なぞの魔法か、財産はまるでベルリンの壁の如く持ち上げるのは不可能なのでした。
彼女は非情に便利な女でした。何でもしてくれ、文句ひとつなく、僕は快適に過ごせた。
だから他の女では満足できず、あるいはどの女が自分に合うのかわからず、騙されるのも怖がって進まない。
いやいや、もうこんなことはやめにしよう。
と僕の透明な翼をへし折るのも、奴の思い通りな気もして気に入らず、とはいえこのようにずっと悩ましくするのも、あの女がずっと頭にいるのは気色も悪い。
すでにこの手紙の居心地も悪くなく、なんならば彼女の低俗な性分で要求する額に対して、無償なので、もういいではないか。
あの女との思い出は僕の財産と共に消し去り、少なからずうろ覚えに残る記憶から、綴っていきたいのだ。
ゆえにこの先の矛盾、違和感、それを抱いてしまわせてしまうかもしれないが、僕はそんな君に感謝をしたい。それほどによく知ってくれていることを。
とはいえ、ああ、面倒だ。多すぎる歯車が……。
もはやほとんど覚えてない。