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シキシマ:異世界忍法譚  作者: 杉浦総一
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4つもいらない

うどん美味しいですよね。

短めです。

集会所を後にすると夕暮れ前ではあるが昼時は過ぎた頃だった。


「ご飯にしよう」


「うん! お腹ぺこぺこ」


近くにある東の国料理のウドン屋へ入る。

出されるのが早くて味も悪くない。

ギルドメンバーからの評判の良い店だ。


「いらっしゃい! 何にしますかー?」


中に入りカウンターに座ると店員が注文を聞いてきた。


「コメ大盛りに白身魚のテンプラ4つ!」


「よ、4つ!?」


ケイトの注文にハクが驚く。


「ケイティ、それ結構大きいよ。2つで十分だよ」


「4つが良いの!」


「……僕はカキアゲウドンで」


「任せてくださいよ!」


景気の良い返事で店員が厨房に注文内容を伝える。

既に出来上がっていたものをよそうだけなので、すぐにカウンターに料理が並べられた。

ケイトの前に置かれた器、ドンブリの上にはぎっしりとテンプラが4つ敷き詰められていた。


「だから言ったでしょ。2つで十分だって」


「食べれるもん! いただきまーす!」


「……いただきます」


ハシと呼ばれる食器を持ち豪快にテンプラにかぶりつくケイトを横目にウドンの麺を啜る。

西の国の麺料理はフォークで丸めて食べるのが基本で、音を立てて啜るのはマナー違反だが、東の国ではこれが正しい食べ方だった。

もちもちとした太い麺と、それに絡んだ複数の出汁を掛け合わせたあっさりとしながらも複雑な旨味を持つスープが口の中にするりと入ってくる。

咀嚼して飲み込むと次はカキアゲを一口。

サクッと音を立てて油のコクと共に玉ねぎの甘みと小海老の香ばしい風味が口内に広がる。


「美味しい」


「うんうん! おいし、おいし」


ガツガツとドンブリをかき込むケイトを女の子らしくないなぁと思うハク。


「おい聞いたか? 光の戦士たちがまた魔獣を仕留めたそうだぞ」


「マジかよ。これで何度目だ?」


ふと他の客の会話が耳に入る。

光の戦士。異世界からの来訪者。

この世界エデノイは稀に異世界から迷い込む人間が現れる。

彼らは地球という世界から来たと言い、東の国の国民と良く似た容姿をしていた。

世界を飛び越えた彼らはこの世の理から外れた力を持ち、神話や伝説に登場する英雄たちも異世界人……地球人だったのではないかという説が濃厚だ。

エデノイでは地球人の保護、言語の学習などの支援を行う制度が確立されているが、元の世界に帰すことが彼らにとっての幸せであると考える帰還派とその力をいつまでも保有しておきたい永住派に別れ、対立している。

そして魔獣。魔物を超える存在。

魔物よりも大きく、強く、賢いそれは並大抵の人間では歯が立たない。

光の戦士とその仲間たちは世界を旅して魔獣を討伐しているのだ。


「なんか、現実味の無い話だよね」


「でもかっこいいよね! 物語の主人公みたい!」


顔もかっこいいんだろうなぁと光の戦士の姿を想像するハクとケイト。

そして食事を再開した。



「「ごちそうさまでした」」


「ありがとうございましたー!」


会計を済ませて店を出る2人。


「はぁ〜。食べた食べた」


「食べすぎだよ。太るよ?」


「動くから良いもーん!」


本当にテンプラを4つ食べたケイトに内心驚きながらハクは考える。

そろそろパーティメンバーが欲しい。

しかしハクは歳の近い子どもたちからは距離を置かれている。

妹のユキを「マスク女」と笑った大きな身体をした同い年の少年に激怒して顔が倍に膨れ上がるまで殴ったことがあったのだ。

それ以来同年代からは恐れられ、話をしても用事がーとか言って誤魔化されるのだ。


「彼が来てくれると良いな……」


「何の話ー?」


明日に想いを馳せてるとケイトが聞いてきた。


「いや、ちょっとパーティメンバーに当てが1人だけあって」


「ふーん。優しい人だったら良いなぁ」


優しいかどうかはわからないが、彼が加わればハクたちの大きな力になることは間違いなかった。


「それじゃあ、また明日ね」


「うん! じゃあねー!」


まだ夕方にはなっていないが、この日は解散となった。

夕飯の手伝いでもしよう。

ハクはそう思いながら帰った。

ハクくんは同年代からは避けられていますが、小さな子からはニンジャのお姉ちゃんと呼ばれています。

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