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【書籍化・コミカライズ】断罪された悪役令嬢は、元凶の二人の娘として生まれ変わったので、両親の罪を暴く  作者: 葵 すみれ
本編

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28.情報操作

 日を追うごとに災害の話が増えていくが、王位交代の気配はない。

 セシリアとエルヴィスにとっては時間が稼げるほど都合はよいのだが、それでも各地で起こる災害には不安が募っていく。


「ローズブレイド公爵領は大丈夫ですの?」


 あるとき、セシリアはエルヴィスに尋ねてみた。

 学園の同級生たちからも、領地での災害について怯えた声が聞こえている。

 セシリアとしては知らないが、アデラインの記憶ではローズブレイド公爵領は豊かで、おおらかな気質の人々が暮らす恵まれた地だった。

 かつてアデラインが幼い頃に過ごした地であり、懐かしい思い出が詰まっている。


 今のセシリアはだんだん、アデラインの記憶と感情が結びつかなくなってきている。覚えてはいるのだが、記録を読むような感覚に近い。

 それでも、ローズブレイド公爵領も災害に見舞われていると考えると、ただ災害が起こっていると聞く以上に、胸の痛みを覚えるのだ。


「幸い、大きな被害はありません。災害は起こっていますが、大体は防げています。人々の暮らしに問題が発生するほどの事態にはなっておりませんよ」


 ところが、エルヴィスから返ってきた答えは意外なものだった。

 大きな被害がないなど、セシリアが聞いたのは初めてだ。さらに、防げているという言葉も、今まで聞いたことがない。


「……災害を防ぐという発想が、この国にはあまりないのですよね。女神の加護に頼りきっていて、災害が起こらないのが当たり前ですから」


 セシリアが驚いているのに気付いたようで、エルヴィスは苦笑しながら語る。


「他国では、当たり前のように災害が発生するのですよ。毎年、ある時期になると暴風雨が必ず起こるという地域もあります。そこで暮らす人々は、少しでも被害を和らげるため、様々な対策をしているのです」


「まあ……」


 セシリアは驚き、うまく言葉が出てこなかった。

 かつてのアデラインの記憶でも、災害は縁遠いものだった。本当に女神の加護は偉大なものだと思い知らされる。


「川の氾濫を防ぐための堤防、農業用のため池など、備えられることはいくつもあります。ローズブレイド公爵領でも他国の技術を取り入れて、いざというときのための対策を行っていたのですよ」


「それは素晴らしいことですわね。ただ……何故、それほどの対策を行ったのでしょう?」


 アデラインが存命だった頃は、そのような対策の話など聞いたことはなかった。

 女神の加護が薄れたのも最近の話だったはずだが、どうして備えられたのだろうか。


「……先代は、王国からの離脱を考えていましたからね。女神の加護が失われた後に備えて、様々な対策を行ったのです」


「ああ……そうでしたのね……」


 アデラインの死後、内乱や独立の可能性があったというのは、以前に聞いた話だ。

 どうやらアデラインの父である先代ローズブレイド公爵は、勢い任せではなく、その後の対策まで考えていたらしい。

 結局、内乱や独立にはならなかったが、それが今こうして活きているのだから、わからないものだ。


「この対策を中心となって行ったのは、叔父でした。当時はまだ先代が弱ったとはいえ存命で、支えようとそれなりにまとまっていたのです」


 懐かしそうに目を細め、エルヴィスは呟く。

 爵位争いで、エルヴィスとは熾烈な戦いを繰り広げた叔父だが、当時はまだそうではなかったらしい。


「……しかし、結局王国から離脱することはありませんでした。叔父は、このような対策に意味などないと、よく不満を漏らしていたものです。もしかしたら、先代が閑職に追いやろうとしていると感じたのかもしれませんね。だんだんと叔父の様子が変わっていき、そして……」


 過去を振り払うように、エルヴィスは首を左右に振った。

 叔父にも、叔父なりの理由があったのだろうと、セシリアはしんみりする。

 今のように対策が役立つとわかっていれば、また違っていたのだろうか。

 だが、それは考えてもわかることではないだろう。


「とにかく、ローズブレイド公爵領は災害対策を行っていたために、大きな被害はありません。他領でも対策をすれば……いえ、それよりも」


 話を元に戻そうとしたエルヴィスだが、途中で何か思いついたようで、考え込む。


「……各領地でたいした被害がないのは、ローズブレイド公爵領くらいのものです。これは、あなたを婚約者に迎えたことによって、女神が喜んでいるからだとは思いませんか?」


「えっ……?」


 思いもよらないエルヴィスの言葉に、セシリアは絶句する。

 まさかセシリアがローズブレイド公爵領の未来の女主人になるからといって、女神が喜ぶとは考えられない。それくらいで被害が出ないはずがないだろう。

 だが、そこまでまともに考えたところで、これはそういう設定にしようという話だと気付いた。


「……つまり、災害を治めることのできる女王を即位させよう、という流れに持っていくのですね」


 セシリアがそう言うと、エルヴィスは満足そうに頷いた。

 かつて存在したという女王の功績は、一般には伝わっていない。

 だが、こうして実際に被害がないという奇跡に見えるような出来事を宣伝して、実はかつても女王が……と持っていけば、信ぴょう性があるだろう。

 実際は災害対策を行っているからだなど、遠く離れた場所からではわからない。

 事実と異なるアデラインの悪評を広め、ローガンとヘレナの真実の愛を強調したように、情報を操作すればよいのだ。

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