婚約破棄っ。 本当のゲームで悪役令嬢が処断されないという、エッセイを読んで。
他者のエッセイを批判するつもりは、一切ございません。
「カープ侯爵令嬢、あなたとの婚約を破棄するっ」
レイ王太子が叫んだ。
卒業パーティーの真っ最中である。
「えっ」
「えっ」
驚きの声が、二つ上がった。
「”真相”に目覚めたのだ」
「マカロウ男爵令嬢と婚約する」
「”アイ・エイ”では、婚約破棄ルート以外、カープ悪役令嬢は処刑されてしまうのだっ」
レイ王太子だ。
「ここは、”レモ・アジ”の世界ではないのっ」
マカロウ男爵令嬢である。
「”ドキ・コイ”に、この展開はございませんわっ」
カープ侯爵令嬢だ。
「「「んんっ!?」」」
「僕は」
「私は」
「私は」
「前世の記憶が、ある。 あるの。 ありますの」
セリフが被った。
「この世界は、乙女ゲーム、”愛は、あなたと永遠に”(略して、アイ・エイ)ではないのかっ?」
「ここは、少女向け恋愛小説、”恋は黄色いレモン味”(略して、レモ・アジ)ではないのっ?」
「……………………」
見事な立て巻き金髪ロールを、フルフルと震わせながら、カープ侯爵令嬢が俯いている。
首筋まで真っ赤だ。
じーーーー
二人は侯爵令嬢を見つめた。
こほんっ
わざとらしく王太子が咳をする。
「…………ヌらされて、です……」
カープ侯爵令嬢だ。
消え入るような声である。
「”ドキドキハーレム学園っ、恋女房(複数)はヌらされて”ですっっ」
カープ侯爵令嬢が大声を出した。
「ええっ、ええっ、前世は、アラサーボッチな寂しいOLでしたよっ」
「いいじゃないですかっ、18禁ア〇ルトゲームをしててもおお」
キャラクターに、退〇忍が出るような濃ゆくてコアなゲームである。
「な、なんかすまん」
「ゴ、ゴメンナサイッ」
カープ侯爵令嬢は、スンスンッと泣き始めてしまった。
日頃は、凛と背を伸ばし、きつめの吊り目が特徴の彼女だ。
ギャップが激しい。
なんかいいな
なんかいいわね
レイ王太子と、マカロウ男爵令嬢が視線を合わせる。
次の瞬間、二人はカープを指差して、
「「採用っっ」」
と叫んだ。
この世界が、18禁、アダルトハーレム運営シミュレーションゲームに決定した瞬間である。
この後、三人(プラスα)は、沢山の子宝に恵まれ、末永く幸せに暮らしたのである。
了
注釈:18禁の世界を選ばなかった場合、強力な強制力が働き、”キス以上の淫らな行為”は不可能になっていた。カープ侯爵令嬢の前世が、エッチなお姉さんでよかったね。
ゲームの世界で、悪役令嬢が処刑されないのもそうだけど、”全年齢版”と、”18禁版”の違いの方が気になる。
処刑は、”18禁”なのだろうか?