2話~家出前~
「なに……?」
「レイド!?」
そう宣言してすぐに僕は席を立つ。
頭に血が上り衝動的になっている事を自覚しながら、どうにも自分を抑えられない。
衝動のままリュースの呼ぶ声を無視して食堂を出ようとしたその時、制止の声が響いた。
「止まれ、レイド」
静かだが良く響く父の声は、僕のあらぶっていた心に冷水をぶっかけられたような気分にするものだった。レイドが父を極度に恐れていたからだ
ろうか?
振り返ると父も席を立っていた。ついでにリュースも僕のすぐ後ろにまで来ていた。
僕は少しだけ息を溜めてから答えた。
「なんでしょうか、父さん」
「今までなんの為に貴様のようなクズを育ててきたと思っている? 貴様には何の価値も無いが、ヒューイックの人間である事には変わり無い。意
味は分かるな?」
「いえ、分かりませんが。まずもって、僕はクズでも無価値でもありません。ただこの家に生まれたけど魔法が使えなかったというそれだけですか
ら。僕でも出来る事なんてどこにでもあります。農夫、商人、傭兵……せっかくですから自分に向いている仕事を探してみますね」
「それを、私が許すと思っているのか?」
父の手にはいつの間にか杖が握られている。なるほど、この世界では鞭の代わりに魔法で虐待するものなのか。
身構える僕の前にリュースが僕を守るように立ち塞がった。リュースの手にはこれまたいつの間にか剣が握られていた。これも魔法なのかな?
「いくら父さんとは言え、それ以上するつもりでしたら僕が相手になります。レイドはヒューイック家の次男ですが、僕の弟でもありますので」
「リュース! 正気!?」
「それは僕の台詞だロイス。意見が合わないというだけで魔法を使えないレイドに魔法で脅しをかけている状況の方が、よっぽど異常な光景だと思
わないか?」
ロイスにそう言って父を見るリュースだったが、足が若干震えているのに気づいてしまった。しっかりしているように見えるリュースだが、そう
いればまだ12歳の筈だ。
僕は言ってしまえば合わせて31歳、どうにも子供に頑張らせているようで罪悪感を感じる。
なので僕はリュースの肩に手を置いた。
「大丈夫だよ兄さん、ちゃんと自分でやるから」
「レイド、だが」
「リュース、退け」
父と僕から言われたのでリュースも引かざるを得ない。
リュースが僕の後ろに下がり、僕は一歩前に出てまっすぐ父の見ながら息を整えた。
「……率直な僕の意見を言わせていただきます、貴方に人を育てる資格は無い」
ストレートに自分の意見を伝えた。室内の空気が固まったような気がした。
父の眉間の皺が深くなったが、僕は気にせずに続ける。
「子供の未来を潰してでも自分の思う通りにしようとする……それくらいならまだ理解はします。変な大人になってほしくないという気持ちから行
き過ぎた教育をしてしまう人もいますから。ですが貴方はそうじゃない。子供……僕の未来に何の期待もしていないでしょう? 自分の望む才能を
身に着けていない子供は必要無い、あとは死ぬ前に多少役に立ってもらおう……なんて、人の親であるかどうかの前にまず人としてどうかと」
「……よくもそれだけの大口を叩けたものだな。何の価値も無いお前を仕方なく育て、せめて有用に使ってやろうと」
「レイドの価値をお前が勝手に決めるな」
遮って強めの口調でそう言ってしまった。またカッとなってしまったのだ、反省。
どうにもこの人とは相性が悪いようだ。話を聞いているだけで一々腹が立ってしまう。
何もかもに反抗したくなるのは、レイドの意思か僕の意思か。
父は机をバンッと叩いた。
「今までどれだけ貴様に無駄な金を使ったと思っている! この食事も! その服も! 何もかもこの私が与えたものだ!」
「なるほど」
僕は身に着けていたものを全て脱ぎ捨てる。母が「きゃっ」と声をあげた。少し申し訳ない気分になった。
リュースが慌てて服を着せようとしてきたが、僕はそれをやんわりそれを止めた。
「この服が服従の証であるのなら喜んで脱ぎ捨てましょう。食事が奴隷の証であるのなら、今後一切必要としません。今まで僕にかけた無駄な金の
返却をお望みでしたら、どうぞ過去に戻って自分に警告してきてください」
「……気でも狂ったか?」
「この家で貴方にゴミのように扱われるくらいでしたら、僕は何もかも投げ捨てて自由のまま死ぬ事を選びます。それでは失礼します」
「レイド!」
改めて、止めようとするリュースの横を通って食堂を出ようとした。
バチィンッ!!!
瞬間、視界に火花が飛び散った。何が起こったのか分からなかった、辛うじて分かったのは自分が地面に倒れている事だけだ。
ざわめきが耳に入ってくるが、強い耳鳴りのせいでそれを言語として認識することができない。
ようやく徐々に感覚が戻ってくると、激痛で身体が悲鳴を上げている事に気づいた。
そして、ようやくリュースが怒鳴り声をあげていることが分かった。
「僕にその覚悟が無いとお思いですか!」
「お前はこのクズに入れ込み過ぎだ。いい加減に現実を見る事を覚えろ」
「弟を案じることが現実が見ていない事になるのなら、僕は一生目覚め無くていい!」
本当にリュースは良い奴だ。どうしたらこの家でこんなに善く育てるのだろう?
まだ頭がクラクラするし全身に力が入らないが、リュースの為にもここで寝ている訳にはいかない。
腕をひきずるように動かして、なんとか身体を起こして座る事ができた。
荒い呼吸を整えてから口を開く。
「……兄さん、大丈夫だから落ち着いて」
「リュース! 無理するな、なんの対抗魔法も無しにアズ・ショックを受けたんだ」
アズ・ショック……確か中級の雷魔法? 本気でそんなことしたのかこの人は……。
この世界の知識は曖昧だが、最悪死に至る事もある強力な魔法だ……。
だが僕はそんなことで負けてやるつもりは無い。
「ああ、そうなんだ。それなら僕の完勝じゃないか」
「え? ど、どういう事だ?」
困惑するリュース。僕は笑いながら言う。
「だって考えてもみてよ。今の状況だけ見たら、口で言いくるめられない子供相手に力づくで解決しようとしたってことになるよね」
全員が押し黙った。僕は父の目をまっすぐ見つめる。
「10歳の子供に、口で勝てそうにないから、魔法を使って無理やり言う事を聞かせようとしたなんて……僕っていう存在よりもよっぽど恥ずかし
い事がありましたね、父さん?」
「良いだろう、この場で殺してやる。貴様という恥をこの手で葬って終わりだ」
「恥の上塗りがお好きなようで。どうぞ、ご自由に」
再三に渡る挑発は父の根負けを狙ったものだが、正直僕に勝算など無かった。
この世界の貴族の価値観は前世の世界とは大分違う。親は絶対、子供は親の操り人形であることが多いらしい。それでなくても基本的に子は親に
逆らいにくい。
それでも話が通じないという訳ではない。子供に言い負ければ恥ずかしいし、それで魔法を使うなんて敗北を認めているといっても過言では無い
。
もし見誤っていて本当に殺されたら残念だったと笑うしかないが……。
しかしここで自由になれなければ何も始められないんだ。兄さんの師事を仰いで実力を認めさせる、という方法もあるだろうが時間がかかりすぎ
る。僕は一刻も早く元の世界に行く魔法を探したかった。
たっぷり長い時間をかけて父と見つめあう。コクッ、コクッ、と時間を刻む時計の音だけがこの空間を支配していた。
やがて父は杖をしまうと、腰を下ろしてこう言った。
「…………フン。好きにしろ、どこにでも行くが良い」
「本気ですかお父様!?」
おや? 意外にもロイスが納得いかないというように声を荒げた。そして僕を指さす。
「こんな非常識な者を外に出せば、ヒューイック家の名に泥を塗る事になるかもしれません! 地下牢にでも閉じ込めておくべきです!」
「ロイス! レイドは罪人か!?」
「黙りなさいリュース! これは名誉の問題よ!」
「お前はどうしてそう」
「黙れ」
父の一喝で二人は口を閉じる。
「レイドは今日限りでヒューイックの名を剥奪する。今度二度とヒューイックを名乗る事を許さん。以上だ」
「分かりました」
迷うことなく了承し、リュースの手を借りながらなんとか立ち上がる。
「リュース、手を貸す事は許さん」
「……今日はまだ僕の弟です」
父は鼻を鳴らして黙った。
そしてそのまま二人で食堂を出ていくのだった。
side:ロイス
「……あれは本当にレイドか?」
父様の呟きに内心で同意する。
最近レイドを見ていなかったが、リュースの反応を見てた限りでは少なくとも大きな変化は無かったはずだ。
レイドは自分に才能が無い事を周りのせいにしていた。卑屈で、世界を恨んで、そんな態度に私は腹を立てていた。
だというのに、久しぶりに見たレイドはそんなことなんて無かったかのように普通に振る舞っていた。その上父様にあそこまで口答えをするなん
て……。
母様はずっと黙って視線を彷徨わせている。昔から意志薄弱で、そんな所が嫌いだった。
レイムは……いつの間にかいなくなっていた。料理は消えてるので、マイペースに食べ終えてさっさと自室に戻ったらしい。
そして私は、レイドとリュースが出て行った扉の方を見つめている。
何がアレをそこまで変えたのだろう? リュースではない。リュースはただ前を向くように言うだけで、今までのレイドには逆効果だっただろう
。いつ諦めるかと見ていたが、リュースは諦めるという事を知らなかった。
父でも母でも、当然レイムでもない。じゃあ何があった?
考えてみたが答えなど出る筈もない。
レイドの脱ぎ捨てた衣服を見る。
なにが変えたのかは分からないが、私はレイドの変化を良しと捉えた。
少なくともアレはアレなりに成長を望んだ結果なのだろう。ろくでもない出来ではあるが、一応弟だ。ヒューイック家から追放されようとそれは
変わらない。
このまま外に出れば長くは生きられないだろうが、少なくとも今のレイドならば多少は認めてやってもいいだろう。
「お父様。本当にレイドを追放なさるんですか?」
「……さてな。それはアレ次第だ。多少マシになって帰ってくるのならばそれで良し、そうでなければどこぞで死ぬだけだろう」
それに頷く。
結局のところ、こちらがどうこうする前に魔物に襲われて死ぬか、盗賊に襲われて死ぬか、そうでなくても奴隷に堕ちる可能性もある。
そうなったならば「最初からレイドなどという者はいなかった」と言う事になるし、万が一生き残ることができればそれなりに価値があるという
事だ。
そうなった時に戻せばいい、という判断だろう。
私はそれ以上レイドについて考える事をやめて、朝食に戻った。
「クックックッ……」
父様が楽しそうに笑っている理由が分からなかったが、レイドは去ったのだ。
私にはそれだけでしかない。
……少しだけ心に引っかかるものがあったが、今の私にはその意味は分からなかった。
side:レイド
肩を借りながらリュースの部屋まで行き、ベッドに座らされた。
そしてリュースは慌てたように自分のタンスを引っ張り出す。
「レイド、もう後戻りはできないぞ。ちゃんと覚悟があるんだよな?」
「覚悟と言われるとなんとも……ただ普通に家を出て、生きていくだけだよ」
「……とりあえず服だな。僕が貰った服だから、どうしようと僕の自由ってことでいいだろう」
リュースはもう着れなくなった服もちゃんと取っておくタイプのようだ。次々とタンスを引き出して服を漁っていく。
僕に与えられたものじゃないからノーカウントかな? まぁ深く考えなくていいか。
「体形の事は考えてなかったな……肌着は無理だな、上着で誤魔化すしかないか。ズボンも緩めの奴なら入るかな?」
手渡されたものを着てみる。肌触りがかなり良い、前もちゃんと留まった。ズボンも少しきつめだが腰まで上げることができた。
「うん、大丈夫だな。上下3着ずつリュックに入れておくよ。よし、外に出るぞ」
慌ただしくリュースは走り出す。
僕もそれに着いていこうとするが、あっという間にその姿は見えなくなってしまった。
荒い呼吸をしながら中庭に出ると、リュースは何かを持って飛んで来た。見るとベルトと剣だった。
僕の腰にベルトを巻きつけて、そして剣をホルダーに差し込んだ。
「よし。僕のお古だが、中々良い代物だよ」
そして距離を取ると、リュースは自分の腰に差していた剣を抜いた。
「良いかレイド、お前も知っているとは思うが外には危険が多い。このあたりに強い魔物はいないが、盗賊はどこにでもいる。今のお前じゃそれら
に対抗することは難しいだろう。だから今から夜まで、僕が稽古をつける。時間が無いんだ、厳しく行くぞ」
「ごめん、兄さん。面倒をかけるよ」
「面倒なんかじゃない。父さんがなんと言おうとお前は僕の大切な弟だ、それはずっと変わらない。今回はやり方が荒っぽかったと思う、他にやり
方はいくらでもあっただろう。だがお前が選んだ道だ。僕は最善を尽くしてお前の第一歩を見送る」
本当に、良い奴だ。妹の佳織が見ていた少女漫画の王子様がこんな感じだったなぁ。
この厚意を無碍にはできない。僕も死ぬ気でやらせてもらおう。
そしてそれから、本当に夜までびっしりと指導を受けた。
キツイなんてものじゃない。何度倒れても回復薬を飲まされて立ち上がるように促され、そしてまだぶっ倒れるまで剣を交える。
レイドとは2つしか違わないのに、リュースは疲れ知らずなのか一度も回復薬を飲まずに剣を振り続けていた。
そんな状況で僕の方から参ったを言う訳にはいかない。身体が休息を求めようと、僕は死力を振り絞って剣を握る。
「そうだ! 攻撃の手を緩めるな! 防御は最小限に、攻撃は最大限にだ! 見て避けろ!」
朝の訓練とはまるで違うが、僕はこんな状況でありながら心から楽しんでいた。
リュースの剣先はまるで追えない。初めて持つ本物の剣はずっしり重く、もはや腕に感覚が無い。足は生まれたての小鹿のようになっている。
だが楽しい。楽しかった。自然と笑顔になっているくらいに。
そして今日何度目か、リュースによって僕の剣が弾き飛ばされてしまう。
「っ、ふぅ……時間切れだな」
それを聞いて僕は崩れ落ちた。
ようやく地獄の訓練が終わった安堵と、もっと遊んでいたかったという気持ちだった。
「レイド、お前は凄いな。ひょっとしたら、剣の才能は僕よりも上かもしれない」
「はー、はー……こ、これで? 正直……っ……ふぅ……まったく敵わなかったんだけど……はぁ……」
「それはそうだ。レイドが怠けていた間に僕はずっと技を磨いていたんだから、一朝一夕で追いつかれたら僕の立場が無い」
「それもそうだね……」
「ただ目に見えて成長したよ。僕の剣技に上手く反応していたし、わざと作った隙を見逃さずに仕掛けてきた。何より……終始楽しそうにしていた
な」
「うん……楽しかった。少しずつ自分の思う通りに剣を動かせるようになったり、身体の動かし方が分かってきたり」
「楽しんでやれる奴は成長速度が段違いだ、と僕の師・ラーゲンが言っていた。お前は間違いなく将来有望だ」
「だと嬉しいな」
手を借りて立ち上がる。最後の回復薬を口に含んで一気に飲み込んだ。ちょっと苦いけど悪くない、好みの味である。筋肉痛にも効くらしい、便
利な飲み物だ。
「よし、風呂に入ろう」
父のことが気になったが、「何か言われても僕が何とかする」と言われたので、その言葉に甘えて二人で浴場に来た。
湯はやや冷めているが大したことではない。
汗を思い切り流して、一気に湯船に浸かった。
「あー……気持ちいい……」
疲労困憊の身体には心地のいい湯加減だ。
リュースも隣に座る。
「……レイド、ハッキリと言うが僕はまだ不安だ。確かに筋は良いし将来的に凄い剣士になる可能性はあるが、今のお前はまだまだだ。やはり僕か
ら父さんに……いやしかし父さんは一度決めたら取り消さない人だし……」
最後まで僕の身を案じてくれているリュース。
その姿に、前世の弟妹達を重ねてしまった。皆、僕を毎日労ってくれたなぁ……。
僕は自然とリュースの頭に手を乗せて優しく撫でた。
「大丈夫だよ。僕なら何の心配もいらないから。きっと大丈夫。リュースに教えてもらったことは忘れないよ」
「お……うん……。ずっと気になっていたんだが、本当にお前に何があったんだ? 父さんにあれだけ言い返した度量と良い、追い詰められてい
る状況でありながら落ち着いてる事と良い……いや、悪い事じゃないんだが、本当に10歳かお前?」
「いやそれを言うならリュースも本当に12歳? って思うほど貫禄あるんだけど」
「僕は状況がそうさせたが、お前はずっと部屋にいただろう」
なんと言えばいいか分からず沈黙してしまった。
素直に話してしまおうか? どうせ今日で最後になるのだから、それでもかまわない……と思ったのだが。
彼にとってレイドは大切な弟だ。そんなレイドは今、正樹としての僕と混ざりあって殆ど消えてしまっている。
そんな僕は、リュースにとって本当に大切に思っていたレイドと言えるのだろうか?
僕がここにいる事によってレイドは消えてしまった。その事実を今リュースは知らない。
「大人になろうと決めたんだよ。これでも僕、結構無理してるんだよ?」
白状してしまえば僕は楽になるが……言わなければ彼から弟を奪わなくて済む。そう考えて、真実を隠して彼の弟であることを選んだ。
リュースはまだ納得がいってないようだったが、これ以上問い詰めても無駄と判断したのか話題を切り替える。
「貴族っていうのは息苦しいな。伝統に縛られ、家族ですら蔑ろにする。僕にとっては皆大切な家族だというのに、魔法が使えないだけで排斥しよ
うとする」
「ずっと思ってたんだけど、リ……兄さんはなんでそんなに良い人なの?」
つい思ってたことを口に出してしまった。ついでに名前呼びになってしまっていたのを改める。何故か弟を相手にしてるような気分になってしま
っていた。
リュースはきょとんとした顔をした。
「良い人? 僕は当たり前だと思う事を当たり前に言っているだけなんだが……」
「父さんは魔法主義、母さんは事なかれ主義、ロイスは才能主義。レイムは……何を考えているか分からないけど、ついでに僕は周りの才能に嫉妬
しているだけの無能力者。こんな状況で、なんでリュースはそれだけ良くあれたのかなと」
「ふむ……家族を大事に思うのはそんなに不思議な事じゃないと思うんだが……父さんは僕たちには厳しいが、民の事を大切に思っているし、母さ
んは父さんを精神的に支えている」
父は分からないけど、母は父を怒らせないようにしているだけという印象だったが……。
「ロイスは自他共に厳しいが、その分努力を怠らないし努力をしている人間には対等に接する平等な奴だ。レイムは、確かに何を考えているかは分
からないけど、その才能をきっと人々の為に扱うだろう」
分かったことがある。リュースは身内に対する評価が恐ろしく甘い。
僕にとってはありがたい事だが、このまま成長すると良いように利用される人間になってしまうかもしれないな……。
「僕は本当に当たり前の事しか考えてないと思ってるよ」
ただ、そういう純粋な部分はとても好ましい限りだ。
前世なら良い友人になれただろうなぁ……。
「レイド?」
なんか頭がふわふわとしてきた。
凄く気持ちが良い。綿あめに包まれているような気分だ。
「……イド……ド!」
そして僕の意識は再度閉じていった。
アドバイスや評価、感想などお待ちしています。