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すれ違う恋の行方〈高校編〉  作者: 秋 夕紀
第3章 椿原六花(16歳)=立松千宙(17歳)
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§1 合宿中の接近

<椿原六花>

 西王子高校1年生。サッカー部のマネージャーで、身長は154㎝で小柄だが、活発な女子。セミロングの髪を、いつもポニーテールにしていて、黒目の大きいぱっちりとした目が印象的だ。

 8月の暑い陽射しの中、西王子高校のグランドでは、サッカー部の合宿練習が行われていた。高校2年生の立松千宙も汗を流していたが、ゴール前の競り合いで右脚を挫いてしまった。ベンチに引き上げた千宙を、マネージャーの椿原(つばきはら)六花(りっか)は献身的な看護に当たっていた。

「立松先輩、痛くないですか?足首、痛いですよね。冷やしますね。」

「ありがとう、助かるよ。でも、しばらくは、走れないかもな!」

 顧問から部屋で休んでいろと言われ、千宙は六花の肩を借りて宿舎へ移動した。部屋の中でも、六花は心配そうに彼の面倒を見ていた。

 私が高校へ入学して、部活を決めかねている時、グランドを駆けずり回る立松先輩が目に留まった。それがきっかけで、サッカー部のマネージャーになった。先輩に対しては恋とか何とか、そういう気持ちはなく、ただ憧れの存在だった。一緒に活動できる事が嬉しくて、部活動に来るのが楽しみだった。合宿中の事、先輩がけがをしたと聞き、居ても立ってもいられず、先輩の看護に率先して当たった。


 立松(たてまつ)千宙(ちひろ)は、中2の時に交際していた梅枝(うめえだ)七海(ななみ)に、彼女の転校を機に手紙で別れを告げた。まだ好きだった七海が忘れられずに苦しんだが、部活と勉強に励む事で気持ちを立て直した。西王子高校に入学してからもサッカー部に入り、グランドを走り回る事が生きがいだった。同級生の女子から告白された事もあったが、交際するには到らなかった。


 合宿が終わっても千宙の脚は良くならず、練習にも参加できない夏休みを持て余していた。そんな時、六花がメールを送ってきた。千宙の具合を心配する内容に、千宙の心は動き始めていた。そして、看護のお礼を口実に、六花と会う約束をした。

「先輩と二人で会えるなんて、昨夜は嬉しくて眠れませんでした。」

「そんな大袈裟だよ。それから、その先輩というのは止めにしようよ!」

 先輩とのやり取りの後、私は千宙さんと名前で呼ぶ事になった。その日は初デートだと思い、気合を入れてタンクトップにミニスカートで出掛けた。ファミレスで食事をしたが、私がほとんどしゃべっていた。彼はまだ脚を引きずっていて、練習ができない事を悔やんでいた。そんな彼を元気付けようと、カラオケに行く事を私は提案した。

 店に向かっていると、サッカー部の卒業生だという灰田(はいだ)潔之(きよゆき)に声を掛けられた。彼女を連れていて、その人は夏目(なつめ)和葉(かずは)と名乗っていた。

「立松、久し振りだな。けがをしたんだって?今日は、デートか?」と質問され、千宙さんは戸惑っていた。

「デートというか、練習ができないので暇つぶしです。」と私の顔を見て、申し訳なさそうに答えていた。「暇つぶし」はないだろうと思ったが、そこはぐっと堪えた。するとその先輩が、4人でカラオケに行こうと誘ってきた。私は千宙さんに断ってほしいと念じていたが、彼があっさりと承諾したので、私はそれに従うしかなかった。

「六花ちゃんだっけ?可愛らしいね!立松のことが好きなの?」

「いえ、そんな仲ではなくて、先輩と後輩ですから。」

 灰田さんに唐突に訊かれ、私は顔を赤くして答えていた。横にいた夏目さんは、曲を選びながら微笑んでいた。4人で2時間歌って店を出て、千宙さんと二人切りになる事もなく別れた。別れ際に、千宙さんが夏目さんと連絡先を交換しているのが気になった。


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