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すれ違う恋の行方〈高校編〉  作者: 秋 夕紀
第2章 梅枝七海(16歳)=赤西亮伍(18歳)
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§7 気楽な男友だち

 彼と軽口を叩きながら、チェーン店のカフェに入った。そこで私は、両親と喧嘩した事や家の事情について話をした。彼を目の前にすると、冗談を交じえた遠慮のない会話ができた。

「俺も同じだよ。親父に店を継げと言われて、いつも喧嘩ばかりしてるよ。そんなの俺が決める事で俺の自由だと言うと、『高校に行って遊んでいられるのは誰のおかげだ』みたいな事言われて、遊びにでなく勉強しに行ってるんだと言い返すと、『うるさい、親の言うことを聞け』で終わりになる。」

 私の悩みに合わせて話しをしてくれて、彼の気遣いが嬉しかった。

「それでも、親父の気持ちも伝わってくるんだよな。だから、今は養ってもらってる立場だからと思って、あんまり抵抗するのは止めてる。高校出て、自立して、鮨屋を継ぐか継がないか分からないけど、親父に自分の意志を伝えようと思ってるんだ。」

「偉いね、白石君のことを師匠と呼ばせてもらいます。わたしも反抗ばかりして、恥ずかしいな。『長いものにはまかれろ』と言うしね。」

「なに?長い巻きずし?」と返す彼に、大笑いしてしまった。

「やっぱ、白石君は馬鹿なの?師匠は取り消し!」

「それはいいけど、その白石君という呼び方は何か他人みたいでよそよそしいし、付き合ってる者同士、もっと親しみを込めた呼び方がいいな!」

私のすきを見て、彼はとんでもない事を言っていた。

「白石君とは他人だから!付き合ってもいないから!」

「まあまあ、落ち着いて!梅枝は、梅ちゃんでいいか。それなら、俺は冬馬だから、とうちゃんか。何か変だな、冬馬で良いか?」

 

 彼に押し切られる形で、梅枝は梅ちゃんに、白石君は冬馬君になった。会話は途切れる事なく、1時間余りが経っていた。帰り際には、七海から「相談に乗ってくれたお礼」という事で、連絡先を交換し合った。

 家に帰ると、両親が待ち構えていた。七海は体裁が悪いばかりか、自分の衝動的な行為に自己嫌悪に陥っていた。

「ごめん!遅くなって。」と言葉少なに言うと、

「心配させるなよ!まだ8時前だから、門限までは数分あるし、いいよ!」と父親は、私をとがめようとしなかった。

「さあさあ、お腹空いたわね。ご飯できてるから、食べましょ!」と言う母親の言葉も、私の胸に響いた。自分勝手な私の言動を受け入れてくれて、暖かく迎えてくれる家が好きだった。私の小さな反抗心は、両親、家族という大きな庇護の中に吸い込まれてしまった。私を守り育ててくれたこの家から、巣立つのはもう少し先のように思った。


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