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17. 2人の関係が表す希望

「ヴァル様!今日は陛下たちとディナーの日でしょ?ドレス選んでほしいの!」

「もちろんだよ、ディア。朝食が終わったら君の部屋に行こう」



この5年間で彼と彼女の距離は大きく縮まった。

互いの呼び名は愛称へと変化した。

公爵家でも王家でも、子を愛称で呼ぶことはなく、また共に幼い頃から特別に親しい友人もいなかったため、互いに初めて与えられた愛称であり、初めての経験であった。


ヴァレイドルの発音は幼いディオリーゼには僅かばかり難しく、ディオリーゼが呼びやすい愛称をディオリーゼ自身に決めてもらった。

お返しとばかりに、ディオリーゼもヴァレイドルに愛称がほしいとねだったので、ヴァレイドルがディオリーゼのために考えた。


相手のためだけに考えた、自分のためだけに考えられた、自分しか呼ぶことのない、相手しか呼ぶことのない愛称の存在は2人の距離をぐっと縮めた。

いまや2人は王弟と公爵令嬢という立場を越え、ただ2人の親しい人間として一緒に過ごしている。



ディオリーゼは愛称に敬称こそ付けているものの、ヴァレイドルに対して敬語を使ったり畏まった態度をとったりすることはなく、ヴァレイドルもそれを当然の事として受け入れていた。

元々話好きで甘えたなディオリーゼは許されるままにヴァレイドルに甘え、ヴァレイドルはそれを歓迎し、可能な限り甘やかした。



最初の頃は、陛下に会うためのドレス選びは侍女に任せていたが、一度ヴァレイドルが選んだことを大層喜んだため、それ以降は毎回ヴァレイドルが決めている。

ディオリーゼが新しいドレスやアクセサリーを買う際も常にヴァレイドルが隣にいる。

ディオリーゼにも王弟の婚約者として潤沢な資金が確保されているが、ディオリーゼのものは全てヴァレイドルからのプレゼントとして扱われるため、5年の間、一度たりとも手をつけられていない。


ディオリーゼは自分のためにヴァレイドルが物を選ぶのを無邪気に喜び、ヴァレイドルは愛しいディオリーゼを自分の手で飾り立てられることを心底喜んでいた。

これまでにヴァレイドルがディオリーゼに贈ったドレスのは数百に及ぶ。

ディオリーゼは公爵家でもそれほどの枚数を与えられたことはなく、ヴァレイドルから貰った1着1着を大切に着て、ずっと大事に取っておきたいと主張したが、

ヴァレイドルが贈るドレスの数があまりにも膨大であったため、ディオリーゼが特別に気に入ったものを除いたほとんどが、1, 2回の着用でお払い箱となった。



そんな2人の関係を既存の型にはめるのはあまりにも難しい。

婚約者というには男女の情がなく、親子や親族というにはあまりにも近すぎた。

2人は、他にない2人だけの距離間で、確かに互いを思い合っていた。

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