15. 穏やかな空間と希望
朝食を終えた2人は王宮の図書館へと向かった。
王宮の図書館には国中の書物が集められており、ここにしかない文献も数多くある。
利用できる人間は限られており、権威ある学者か貴族の中でも一部の者しか入室が許されていない。
王宮に初めて来たディオリーゼは、もちろん王宮の図書館にも入ったことはない。
「わあ…!」
壁に埋め込まれた本棚は、天井まで届くようで、その中には分厚い本がびっしりと収められている。
壁に窓はなく、代わりに柔らかい光の照明で部屋中が明るく照らされている。
ホールの中央には落ち着いて書物を読むための机もあり、一つ一つの細工が王宮の歴史を感じさせた。
厳かな空間に圧倒されつつも目をキラキラと輝かせるディオリーゼを図書館の奥にある空間へと案内する。
本棚の間を抜けた先にある空間。
角を曲がった瞬間に視界が明るくなる。
図書館の中としてはかなり明るく、荘厳な雰囲気はなく、非常に温かみのある空間になっていた。
領域を示すかのように淡いピンクのカーペットが敷かれている。
机や椅子も館内の他の物とは色もデザインも異なる。曲線の多い柔らかいデザインで、白い木材を基調としてピンク色の花の模様が可愛らしいものとなっている。
同じデザインの本棚もあり、数冊の本が入っているものの随分と隙間がある。
奥には、ピンクの天蓋に囲まれた真っ白のソファが見え、その上に置かれたピンクのクッションが映えていた。
まるでおもちゃ箱のようにディオリーゼの好きな可愛いものがたくさん詰め込まれた空間。
そのあまりの可愛さに、ディオリーゼはここが王宮の図書館であることをすっかり忘れてしまった。
目を見開いたまま固まるディオリーゼの肩をヴァレイドルが抱き、優しく囁いた。
「ディオリーゼ、ここは君のための、君だけが使用するのを許されている空間だ。君の好きな本を揃えて、好きなように過ごしていいんだよ。」
さらに目を見開いて自分を見上げるディオリーゼに微笑む。
ギュッ
「ありがとう!ヴァル様!」
ディオリーゼは、彼女の肩を抱くためにしゃがんでいたヴァレイドルへと飛びつき、その首に手をまわした。
興奮した状態のまま感謝を伝える。
ヴァレイドルの頬に柔らかなものが触れた。
ヴァレイドルの手をしっかりと握ったままディオリーゼはピンクの空間へと駆け出す。
椅子や机の手触りを楽しみ、花の模様を指でなぞる。
机や椅子も館内の他の物とは色もデザインも異なる。曲線の多い柔らかいデザインで、白い木材を基調としてピンク色の花柄が可愛らしいものとなっている。
本棚に並ぶ本を手に取り、隙間を撫でる。
ソファにちょこんと腰かけると、足をお行儀悪くぶらぶらとさせる。
しばらくクッションの手触りを楽しんでいたが、ふと手の中のヴァレイドルに気づいたのだろう。
天蓋から顔を半分覗かせ、ヴァレイドルにくふくふと笑いかける。
つられるようにヴァレイドルの頬も緩んだ。
穏やかな空間で手の中の小さなぬくもりを抱きしめていた。




