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アンライクミー

 死を恐れる必要はないって?


 前田は話を続けた。


「眞子ちゃんとうっちー、それにまどちゃんはノートに書かれた『死ぬといわれてる日付』が明確にわかっているのよ」


「わかってるって? なんで?」


「うっちーは体育祭の日、まどちゃんはこのクラスで一番最後に殺すと書かれていたの」


「そして私はこのクラスで最後から二番目に殺すと書かれていた」


 前田が話し終えてから長谷部は言った。


「で、でも前田さんは大丈夫なの?」


「あ、私は雪の降る日に殺すって……だから心配いらないの」


 今まで冷静にみえた前田の表情に、一瞬だけ不安が表れた。


「私と川島先生は明確な日付は指定されてなかった。私は雪の日で。先生は葉月ちゃん、岡崎さんが日直の次の日に殺すって決められてた」


 そういうと前田はまたパラパラとノートをめくる。また赤い丸文字がびっしり。




☆☆☆




川島先生




あなたは私を助けれくれなかった




それどころか無視されたこともある




あなたは先生失格ね




あなたにはこれからおびえながら生きるのが似合ってる




あなたはいつ殺すのか教えない




でもそれはかわいそうだからヒントだけあげる




あなたは岡崎葉月が日直の日に殺す




それも私のようにクラスメイトをいじめた日




あなたの頭を半分にしてあげる




☆☆☆




 頭を半分。私の見た幻影に近い。少し寒気がした。


 でもこれではっきりした。あの時、どうして円藤はあんなにも強気だったのか。岡崎が日直の日。先生は生徒をきつく叱ることができなかったのだ。そして内田の頭を叩いた先生は、殺された。そしてもう一個わかったこと。


 それは岡崎だった。『岡崎が日直のいつかに日』に先生は殺される。つまり先生が死んだ今、岡崎はいつ殺されるかわからないのである。


「眞子ちゃんと前田さん、うっちー、まどちゃんは大丈夫だとして、岡崎さんと永友さんは大丈夫なの? あの二人はいつ死んでもおかしくないんじゃ……」


「いいのよ」


 長谷部が私の話をさえぎるように言う。


「どうせ助けようにも助けようがないし」


「ダメだよ! 何言ってんの」


 私らしくない台詞。だけど


「クラスメイトじゃないの?」


中学二年生の女の子らしい台詞。


「まあそうだけど……」


「二人のことが書いてあるとこ見せて!」


 長谷部の言葉をさえぎって、私は忙しくノートをめくる。




☆☆☆




岡崎葉月




私はあなたが嫌い




柏木や酒井といつも一緒になって私を笑う




だからあなたが嫌い




あなたの焼いた肌が嫌い




そんなに焼きたいなら




黒焦げにして殺してあげる




☆☆☆




 雨脚が強くなった途端、雷鳴が鳴った。今朝の天気予報で、今日は昼過ぎから深夜にかけて雷雨になると言っていた。


「これ、岡崎さんは知ってるの?」


 前田が答える。


「知ってるはずだよ」


「今日、岡崎さんが危ないかもしれない」


「なんで?」


「雷が岡崎さんの家にでも落ちたりしたら、家が燃えて黒焦げになっちゃうかもしれないじゃない」


「だからって私たちに何ができるの?」


「もし岡崎さんが危ないのなら一日中一緒にいればいい。岡崎さんを守ることもできるし、呪いの正体を突き止めることもできるかもしれない」


「呪いの正体?」


「自殺した子の霊が殺してるのか。それとも誰かが殺してるのか」


 そこでチャイムがなった。我ながら凄い。誰かのために必死になったことなんて初めてな気がする。


「だったら本人に聞いてみたら」


 前田はそう言って弁当のふたをとじる。


「ごめん。もっと早く言っとくべきだったね」


 長谷部は軽く謝った。


「ううん。二人が話してくれただけでよかったよ」


 私は愛想笑いして、弁当を片づけた。

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