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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

悪役

作者: 沼野雷菜
掲載日:2020/08/03



「どう…して…」


僕の目の前で、苦しげに泣きながら君はつぶやく。


「どうして、お前なんだ…!どうして、お前が!」


「どうも」


「お前が、そっちにいるんだ!!ニコラスーーっ!!」


「僕が神聖教会 白の大司教、ニコラス・ラティスです。アレンには、久しぶりというべきかな?」


アレン・フラウドール。

物語の主人公のような、王道のヒーロー。

君と僕は幼馴染だった。

君は僕のことを慕っていたけれど、僕は君が大嫌いだった。


当たり前のように隣にいて、当たり前のように僕が君と同じ道を選ぶと思いこんでいる。

自分の信じるものが正義で、それ以外はすべて悪だと思いこんでいる。

その真っ直ぐなところが大嫌いだった。


場面シーンは一番信じていた友、つまり僕の裏切り。アレンにとって、史上最悪の悪役の登場だ。



「教会は、僕らの村を焼いたやつらだぞ!父さんも母さんも妹も、みんな死んだ。お前の兄だって…なのに、どうしてお前がそっちにいるんだよ!」


「教会がしたことは意味のあることだった。君はいつも、目の前の1つしか見えてない。僕は、君のそういうところが大嫌いだ!」


ショックを受けた顔をした君は、剣を僕に向ける。


「わかり、あえないんだな…」


「理解りあおうともしないくせに」


「僕は!教会だけは許せない!どんな理由があってもだ!」


「理由を知ろうともしないくせに」


「剣をとれ!ニコラス!最初で最後の大喧嘩だ!」


「……わかった」


僕も剣先をアレンに向けた。

話し合いでは、どちらの主張も通せない。

結局は暴力が勝つのだ。


君は剣が得意だったね。

僕は剣が苦手だよ。

この勝負、勝つのは君だろう。

予定調和だ。


君は自分の信じるもののために、僕を殺す。

君は正義の名のもとに、悪と名付けた弱者を殺す。

君は、君の嫌う教会と同じことをしていることに気がつくのだろうか。


あ。


僕の胸に、アレンの剣が突き刺さる。

痛いのか痛くないのか暑いのか寒いのか、何もわからない。ただ、息ができなくて苦しい。


「ニコ、ラス…」


「これが、君の、の、ぞんだ、未来、か。傑作、だな…ほん、と、わら、え…ぁ…」


僕の身体が傾き、そのまま倒れていく。

アレンが僕を受け止めた。


「ニコラスっ…!ああああああああっ!!!!」


僕の名前を呼び、泣き叫ぶ君を見る。

正義の味方は、友が悪に染まったことを嘆き、せめてもの思いで、その手を血に染め友を葬りました、とさ。

ああ、ほんとに、なんて傑作だ!なんて喜劇だ!


「…はは」

どっちが悪役なんだか。


君を嘲笑って、僕は死んだ。

僕のいない世界で君は、英雄になれたかな。





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