悪役
「どう…して…」
僕の目の前で、苦しげに泣きながら君はつぶやく。
「どうして、お前なんだ…!どうして、お前が!」
「どうも」
「お前が、そっちにいるんだ!!ニコラスーーっ!!」
「僕が神聖教会 白の大司教、ニコラス・ラティスです。アレンには、久しぶりというべきかな?」
アレン・フラウドール。
物語の主人公のような、王道のヒーロー。
君と僕は幼馴染だった。
君は僕のことを慕っていたけれど、僕は君が大嫌いだった。
当たり前のように隣にいて、当たり前のように僕が君と同じ道を選ぶと思いこんでいる。
自分の信じるものが正義で、それ以外はすべて悪だと思いこんでいる。
その真っ直ぐなところが大嫌いだった。
場面は一番信じていた友、つまり僕の裏切り。アレンにとって、史上最悪の悪役の登場だ。
「教会は、僕らの村を焼いたやつらだぞ!父さんも母さんも妹も、みんな死んだ。お前の兄だって…なのに、どうしてお前がそっちにいるんだよ!」
「教会がしたことは意味のあることだった。君はいつも、目の前の1つしか見えてない。僕は、君のそういうところが大嫌いだ!」
ショックを受けた顔をした君は、剣を僕に向ける。
「わかり、あえないんだな…」
「理解りあおうともしないくせに」
「僕は!教会だけは許せない!どんな理由があってもだ!」
「理由を知ろうともしないくせに」
「剣をとれ!ニコラス!最初で最後の大喧嘩だ!」
「……わかった」
僕も剣先をアレンに向けた。
話し合いでは、どちらの主張も通せない。
結局は暴力が勝つのだ。
君は剣が得意だったね。
僕は剣が苦手だよ。
この勝負、勝つのは君だろう。
予定調和だ。
君は自分の信じるもののために、僕を殺す。
君は正義の名のもとに、悪と名付けた弱者を殺す。
君は、君の嫌う教会と同じことをしていることに気がつくのだろうか。
あ。
僕の胸に、アレンの剣が突き刺さる。
痛いのか痛くないのか暑いのか寒いのか、何もわからない。ただ、息ができなくて苦しい。
「ニコ、ラス…」
「これが、君の、の、ぞんだ、未来、か。傑作、だな…ほん、と、わら、え…ぁ…」
僕の身体が傾き、そのまま倒れていく。
アレンが僕を受け止めた。
「ニコラスっ…!ああああああああっ!!!!」
僕の名前を呼び、泣き叫ぶ君を見る。
正義の味方は、友が悪に染まったことを嘆き、せめてもの思いで、その手を血に染め友を葬りました、とさ。
ああ、ほんとに、なんて傑作だ!なんて喜劇だ!
「…はは」
どっちが悪役なんだか。
君を嘲笑って、僕は死んだ。
僕のいない世界で君は、英雄になれたかな。




