表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/258

第83話 vsジェリーフェイカー

 あぁもう! どうして触手の先端ばかり相手にしていたのか!


「さっさと懐に踏み込むって言ってたじゃない! アタシはアホか!」


 駆けてしまえば数秒で辿り着く。

 伸びきった触手の一本を踏まないように走った。

 うねっていた触手のもう片方は、アタシが先端を相手にしている内にジェリーフェイカーの手元へと戻ってしまっていた。

 意外とその程度は考えられるらしい。

 青いボディの数歩前。ジェリーフェイカーの目前。もはや剣の間合い。

 

 近くで生きているジェリーフェイカー見ると、そこそこ鮮やかな青さがあるもんだと気付く。

 授業で見た死体と色が違うので、死後に変色するっぽい。

 光が射しこむとはいえ薄暗い魔森林の中で体液が不気味に蠢いている。

 目線と相手の傘のような頭部分の位置が同じで、しかし目らしきものは無い。

 いったいどうやって相手を認識してるんだろう。

 夜中に絶対に出会いたくないタイプの魔獣だ。

 こんなのがぬぼうと暗闇から出てきたら、悲鳴を上げて咄嗟に剣で刺してしまいかねない。

 いや、夜に会いたい魔獣なんていないけど。

 そんな事を考えながらも体は止めず、踏み込んでぐるりと体ごと回すようにして振りかぶる。

 勢いを付けた一刀。


「せぇい……!?」


 が、無意識に人相手のように振り被っていたため、意味の無い傘へと切り込んでしまう。

 触手を斬ろうとしたときと違って刃が入り込み、うまく突き抜けたから良いものの、完全に意味のない行為だ。

 ジェリーフェイカーも動揺は見せてこない。動揺するのかは知らん。

 慌てて返した剣は、今度は体の真ん中を浅く斬る。

 コアは確かに真ん中にあるけれど、明らかにコア以外の個所を狙ったような軌跡だ。


「もう、暴発しないで……! って、う、わっと!」


 そして引き戻された触手が――長さそのものも縮まっている――アタシの妨害をしてくる。

 ぶんぶんと振り回すだけの攻撃は見てから避ける事が出来る程度ではあるけれど、邪魔でしょうがない。

 あれでも受ければバランスを崩す程度に威力はあるし、もろに受ければ危ない。

 触手自体は硬いゴムのような感じだったのでみっちりと詰まってるんだろう。

 あれがイカだったら美味しかったろうに。炙って食えたりしないだろうか。

 そういえば先端はざらついていて、撫でられると切れるとか言っていたような……。

 先端を噛んだら口の中が血まみれになりそう。

 

 一歩二歩を大きく後退したのちに、赤いコア――――弱点をしっかりと認識する。

 青い体の真ん中奥。

 ジェリーフェイカーの体にうっすらと見える血管のような管がコアへと突き刺さっている。


「もう、邪魔くさいな!」


 いまいち感覚がわからないため、大げさに触手を避けながら再び踏み込む。 

 意識して何時も通りに剣を振らないようにする必要がある。

 ぐっと手に力を入れて剣を相手に向け、今度こそコアへと突き刺した。

 抵抗はあったが、それでも刺せない程でない。

 触手と全然手ごたえが違う。

 触手の方は上から突き刺しても難しいぐらいだったが、本体はそうでもない。

 

 確かな手ごたえと目視で貫いたことを確認したのち、瞬時に引き抜く。

 心臓のように一度二度コアが拡縮すると、血が滲みだしてジェリーフェイカーの動きが鈍る。

 最後に飛んできた触手にはもはや力が無く、剣で受け止めてみると押されることなく地面へと落ちて行った。

 構えたまま大きく下がり、じっと見つめているとアギトさんが倒した時と同じく、ぐったりと座り込むようにして死んだ……と思う。

 置物のようである。

 剣で突いてみたが反応が無いし、先ほどよりも楽にサクサクと刺さった。

 授業で触った時はこんな感じだった気がする。


「……」


 周囲を見渡せば、ジェラルがまだ戦っていた。

 ジェリーフェイカーを挟みこむようにしていたので、ジェラルが戦う様子はここからよく見える。

 いつの間にか持っていた丸い盾を構え、何とか触手を捌いている。

 アタシと同じように触手は既に引き戻されているようだった。

 剣のリーチがアタシとは圧倒的に違うために、より深く振り込まなければいけないのだけれど、踏み込むタイミングが掴めないようだ。

 

 そんなジェラルを見守るように、アギトさんが後ろで槍を構えて眺めている。

 視線が合ったので腕を振れば、苦笑するように槍を振り返された。

 アタシの戦いぶりは良く思われなかっただろうと思うと、こちらも苦笑が出てしまう。

 

 確かに強い魔獣ではないのだろうけれど……数多くの魔獣が出た時にジェリーフェイカーが居たら面倒くさいのは想像に容易い。

 他の魔獣を考慮するのかは知らないが、敵の後方から高威力の振り下ろしが来ることを警戒しなければならない。

 最初の一発目の振り下ろしはアタシでも無防備に受ければ死ぬかもしれないと思うほどだ。

 見かけたら、踏み込んでさっさとコアを突き刺す必要があるなと強く感じた。

 あとは、魔獣を前にした時に何時もの動きが出ないように意識する必要がある。

 意識すればする分だけ動きは硬くなってしまのだけれど……ゴブリンのように数をこなせば問題は無いだろう。

 体自体は疲れも何も無いが、精神的に疲れている。

 目の奥が痛い感じ。

 自室に戻って神楽に首の後ろを押して欲しい……。


「でもまぁ、数をこなせる程クエストに行けるかなぁ……」


 この休み期間にそんなジェリーフェイカーが出てくるとは思えない。

 昨日は一回も出会わなかったわけだし。

 

 アランの方に注意を向ければ既に戦闘は終わっていた。

 カイトさんと目が合ったので同じように会釈すれば、ニコリと手を振り返してくれた。アランはこちらには一瞥も向けてこない。

 アランは、カイトさんに何か話しかけつつ、アギトさんの方へと向かっているようだ。

 既にゴブリンの耳も剥ぎ取ったのだろう。

 そういえば、ギルドに倒した証明として部位を提出するなら、ジェリーフェイカーは何を提出すればいいのだろう。

 コアかな。

 ちらりと見るが、あの体を捌いて心臓のようなコアを取り出すとなると……コアは小さくないので袋が一杯になっちゃうと思うんだけど……。


 とりあえず、今はカイトさんに聞くのが良いかもしれない。

 動かないジェリーフェイカーを尻目に、アタシはカイトさんへと小走りに駆けて行った。

 

次の更新は土曜です。

あっさり気味。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ