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第73話 怪盗

「噂ですか?」

「はい。怪盗が出るという……」

「怪、盗……」


 何処かで見たことがあるような気がする……。

 じゃばじゃばとお湯が追加される音が響き出し、アタシの考える唸り声に混じり始め、そして止まる。

 唸り声だけが響く。

 クラリッサは思い出そうとしているアタシを見て待ってくれている。


 街で……見たことがある気がする……そのワードを。

 確かに、単語だけは記憶に残っている。

 えぇっと、あれは何時だろう?

 何とかして記憶をずるずると漁る。

 確か、……そう。確か学園が始まってからしばらく、いや始まった直後。

 入学式があって……寮決めで驚いて……荷物……片付けして、時間的に買い物に行ったんだっけ? いや、コップが無かったのが理由だった気がする。そういえばまだコップは無い。

 それで街にいって……服とか少し買って、壁を見て、ポスターが……!


「あぁ! 見ました! 街で指名手配のポスターを見たことがあります!」

「ひゃ」


 思わず立ち上がってビシリとクラリッサを指し示す。

 いやぁすっきり!

 ゲームでは見かけてないが、怪盗っているんだなーって思った記憶があるよ!

 うんうんと頷くと、目をまん丸にしているクラリッサが見上げている。

 おっと。


「お、オリヴィアさん?」

「あらごめんなさい。それで噂されるほど有名なのですか? その怪盗というのは」

「あ、はい」


 するすると座り、チャポンと音を立てて座る。

 動いた拍子に外れてしまった髪とタオルを直しつつ話を聞く。


「多くの人が知っている、というわけでは無いとは思いますが、魔道具を盗む怪盗として知られていますね」

「何故それだけで有名なのかしら」

「実はこの怪盗、神出鬼没、朝昼晩のどの時間帯でも現れて、そして仮面を付けてるんです。かつ盗みに入る家が貴族ばかりという事で、傲慢と言われる貴族の鼻を折ってくれるということで民衆からは人気が高いそうです。トオコも怪盗が出てくるとよく話題に出してますよ」

「そうだったの」


 おおう。メインストーリー張れるぐらいの設定もりもりの怪盗だ。

 学園外を選んでると選べる隠しキャラクターぐらいのスペックじゃないか。勿論、元々のゲームである『Diamondに恋をする ~ユア・ベスト・パートナー~』で学園外の人間は攻略対象では無い。


 しかし、そんなイケメンそうな怪盗なら外伝としても出ても良さそうだけど、何故出なかったのだろうか。

 学園の生徒には貴族の子も多いだろうし、そこら辺関係だろうか。


「それにしても、義賊のような事をするのね」

「奪った魔道具は何かに使われたとの事も無いですし、誰も殺してないのも人気が高い一因ですね」

「紳士的ですね」

「紳士的……まぁそうですね……?」


なおさら名前の無いモブキャラで終わるのは惜しい存在だ。

 きっとシナリオがあれば、某子供になった名探偵のアニメに出てくる白い怪盗のように、コアな人気を得たに違いない。

 見てみたかった、怪盗シナリオ。神楽の心を奪うんでしょ? 知ってる知ってる。

 思わずそんなシナリオを想像して、お風呂の気持ちよさとあいまってはふぅと声を零す。


「明日、また街に行くから、少し気にしてみることにするわ」

「はは、楽しみが増えたなら嬉しいです」


 ざぱんと立ち上がるとクラリッサも立ち上がった。

 改めてよく見ると、やっぱりちょっと痩せ気味だ。

 思わず動かずにじっと見ていると、クラリッサが気づいて振り返る。

 距離を詰める。

 

「な、なんですか……?」

「……クラリッサはもっとご飯を食べた方が良いと思うわ。あばらが浮いてるの、ちょっと見ていて不安だわ。背が高い方なんだから、相応に脂肪もとらないと」

「ひゃい!?」


 思わず眉をひそめてあばらを撫でる。

 湯船に波紋が幾つも広がった。

 光栄宮学園で授業をしていく以上、普通より体力を使うのだから、今後の事を考えるとエネルギー源は今以上に持っておくべきだ。

 クラリッサは身長に見合った肉付きをしていない。

 触れた指から伝わる感触は柔らかくも骨のごりごり感がある。それにしても綺麗な肌だな、とは思う。

 つまめない……と思ったところで、身もだえながらクラリッサが離れていく。


「お、オリヴィアさんも素敵な肉体ですね!?」

「ありがとう。維持するのは結構大変なのだけれど、前と比べると楽ではあるわ」


 そりゃあんだけ運動していれば腹筋も割れる。腕も細いとは言いがたい。

 運動によって胸が消えなかったのは幸いだ。誇るほどの規模も無いけれど。


「ごめんなさいね。クラリッサはプロポーションが綺麗だわ」

「あありがとうございます……」


 タオルを胸に合わせた姿はとても眼福である。

 ぴったりとくっついて体の凹凸がよく分かる。

 まぁそんなオヤジ臭いことは置いておいて。

 あがりましょ、と目配せしてようやくお互いに湯船を歩き出す。

 しかし、だ。

 やっぱり解せない。

 

「でも、怪盗の彼は何故……」


シナリオに出なかったのか……とは、脳内で言ったが、前半の呟きにクラリッサが反応した。

 

「彼? ……今のところ、目撃情報からして女性らしいですよ?」

「あぁ、なるほど」


 一人、納得がいった。

 メインシナリオで泥棒猫が爆誕しなかった事に感謝した。


次の更新は次の土曜ですね。

自分で設定を見直して、投稿してた奴も見直して、まったく関係無いところに設定ミスがあったので直すなど。

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