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第70話 報酬

 ガタゴトガタゴト揺られて戻り、体臭や戦利品のゴブリンの耳の悪臭に悩まされながら戻った仲介所。

 アギトさんがゴブリン達から剥ぎ取った耳を仲介所の受付嬢さんである織賀(オリガ)さんに渡してしばらく。

 アランにジェラルが呼ばれては、お金が入った袋を持って嬉しそうに戻ってくる。

 その様子をそわそわしながら見ていた。ついでに早くこのテーブルから脱出したい理由があった。

 名前を呼ばれて待ってましたとばかりに飛び出すように受け付けに行けば、笑顔の織賀さんが待っていた。手元にはアラン達と同じように袋が! 手渡しで頂けるお金!


「本日はお疲れ様でした。こちらが本日の報酬となります」


そういって、さっとカウンターの上で押されて渡される。

 金額の方を告げられると、満足感が出てきた。

 

「ありがとうございます……!」


受け取った金額は、日本の危険手当が付くような日雇いのバイトと同じくらいだ。じゃらじゃらと鳴る音がたまらない。

 今はまだ昼を過ぎたぐらいであり、実働時間から考えるとかなりの金額ではある。しかし、初心者向けのクエストとはいえ、がっつり命の危険性があるクエストでこの金額かー、とはちょっぴり思う。

 とはいえ、ようやく奨学金以外で自由に使えるお金が手に入った事になる。ニコニコとしながらお金が入った袋を抱きしめた。凄い! 貨幣の音がする!

 

「初めてのクエスト参加は如何でしたか?」


 感極まって頬ずりしかけたその時、織賀さんの声で人が居たことを思い出す。

 一瞬にして穏やかなご令嬢のような雰囲気に戻すが、袋は不自然に抱きしめている状態だった。織賀さんの視線がそこへ向かいそうだったのを遮るように声を出す。


「はい、アギトさんやカイトさんが常に見ていてくださったので、窮地に陥ることなく、安全に魔森林で活動を行う事が出来ました。それにアドバイスも頂くことが出来て大変助かりました」


まぁ、主にアドバイスを貰っていたのはアランとジェラルだったけれども。戦闘の手ほどきが一番多かった。アタシは魔森林における活動についてのアドバイスを戦闘の時以外に貰っていた。

 今回はゴブリンだけだったからそうなっただけで、ゴブリン以外の魔獣、例えば、ジェリーフェイカーとかが出ていたらアドバイスをがっつりと貰えたと思う。

 魔森林での動きはド素人なのでふんふん頷きながら聞いてたけど、本当はメモに書きたくてしょうがなかった。

 寮に戻ったらメモに残そう。

 

「そうでしたか。それは良かったです。あの方達は後進の育成に目を向けてくれる方なので、今後もよく見かける事になるかと思います。――――オリヴィアさん、今後とも、末永く仲介所との取引をよろしくお願いしますね」

「はい! 今後ともお願いします!」


 そういって勢いよく頭を下げる。

 が。

 ふと思い当たる。


「あ……でも、学園が再開したら頻繁に来られなくなりますね」


この2週間は光栄宮学園の休み期間なのでそりゃ高頻度で来れるとは思うが、その後は不安定だ。

 アタシの不安そうな顔を見た織賀さんが優しく笑う。

 

「ふふ。それでも構いませんよ。将来、ずっとずっと長い期間がありますから。貴女たちには」

「なら、卒業してからは入り浸る事になりそうです」


どうせお店で働くような技能は無いのだ。

 戦える能力があるなら、死なないように立ち回って生き続けるしかない。でもなーハンターの平均寿命って短そう。

 

「はい。その時をお待ちしております。今は、光栄宮学園で幅広く知識を習得なさってください。そして、今はそれを時々で良いのでクエストに参加し、活かして頂ければと思います」

「はい!」


 そういって別れる。

 今後とも末永く、という言葉は、今更ながら長く生きていて欲しい、という意味なのかもしれないなと、歩きながら思った。


 で。

 テーブルに戻ると、そこにはアギトさんにカイトさん、アランにジェラルが待っていた。

 アランもジェラルも、疲れた様子ではあるが手元の袋に目を落として嬉しそうにしている。

 

「これで全員金は受け取ったな! じゃあお前らに飯を奢ってやる!」

「といっても、ハンターがそのまま直でいけるようなお店というと数は無いけれどね」


とアギトさんが元気よく言い、カイトさんが店舗よく話を出す。

 が、流石に乙女しては無視できない事があったので割り込む。

 

「いえ、すみませんが私は帰らせて頂きます」

「はぁ!?」

 

 ダン、と机を叩いて立ち上がる人物。無論、アランくんである。


「お前、そりゃねえだろ! せっかくアギトさんが誘ってんだぞ!」


気持ちは分からなく無いのだけれど……。

 スン、と鼻を動かして顔を顰める。うん、ダメだこりゃ。

 

「いえ、女性としては汗臭い状態で参加するのはちょっと……。匂いを嗅がれるのは恥ずかしいのでご勘弁ください」

「……」


 アタシがそういうと、金魚のようにぱくぱくと口を動かしたアランくんは、徐々に顔を真っ赤にしてそのままストン、と席に座ってしまった。

 ジェラルはくんくんと自分の服を嗅いで首を傾げている。

 アギトさんもカイトさんも匂いを嗅いでは首を傾けた。

 分かるか? いやわからないな、というやりとりが飛ぶ。

 

 その様子を見ながら、アタシは一歩、二歩とテーブルから後ずさる。

 そう、テーブルから離れたかったのは、体臭がキツかったからだ!

 ちょっと男子無頓着過ぎるわ!


「また後日お会いしたら、お願いしますね! 本日は本当にありがとうございました! では!」


 踵を返すと、早足で抜ける。

 頭に描かれた目指すべき箇所は、公衆浴場だった。


 その後、公衆浴場で体を綺麗にした後、替えの服が無い事に気づき、絶望しながら匂う服を再び着て、馬車に乗って寮に戻る羽目になったのだが、その時はちょっぴり涙目だったかもしれない。

 寮に戻ったら、また大浴場に行こうと決意した。

次の更新は次の土曜です。

難産が続く……という感じで進めております。

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