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第47話 異変x2


「ううむ……」


 自室で一人、低く唸る。

 登校前の時間で、普通だったら一緒に準備をしていたはずなのだけれど、ここ2週間ぐらい、朝起きた時には既に神楽が居ない事が増えた。

 

 神楽が変だ。

 いや、確かに、自身の曲げられない想いを掛けた勝負が差し迫っているのだ、おかしくもなる。

 けれど、神楽が変になったハッキリとした時期はわかっている。


「クラリッサ達と街に行って、最初の平日が過ぎたとき」


 しゅるしゅると掛けてあったネクタイを結ぶと、ファンタジー漂う上着を纏う。

 

 クラリッサ達と出掛けた次の日の休みも、少なくとも神楽は訓練はしていた。朝起きたときには既におらず、帰ってきてもへとへとで、頑張りすぎているきらいがあるから気にはなっていたけれど、まだ予想の範囲内だった。

 

 問題は休みが明けて、平日が始まった……その日の夜。

 授業が終わり、最近は一人にも慣れつつある自室で、魔法の授業の復習(未だに切っ掛けが掴めていない)をしつつくつろいでいた時だった。

 

「お帰り……?」

「ただいま、です」


 帰ってきた神楽を見て、思わず眉をひそめる。

 何時もより思い詰めた表情と、暗い声。


「何かあったの?」

「あはは……ご心配をお掛けしてすみません、オリヴィアさん。顔に出てましたか?」

「顔どころか、声にも出てるけど」


 帰ってきた神楽の様子は今までとまったく違っていたのには驚いた。

 疲れた様子は何時もの事だったけれども、深刻そうな、何か届かない物を目指しているような、そんな思い詰めた顔をしていたから。


「何か、悩み事があるなら聞くけれど。話すだけでも楽になるっていうし」

「……では、整理が付いたら、聞いて貰えますか?」

「うん。待ってるよ」


 以降は、アタシが話し掛けてもどこか上の空か、何か悩んでいるか、話をしようとして遠慮したように二言三言で終わってしまうような、何とももどかしい日々が始まったのだ。


「んー。決闘の準備そのものは順調、って感じなんだけどねー」


 神楽の戦闘能力が決闘前にどうなるのかという事については、事前にゼン様とフィオに聞いているし、クラスの模擬戦の授業で見てもいる。ゼン様はとても複雑そうに、ゲームには無かった(!)喜んで良いのか苦しめば良いのかわからなような表情で、「筋は、悪く、無い……」と仰っていた。

 正直言えば、ここまで成長するのかと驚くぐらいの成長率だ。

 担任のメリオトロイ先生も見違えるほどと言っていたし、アタシもそう思う。

 

 学園に来る前では剣を握った事が無いし、原作設定上も、シナリオが進んだ先で剣を持つ事は授業以外で無いという神楽だけれど、今の腕前は間違いなく入学前から修練を積んでいた子に近づいている。

 少なくともこの学園に入ってから剣を握った子ではもう神楽に太刀打ち出来る子は女子どころか男子にもいない。

 ゼン様とフィオに重点して鍛えられている様は既に知られており、それに嫉妬した女子達にややギスギスとした雰囲気をまたしても向けられているものの、力を持ちつつ神楽には手を出しあぐねているのは予想外の結果だったけど。


 神楽の魔法に関しては、原作よりおや? と思う程度に変化が出ている。

 魔法には基礎魔法と特殊な遺伝魔法がある。神楽が物語の渦中に巻き込まれるのは神楽に発現するとある遺伝魔法の所為なのだけれど、この件に関しては特に変化は見られない。もし現時点で何か変化が見られたら……シナリオが大幅に変わってしまって、この国の行く末がどうなるかわからない。

 

 変化が見えるのは基礎魔法だ。既に開花の兆しが見えている。

 神楽は原作の設定でも魔法に関しては1、2ヶ月で兆しが見え、半年の段階――普通は一年未満ぐらいかかる――で使い始める。時期的にも、現時点で基礎魔法が使える兆しが見えるのは既定路線……だが、でもまさか発現手前まで行くとは。

 魔法の実技の授業の最中、先生からアドバイスを受けながら神楽の手が一瞬光った時はかなりビックリした。あの瞬間だけは、神楽も日頃の思い詰めた表情ではなくとても嬉しそうで、ぴょんぴょん跳びはねてオリヴィアさん見ました!? と言ってきてくれたのが可愛かったのだけれど。


「……考えても、あと数日で結果が出る、か。その時には話してくれるのかな」


 荷物を手に取り、学園へと向かった。



 

side - フィオレンティーノ・ジャイルズ


「ここ最近は魔獣の襲撃が無いね」


 とフィオが呟けば、近くに居た太陽守護のメンバーがほっとしたように答える。

 

「はい。何だったんですかね、あれは」

「一過性のものならいいんだけどね。今日時点で、太陽守護のメンバー全員が負傷から復帰してくれたから良かったよ。実戦を経た新人が多くなったし、層が厚くなったってのは良いことだ」


 太陽守護が使用している部屋――歴代のメンバーが学園長から勝ち取ったのが脈々と続いている――で、代表が座るべき席に座りながらフィオと数名の雑務にかり出された学生達が話し合ったり、ホワイトボードの前で訓練や見回りスケジュールを考えていた。

 主要なメンバーが集まる部屋で、メンバー全員を集めての大規模な話し合いをするのは不可能だけれど、太陽守護の運営をするに当たって必要な事は、全てこの部屋で決めていた。

 フィオは、光栄宮学園に入る前から事前に太陽守護のメンバーとやりとりやユピ神国の所属派閥の後ろ盾を得て、かつ実力を示してトップの座にいる。

 ふんぞり返ってえらそうな態度を1年次のフィオが取っていても、誰も指摘してくる人はここにはいない。


「思ったんだけどさ、入学式にも魔獣の襲撃があったし、何時もこの時期はこんなもんなの? この学園というか、この国というか」


 フィオが2年次と3年次の太陽守護のメンバーに水を向ける。


「そういうのは……無かったと思いますが。ですよね? 先輩」

「そうだな。俺らもこの時期にこんなドタバタしていた、なんて事は無かったぜ」

「あ、っそう……。んー。卒業していった先輩達とかに聞いてみたらあったりするのかなぁ……」


 そう呟けば、先ほどの2年次のメンバーが書類をフォルダに分けながらも答える。

 

「あの、それでしたら、こっちも調べてみますね。研究所の方々に聞いてみるのもアリかもしれませんね」

「ん、お願い。でも待てよ……。あまり収穫は無い気がする。そんな事は過去には無かった、という裏付けを取るつもりでお願い。思い出して欲しいんだけど、保険医の人達、何時にもまして負傷する学生が多い……みたいな顔してたじゃん? アレ、多分普段は無いことだからだと思うよ」

「わかりました」


 魔獣が学園に近づくのが増えたのは、そうえば何時からだろうか。少なくとも、入学式には起きている以上、その時点で魔獣が増えていたのだと思うのだけれど。

 あの時は月光騎士のメンバーが派手に立ち回った記憶が強い。


「……ちょっと、追加でさ、入学式前の魔獣被害について、調べておいてよ」


 と、追加で依頼した。

 月光騎士達、つまり香月院ゼンが入学式の魔獣襲撃について、確か気にしていたなと、脳内で思い出して。



次は引き続き同じく土曜日投稿です。

物語よもっと動けと念じながら書いてます。

もうちょい書きたいところがあったのですが、時間切りで作成しているので投稿です。

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