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第39話 訓練をする人々4

「オリヴィアさんはこの後どうされるんですか?」

「アタシは街へと向かう。日常品を買いにね。神楽は?」

「休憩したら、今日は練習を続けたいので一日中学園でしょうか」

「……あまり無理はしないでよ。そういうのは、知らないうちに体を壊すんだから」

「心配ありがとうございます。でも、今のところは大丈夫そうです。無理を感じたらちゃんと休みますから」


 大丈夫だろうか、と心配になる。

 急激に神楽の精神的ストレスが増えていっているのではという不安感が拭えない。

 真面目に背負いこみすぎなければ良いのだけれど。だいたい、大丈夫と言っている人ほど大丈夫のラインを下げてしまうものだ。


「ジャイルズ。だから言ったんだ。お前にはまだ早い、とな」

「五月蠅い! っく、何だってんだよ……!」


 二人の声に神楽と共に視線を移せば、放心状態だったフィオがふらつきながらも立ち上がっていた。

 ゼン様は完全に見下し顔の良い笑顔で笑っている。

 フィオが頭を振って気分を変えると、こちらをキッと睨んできたかと思うと指を指される。


「あぁもう! 何なんだよ本当にお前は! 全っ然、香月院の野郎と戦った時と違うじゃん!? 何? 実力でも隠してたわけ!?」

「相性が悪いだけです。それに実力に関しては特には隠しているわけではありませんわ――――もっとも、あれが全てではありませんが」

「ッチ! ……本当にいい性格してるよ、君は!」

 

 涼しい顔をして返すと頭をがしがしと掻くフィオの姿は、低身長と相まってとてもとても子供っぽい。

 ふはは、これで以前の事は水に流してやろう、と内心思っている事は表に出さずにほほほと笑う。

 その姿を見て一瞬だけびくりとフィオが震えたが、話を続けてくる。

 

「本当に太陽守護に入るつもりは無いのか? その実力があれば、うちとしてはとても助かる」


 悔しそうなのは隠そうとしていないが、この状況でまた誘うとは。

 原作ゲームではそう思わなかったが、思ってる以上に太陽守護を気に入っているのかもしれない。

 ただの腹黒ショタでは流石に無いか。

 

「前告げた通りですわ」

「そうか」


 あっさりと納得した……わけではないが、前回も断ったからか、すぐに切り上げた。


「しかし、凄い強さだね、メルベリさんは。どうしたらそんなに強くなるんだい?」

「小さい頃から鍛えていましたの。たまたま、こっち方面には才能があったのでしょう」


 傍に居る神楽を気にしつつ、片手で軽く剣を振る。

 自前の剣よりかなり軽く、やや心許ないと感じてしまう。

 アタシが剣技において強い事は確かな事だ。ここで才能が無いなどとは、他の人を思うと言ってはいけないだろう。


「魔法も同じくらい使えたら、と思いますわ」

「それで魔法も強かったら、いよいよ手におえないから勘弁してよ」


 僕の立つ瀬が無くなる、とボヤく。強気なフィオにしてはなんだか珍しくしおらしい。ちょっとだけ、剣技でぼこぼこにし過ぎたのかもしれない。

 

「オリヴィアさんだったら、魔法もすぐ覚えますよ!」

「そうなったら、今度は制限無しで戦いたいものだな」

「……その時は、今度こそ全力でお相手出来るよう、頑張らせて頂きますわ」

「楽しみにしている」


 軽く笑うゼン様の姿は惚れ惚れするけれど、何時か全力で剣を振るえる日が来るのだろうか……。


「神楽の方がきっと魔法は先に使える様になりますわ。私よりよっぽど適性が高いもの」

「そうでしょうか? まだ、感覚を全然つかめてなくて。でも、そういわれたからには頑張って早く使える様になります!」


 フンス! とやる気を出す。その様が可愛くて頭を撫でれば、気持ちよさそうに目を閉じてくるので余計に可愛い。主人公の名は伊達ではないのだ、という言葉が脳裏をよぎる。

 

「神楽、もしよかったら魔法に関してもオレが手伝おう」

「本当ですか!? あ、でも……剣も見て頂いて、魔法に関しても見て頂くのは申し訳ないと思います……」

「神楽なら、幾らでも迷惑を掛けてくれてもいい。君の為なら……「まぁ、僕も手伝ってやるよ」……お前は引っ込んでいろ……!」

「あの、お二人とも、喧嘩はやめてください……!」


 俄に騒がしくなり始めた。腕を組んで後方理解者面でそれを眺める。きっと原作ゲームでこのシーンがあれば、ギラギラと視線をぶつけあう二人に向かって神楽が走っていくスチルが手に入るに違いない。

 実に良い……。

 うんうんと頷きながらふと視線を感じて入り口を見る。

 

 そこには明らかに場の雰囲気にそぐわない、着飾ったような服装の学生達がこちらを見ていた。いや、正確には神楽を見ている……と思う。

 何処となく、笑っているような雰囲気を醸し出していたが、こちらが見ていた事に気が付くと、不敵な笑みを浮かべて去っていった。


「メルベリさんも気付いたんだ?」

「……ジャイルズさん」


 いつの間にか、フィオがこちらに来ていた。神楽の方をちらりと見てみれば、ゼン様が氷の魔法剣を出している。どうやら魔法の勉強にシフトしたようだ。


「アイツら、ファクトメンバーだよ」

「それが何故こちらを見ていたのでしょう?」

「さぁね。ただ、この調子だと神楽が決闘を行うまでに何かありそうだ」

「……」

「心配性だね、メルベリさんは。しばらくはルカちゃんの傍に居るだけで色々と楽しめそうだ。……おっと、こちらを睨まないでくれよ、僕は何もしてない」


 フィオルートを思えば、神楽に関してそう悪い事はしないと知っていつつも、知らなければ敵対してしまいそうな軽口は何なのかと嘆息してしまう。


「まぁ彼らは気になりますが。それよりも神楽です。別にジャイルズさんだけに頼むわけではありませんが、あまり神楽が戦いに集中しすぎてしまわないように気にしていただけませんか?」

「つまり、ルカちゃんが潰れるんじゃないかと思ってるわけだ?」

「そうです。彼女は戦い向きの性格ではありません。適度に戦い以外の休息を入れてあげてください」


 聞き入れてくれれば良いのだけれど、と思いながら喋る。

 今ではなくても、何処かでゼン様にもお声を掛けておこう。


「まぁいいよ。借りにしておく」

「お願いします」


 ん、とフィオが呟くと、手をひらひらとさせながら神楽達へと歩いて行った。フィオとの話はこれで終わりだという事なのだろう。

 借りを作るのは少し嫌だけれど、これも神楽の為だ。


「それじゃ神楽、私は戻るから。ほどほどにするのよ」

「はいっ! それではまた!」


 最後に声を掛けると、神楽は楽しそうな笑顔で返事をしてくれたのだった。

次の更新は次の土曜です。

割と難産でした。タイトルもぱっと思いつかず、とりあえずナンバリング更新で。

次は街に行く前に、例の子と出会うことに……?

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