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第32話 その後の話

「オリヴィアさん凄い! メリオトロイ先生に勝っちゃうなんて!」

「ほんとほんと! メリっちやるじゃん!」

「わっと」


 勝った後、周囲の静けさに視線を向けようとしたところで弾けるような声と共に神楽と長月さんが勢いよく飛び込んできた。

 思わずたたらを踏み、勢いを殺すように回転するも体がフラつく。こういう突発的なことに対して、上手く裁けるようになりたい。

 二人分の体重を制御……しようとしたのだけれど。


「ぐ」


 と声が漏れる程度には首に負担が!

 間違いなく戦闘では使わない筋肉を酷使しているという感覚!

 二人分の体重がきつい! それに立ち上がりかけているメリオトロイ先生にぶつかりそうになって慌てて動くから余計に辛い!

 千鳥足になりながらも二人を落とすまいと力を入れる。

 しかし、きゃーとかわーとか笑いながら回っている二人を見て、一瞬だけ加速を付けて吹き飛ばしても良さそう……と思ったのはしょうが無いと思う。

 流石に吹き飛ばさずに数歩よちよち動いて勢いを殺しきり、抱きとめるように地面におろすと、遠くからパタパタと駆け寄ってくるのはクラリッサさんだ。ポニーテールが跳ねるように動いている。

 こちらのすぐ側に来ると先ほどまで抱きついていた二人に向かう。


「もう! 二人とも! 危ないでしょ!」

「はい、ごめんなさい」

「ごめんね!」


 一瞬だけ身構えてしまったものの、神楽と長月さんを叱っただけのようだった。

 方や申し訳なさそうに、方や元気よくこちらに謝ってくるので別に気にしてないと小さく笑って返す。

 それよりも、一瞬でも身構えたのはクラリッサさんが飛び込んでくるのかと思ってしまったのだ。


「まったく! メルベリさんはさっきまで先生と戦ってたのよ! 疲れてるのに、二人してもう!」

「まぁまぁ」


 ふん、という感じになっているクラリッサの後ろからのんびりやってきたショートヘアの子が、剣を肩に引っかけてやってくる。

 

「何ぷりぷりしてるのさー。まさかクラリッサも飛び込みたかった?」

「……! マリアンネ! そ、そんなわけないでしょ!」


 まさしく、がー! っという感じに口を開くクラリッサさん。

 長月さんがそこに近づき何かを喋ると、クラリッサが剣を構えてマリアンネさんがどうどうと落ち着かせながらも構え始める。

 この様子を見るにクラリッサさんは、長月さんとマリアンネさんの三人の中ではおちょくられ要因なのだろう。

 本編に出ては来なかったけれど、出てきていたらきっと面白かったに違いない。ただ、ちょっとゲームの作風が乱れていたかも知れないけれど。


 そんな三人には近づかず、申し訳なさそうに神楽が言う。


「あの、すみませんでした。お疲れでしたのに、私、飛び込んじゃって」

「そうね……ふふ、流石に二人分の体重は大変だったわ」

「す、すみません……」

「神楽一人なら問題無かった、けどね?」

「! もう、冗談言うくらいには元気なんですねっ」


 どうする? とばかりに両手を広げると赤くなった神楽に怒られてしまった。うん、この子には幸せになって欲しいという気持ちが強く出てくる。

 

「よし、っと。じゃぁこれで一応クラスメイト全員とは模擬戦をしたのかな」


 その声に振り返る。

 膝についた汚れを両手で払い、うーんと伸びをするメリオトロイ先生。

 念入りに足や、手首と肩の関節を確認している。

 傍から見る限りでは何処も痛めていないように見える。


「これからどうなさるんです?」

「そうだね。もうみんな、普通に練習しているから、間を歩き回って指導していくよ。オリヴィアさんも男子学生とかの相手をしてもらっていいかな」

「はい。喜んで」

「ありがとう。あ、ただ、叩き潰しちゃダメだからね?」

「それくらい私も分かってます」


 こちらが肩を竦めると、うんと頷いて見回りに行った。


「神楽はどうするのかしら?」

「私は少し休んでから――さんと練習出来ないか聞いてみます」


 神楽が告げた名前には聞き覚えがさっぱり無かったけれど、視線を向けた先に居る女子生徒はなるほど、確かに多少はやったことがあるという感じはした。

 身長も神楽より高く、運動神経もそのものも神楽よりよっぽどよさそうだ。

 全く何も知らない人とやりあってもあまり成果は無いと考えたのかもしれない。

 本当ならアタシが直々に教えてあげたいけれど……ここは言葉を掛けるだけに留める。

 

「そう。頑張ってね」

「はい! オリヴィアさんも!」


 少し休むと言いつつも、神楽は小走りで一人の女子生徒に向かっていく。 授業の一環でランニングしていた時はかなりへばっていたので、あの様子では今日の午後は寝てしまわないだろうかと心配になる。というより、昼前には力尽きているんじゃないだろうか。


 が、まぁ。


「任されたからには、やるかねぇ」


 ぽつりと呟くと、派手に――派手さだけがある――やりあっている男子学生二人組に近づく。こちらに気づいて片方がぎょっとして剣を止めて、その隙を突かれて相手に肩を思いっきり斬られていた。

 見る度にひやひやするが、「痛ぇ!」と声を上げるだけで留まっているのは常識が滅茶苦茶になるようで中々酷い。

 それはそれとして軽く声を掛ける。


「中々良い動きをしていますね」

「え、あ……そ、そうですか……?」

「はい。ただ、ちょっと気になるところがあるので教えて差し上げようと思いまして」

「え……!」

「ありがとうございます! オリヴィアさんに手取り足取り教えて貰えるなんて!」

 

 ちょっと複雑そうに、それでいて嬉しそうな表情になる男子学生二人組。

 女性に教えて貰うのはやっぱり苦い感じがするか。

 あと、君らは見かけ上の歳がアタシと近そうだし、女子生徒に話し掛けられたら嬉しくなるもんかもしれないが、後悔はしないでくれよ。


「手取り足取り教えたい……ところなんですが……生憎と()()で教えることしか知らないので……」

「え……」

 

 剣をヒュンと音がなるように数度軽く振る。調子は悪くない。

 それだけでどういう風に教えて貰うのか察したのだろう、明らかに顔色が悪くなっていく両名。

 二回目のえは、明らかに腰が引けている感じがしたが、これも授業なのでしょうがない。


「では、まずは貴方。構えてみてください。こちらから仕掛けますので、凌いでみてください。その間に色々と指摘をしてみようと思います」


 一人2分ぐらいでやるかと思いつつ、微笑みを付けてそういった。



 アタシが男子学生とやり始めるその時、別のクラスがこの模擬戦場に来ていたことには、この瞬間にはまだ気がついていなかった。

次の投稿は次の土曜日です。

人物一覧と世界観設定をそろそろ投稿しようかなと思います。私が分かりません(遠い目

あとブックマークありがとうございます。ぼちぼち増えてる……と思いながら数字を見てます。

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