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第241話 意外な集まり

主人公視点に戻ります

「っく……!」


 奥歯を噛みしめ、魔森林を駆け抜ける。

 行くべき場所には困らない。

 なぜなら魔獣が動いた跡が盛大に残っている。

 あの大群だ。痕跡を見かけない方がおかしい。

 倒れた木々、なぎ倒された草。くっきりと残された破壊痕を追跡する。

 しかし。


「追いかけて、それでアタシにどうしろって……!」


 神楽を盾にされて動けなかった以上、追いついたところで何も出来ないじゃないか。

 今度こそ追いついたタイミングで殺されかねない。

 アイツらは死体になった神楽でも有効活用出来る。

 神楽が死んでしまうと考えただけで力が抜けそうになる。


 だが、このまま見過ごせば大変な事になる。

 奪われた神楽が本当に何もされずに戻ってくるという事も無い以上、追って何とかしなくちゃいけない。


 神楽を人質にされ、彼らが去った後、どれくらい佇んでいただろうか。

 静かになったあの場所で、追いかける事と追いかけた後の事を考えると自己矛盾を引き起こし、解決出来ず、それでいて、いても立っても居られずに走り出していた。


 追いかけて走っても、音はもう何も聞こえなかった。

 もしかしたらもう十分先へと進んでしまったのかもしれない。

 他の魔獣達の群れが横切っていたかもしれない。

 間違えた道に逸れたのかもしれない。

 あれだけわかりやすい痕跡と思っていた道が、急にぐにゃぐにゃと曲がり出したような錯覚さえ感じる。

 普通なら笑い飛ばすそんな不安が胸中を埋め尽くす。


 ふと目の前に大きな空けた道が見えた。

 魔森林を横断した結果、開拓者達が作った道へと飛び出したのだろう。

 その後はどこにいったのか。向こう側か。それとも左右に分かれていったのか。

 道路へ向けて飛び出し――――


「オリヴィアさん!?」

「メルベリ!?」

「へ?」

 

 二種類の声を聞いて立ち止まった。

 何処か聞き覚えのある声。

 顔を向けると、久しぶりとなる顔ぶれが揃っていた。


「クラリッサ、アラン……久しぶり。どうしてこんなところに?」


 さらによく見ればジェラルもいるし……。


「メルベリ様!」

「オリヴィアお姉様!」


 別方向から走って来たのはクラウゼと月影だ。

 見知った顔。見知ったキャラクターと関係性のわからない集まり。

 よく知らないのは馬車付近で立ち止まったままの男性開拓者っぽい人だけである。

 なんだ人選は。

 びっくりするほどまとまりが無い。

 そう思っている間に距離を詰められる。


「今まで何処にいらっしゃったんですかオリヴィアさん!」

「どうしてこんな所にお姉様が」

「メルベリ様、ここにアイツが……!」

「ちょ、ちょっとごめんなさい、いっぺんに言われても分からないから……」


 一瞬にしてクラリッサ、クラウゼ、月影に取り囲まれる。

 抱きつかれるかと思ったが、直前、全員がぴたりと息を合わせたかのように躊躇したのでそれはなかった。

 アランは、飛び出してきたクラリッサに弾き飛ばされるかのようによろめいていた。


「私は……神楽に会うためにちょっとね」


 そう言うと全員がまた詰め寄る。

 神楽! と声を漏らす。

 

「ルカですね!? それなら、さっきガスト・レナードが誘拐してたんですっ! あいつ、魔獣をいっぱい引き連れて、道を横断してて!」

「月影さんが襲い掛かりまして。戦いになりましたわ。でも、私達は結経、彼らを止める事が出来なかった……」

「彼らは、あの先へ向かいましたわ!」


 順番に口を開いたので状況がわかりやすい。

 結構時間が経ってしまったと後悔していたのだけれど、どうやら彼女達と交戦して足止めされていたらしい。

 ……追いついた後の事はまた後で考えるが、まだ、十分に追いつけるという事か。


 方角を教えて貰うと、どうやらまた魔森林の中を突っ切っているようだ。


「ありがとう! これで迷わなくて済みそう! 私も追っていたから助かるわ」

「直ぐに向かうんですか?」

「えぇ。ゆっくりとしていたら、また見失いかねないから」

「あ、あの! メルベリ様!」

「様は止めて欲しいかしら……」


 駆け出そうとする前に、月影が神妙な顔つきで言う。

 

「ガスト・レナードの傍には、一切戦いに参加しなかった、奇妙な男がおりました。護衛と思われる彼らは、その奇妙な男をちらちらと見ていたので、本命の戦力かもしれません。メルベリ様が後れを取るとは思いませんが……」


 誰だろう。

 ガスト・レナードそのものは力は無いし、周辺の人間も極端に強いようには見えなかったから、切り札的な戦力を持っているということだろうか。


「……ありがとう。それは知らなかったわ。気を付けておく。貴方達も、どうしてここにいるのかわからないけれど、早急に移動した方が良いわ」

「……わかりました。私達はクエスト仲介所の書類を届けに移動している最中でした。オリヴィアさんも、どうかお気をつけて」


どうやら、光栄宮学園から人がいっぱい出ているらしい。

 こんな魔森林の奥地での活動だなんて、危険な。

 学生も動員するほど、切羽詰まった状況なのだろう。

 

「わ、私は、メルベリ様の後を――――!」

「やめなさい!」


 月影が飛び出ようとしたところを、クラウゼが引き留める。

 彼女の顔を見て口を開く。

 

「月影。貴女は彼女達の護衛みたいなものじゃないのかしら。しっかり守ってあげなさい」

「……はい」


 戦力的に彼女がいる・いないではこの先の安全は相当違うはずだ。

 クエスト仲介所の人達が人選したのであればそれに従った方が間違い無くいい。

 それに、私一人なら、魔獣達と相性は悪くても生き残れはする。彼女は正直足手まといになりかねない。

 月影にそう言ってから走り出した。


「メルベリ! ちゃんと帰ってこい!」

「ま、またクエスト一緒にやろう……!」


 後方から聞こえてきた、アランとジェラルの声。

 クエストを一緒にしていた時の軽さで、ちらっと後方を見てから、片手を上げて応えると、ガスト・レナードの後を再び追いかけるのであった。

 

日曜目標でしたがアウトですね。

次の更新予定は土曜・日曜予定となります。


追記:平日が厳しいスパンに入りました……

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