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第200話 いざ中央へ

 ユピ神国の中央へと向かう馬車の中。

 アタシとジャイルズ、ピィラの三名だけが車内に居る。

 アタシ達を呼びに来た中央からの使者は前の馬車に乗っている。

 中央からの使者は、屋敷に唐突にやってきては禄に準備もさせずに数十分後に出る旨を告げられたあたり、中央とフィオとの間にある大きな権力差を感じる。これでもフィオは重宝されてるはずなんだけど。

 

 当たり前だが、装備を何も持たないで屋敷を出たのでかなり心細い。きっとピィラが何処かに武装を隠しているはずだから、帰りに借りたいところだ。素手のアタシの実力はゴミカスである。

 

 車内の窓は布で隠されている。

 最初はフィオが色々喋っていたが、今はあくびをして目を瞑っている。


 別に気まずいとは思わないが、誰も喋らない空気の中、そっと布を捲って外を見る。

 

 早歩きぐらいの速度で流れていく街並み。

 見える人々の様子は……良いものとは思えない。暗い、慌ただしい、落ち着かないといった雰囲気が膜となって街に覆い被さっている。そんな感想が出る。


 魔獣の異常行動と思われる報告から一週間と少しで、ヨルム王国に起きている危機的情報が何度も何度も、民間の間で更新されていった。その結果がこれだ。魔獣の異常進行、魔獣の大量出現。そういった言説が広まっているようだった。

 

 過去、この国に居た際は別に街の様子をじっくりと見ることが出来たかというとそんな事は無かったけれど、明らかに大量の積み荷を持つ馬車、または徒歩で移動していく人達が多い気がする。

 概ね全員が向かう方向の先の先にある、この国の端にある大門の一つはウィシュト共和国へと繋がっている。

 逆に、ヨルム王国へと向かっていく馬車の長い長い列もある。商人達が商魂逞しく商品を運んでいるように見えた。

 

 ウィシュト共和国はヨルム王国とは正反対にある、海と面した国だ。

 この世界の海産物は全てこの国から輸出されたものである。

 海産物はこの世界では多くの人が好んでおり、一般に流通している。水属性の魔法使いを高い金で雇うか、大金で魔道具を開発してでも流通に乗せ、そして元が回収出来る程度には。

 個人で見れば広い世界ではあるが、転生前の世界と比べれば人類が生存できる範囲には雲泥の差がある。無意識的に逼塞感を感じているのかは知らない――そういう設定があった記憶は無い――が、海という、常に解放されていて魔獣の脅威があまり無い領域から得られる恵みというのは、四季によって得られる物が流転し、人々の食の楽しみに多大な影響を与えているんだろうなと、馬車の中で勝手に思った。

 恐らく向こうの宿泊業や観光業者は大儲け状態だろう。


 とはいえ、ヨルム王国が魔獣の波に飲まれてしまえば例えこの人類圏の端へ逃げても意味が無いと思う。

 対魔獣の実力がもっとも高い人が集まっている国はヨルム王国をおいて他にない。

 つまり、あの国が突破されれば全て終わりである。他の国にこれ以上の練度を持った集団はいないのであとは魔獣に蹂躙されるだけだ。

 

 ジャイルズの屋敷は自主的に軟禁状態みたいな物だったが、外がこの有り様ならば、まだ屋敷内に居た方が明るい雰囲気になれるだろう。

 

「どうですか? 街の様子は」

「暗いわね。みんな何処かに逃げようとしている」

「まぁそうなるよねー」


 やはりというべきか、世界の矯正力という物があるのかは知らないが、明らかに早いタイミングで本来はもう少し後に起こるはずのイベントが進んでいる。

 噂通り、ヨルム王国への大規模な魔獣襲撃である。

 どのルートのイベントでも、バッドエンド以外は神楽の遺伝魔法を行使――魔獣を大規模に操る――する事でこの危機を越える事になる。

 あるエンドでは成長した自分の力で、あるエンドでは魔道具の力を借りて、あるエンドでは人の補助を得て。


 再び静かになりかけた馬車の中で、ピィラの声がぽつりと聞こえる。

 

「今更ですが、私もご一緒しても良かったのでしょうか……明らかに部外者だと思うのですが……」

「向こうの使者からは問題無いって言われてるから別にいいでしょ」


 問題無いというか。

 

「それはジャイルズさんが、さもジャイルズ家の面子だと勘違いされるような振る舞いをしたからでしょう」

「嘘は言ってなかったよ、僕は」

「本当の事も言ってませんでしたけどね」


 護衛も兼ねた召使いだと思われている。

 武器を持ち込む事は出来ないという話があっても、単独で向かうのは避けたいという主張が通ったというか、別に当人以外の召使いや格闘戦の心得がある護衛が付きそう事は当たり前の事であるといった雰囲気だった。ピィラはともかく、アタシは欠片も素手での格闘戦なんて出来ないので形だけである。

 

 一言二言、使者とフィオが言葉を交わしただけで、アタシ達はフィオとの同行が許可されたのだった。

 使者の会話で、その場でさっと騙して同行を許可させる胆力は純粋に流石攻略キャラと感心してしまった。

 

 ユピ神国の中央上層部といえば、作中でもっとも強力な武力集団を持っていると言われる。

 向かった先から帰還できるだろうか。

 原作の展開通りならば問題ないはずだけれど、それはそれとして緊張はするのだった。

 


 

次の更新は引き続き土曜・日曜の深夜目標です。


追記:再び月曜にずれ込みます

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