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第193話 お疲れ様でした

 フィオにナチュラルに通されたけど、どう見ても二人で一部屋だった。

 ベッドは別々である。

 少しだけ考えていると、控えめなノックを貰う。

 扉を開ければ、少しだけ年齢が高そうなメイドさんがワゴン車をしずしずと運んできた。


「お疲れのようですね。こちらに水とお菓子を用意致しました。よろしければお召し上がりください」

「ありがとうございます」

 

 水差しやクッキーが載ったワゴンは部屋に置いていって貰う。

 控えめな笑顔は、当初思った年齢よりも若く見えた。

 おお、これは生粋の実力派のメイドさんだ……という謎の感想を抱く。

 

 ついでに部屋をピィラと分けて貰おうかと思ったが……ピィラが気にしていなさそうだし、得に必要性も無いか。

 上げかけた手を、やや気怠く降ろした。

 一礼をした後、メイドさんは去って行く。

 

「まぁいいか」

「何か?」

「いや、何でも無い」


 部屋の中にある画や置物を細かくチェックしているピィラが不思議そうに見てくるので軽く返事をして荷物を置くと、どっと疲れが押し寄せてくる。

 立ちっぱ無しはちょっと嫌だな、と思う程度だ。


「今後はフィオさんの指示の元で動く事に?」

「まぁ、そうなるかなぁ……」

「長くここに居る事になるのでしょうか」

「それは無いんじゃないかな。多分、わりかし速くヨルム王国に戻る事になるよ」


 言い切ると、不思議そうに見てくる。

 

「それは何故?」

「魔獣が魔森林から溢れてくるからねぇ」

「……確かに、噂は軽く聞いていますが、一時的に増えているだけでは」

「収まらないよ。森を挟んでてもヨルム王国に一番近いのはユピ神国だし、多分ここぞとばかりに恩を売って乗り込むと思うよ」

「まるで見て来たようですね」


 見てきたからねぇとは言わない。

 

 ここら辺の情報収集は、雇い主であるライリー=ローレンはあまりしていないのだろう。

 フィオ当たりは既に動いていそうだ。

 

 そんな中、ピィラが指で、盗聴を警戒しなくても良いので? と聞いてくるので、少し考えた後、まぁいいんじゃない? と雑に返した。


「聞かれてても大丈夫な事しか言わないし、ジャイルズの方が良く知ってると思う……ふぁ」

「……部屋には見た感じ、そういう魔道具は無さそうですね」


 ピィラが大きなテーブルに持たれると、何時の間にか持っていたクッキーを囓る。

 それを見ながらあくびを噛み殺すと同時、座り心地がよさそうな椅子へ向かう。

 

「むしろ、ピィラは本当に付いてきて大丈夫? 出るだけじゃ無くて、ジャイルズのお世話になるのは全然違うでしょ。出国だって、雇い主であるライリー=ローレンのお嬢様には無断で……」


 椅子に座って一息を吐きながら言う。

 体が重いと、ついつい動作が大げさになりがちだ。

 

 視線の先では問題無いとばかりに髪を揺らしたピィラの姿。

 指をさっと拭くと、身に着けていた装飾品を幾つか外していく。

 見つめていると、少しずつだが、何となく最初より見やすくなった気がする。

 身に付けていた飾りを見ていると、本当に軽い認識阻害の魔道具ですと言われた。

 

「前もお伝えしたとおり、隊長の情報収集が出来るなら、諸手を挙げてどうぞと言われますわ。貴女がどんな活躍をしたのか、活躍をするのかが、雇い主であるライリー=ローレンの関心事。フィオレンティーノ・ジャイルズの直ぐ傍には伝手が無かったと思いますし、今回の流れは行幸であったと言えるでしょう」

「国を出る連絡はしてないから……脱走とかは疑われてないの……?」


 ピィラの動きに合わせて、こちらも椅子の上でもぞもぞと服を脱ぐ。

 まるで子供だと思いつつ、少しだけ整えてから椅子に置く。

 寮生活ではどうしていたっけ。  

 ……後で、フィオ家の執事やメイドさんに渡したら綺麗にしてくれるだろうか。

 さっきの人がまた来てくれないかな。

 片腕が切断された服は持ってきているけれど、直してくれるのかな。

 

「抜け出したと言っても、私が隊長に接触を図る事はお伝えしていますし、オリヴィア隊長が宿から消えたという情報は出回る事でしょうから、……まぁ、推測して頂けるんじゃないでしょうか?」

「あぁ……ちょっとした賭け状態みたい……だね」


 おもったよりも眠気が辛い。

 せめて水ぐらいは飲んでおこう。

 コップを持つと、高そうな壺から水を注いでくれる。

 耐えられるけれど、ここで耐えてもしょうが無い。


「やはり、体力が回復していませんでしたか」

「うーん……特に毒とか盛ったわけじゃないよね……」

「普通に過労だと思います。あの、ここは見ておきますから、隊長はお休みになった方が……」

「んー……」


 隊長じゃない、と突っ込むのも面倒だ。

 何時間も仕事をしたような疲れを抱きながら、下着だけになった状態でベッドの上で丸まる。


 せめて服を着てくださいとか、掛け布団をしてくださいとか聞こえるけれど、体を洗っていない状態でベッドの中に入るのは頂けないとばかりにはねのけ、意識を落とした。

遅れましたが、次の更新は土曜・日曜のどちらか深夜更新ですー。


追記:

ぐぬぬとなっているので月曜何とか……。最近ちょくちょく投稿ペースを間違えて申し訳ないという感じ……。

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