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第19話 話を聞きたい

翌日、昨日の魔獣襲撃は日常と言わんばかりに普通の授業へと戻ったのだが、隣の席で神楽がうなだれているのが見える。昨日の疲れは授業中に揺れる動きを伴って現れていた。

 魔獣学の授業中、頑張って起きようとしているのを見たが、あれでは振り子だ。そして休憩時間になると、今度は机に溶けていく。授業ではまだ習ってないが、記憶にあるスライムのようだった。


「うー、昨日の疲れが取れてない気がする……。あと、オリヴィアさん、昨日の夜はベッドまで運んでくださってありがとうございます……すみませんでした……」

「いえ。気にしなくても大丈夫ですわ」

「重かったですか?」

「軽かったですわ」

「……次から気をつけます」


 神楽はまだ授業中に起きようとしていたので良い方で、他のクラスメイトは沈んでいたりするのもちらほら見える。

 沈んでいる生徒に対しては、教師が軽い電撃魔法で容赦無く起こすのだが、そのたびに大きく椅子が動く音がして笑ってしまいそうになる。

 しかし、魔獣学そのものは、このヨルム王国では命に直結する大切な授業だ。

 魔獣の見た目、特徴、弱点、どう対処すべきか、毒はあるのか、耐性は、事前に察知出来る情報はあるか等々。

 まるでRPGの攻略情報のように、魔獣の情報を知る事が出来る貴重な授業である。

 故に、教師も鬼となって学生を起こすのだ。


「神楽さんは休み時間中に寝ても……」

「そうします……昨日の件もあるのにすみませんが……」

「――――授業が始まる頃には起こすわよ」


 次も引き続き魔獣学だ。

 季節によって登場する属性が変わるという、エレメントの説明の途中だったのだ。神楽には悪いけれど、早く休み時間が終わって欲しいと実はそう思っていたのは、直ぐに寝始めた神楽には内緒にすべきことだった。


 ◆ ◆ ◆


「神楽さん、今日はお昼ご飯を一緒に食べませんか?」


 と、声を掛けたのはアタシ――では無い。

 充実した魔獣学の教科書を片付け、以前から予定していた用事を済まそうと考えていた時に横から聞こえた声だ。

 きょとんとした神楽の前には、3人ほどの女子生徒達。一人はポニーテール、一人はお団子ヘア、一人はショートヘアの三人組。

 身長はバラバラで、お団子ヘアの子が頭一つ低く、ポニーテールの子>ショートヘアの子といった具合だ。

 朝の挨拶ぐらいはするために見知った存在ではあるが、振り返ってみると彼女達が神楽と食事をしている景色は記憶に無い。

 ポニテの子は普段から神楽と話している姿を見かけるので、恐らくその関係で声を掛けたのだろう。 

 神楽は、普段はアタシと食べることが多いため、この後の用事を考えるとちょうど良かった。


「ずっと神楽さんとお話ししたいなと思っていたの。どうかな?」

「はい! 私は大丈夫です!」


 と告げた声を聞いたので顔を向ければ、神楽とばっちり目線がある。

 ついで、名前は覚えてないポニーテールの子とも目線が合いそうになり――慌てて逸らされた。

 何かしただろうか。やや赤い顔に見えたけれど、実は熱があるんじゃなかろうか。

 ポニーテールの子に二人の友達が慌てて声を掛けているのを脇に置き、神楽に告げる。


「私、今回は用事があるの。お昼休みに誘われてるの。神楽さん達との食事は、また今度よろしくしますわ」

「あっ、そう、なんですね……」


しゅんとする神楽に申し訳無いと思う。しかし、今回が初めてというわけでもないのだ。ゲームの主人公だろうがそうじゃなかろうが、一緒に食べたいと思って貰えるのは大変ありがたい。

 ……しかし、神楽の友人達の方もどことなく残念そうだ。

 席を立つ。


「では、皆様、失礼」

「はい! また、次回お願いします!」


 と、そう答えたのはポニーテールの子だった。

 そこまで仲良かったかしらと素で考え、不思議そうにしながらも、手を振りながら教室を出て行く。


 この学園は研究室などもある大型な学園だ。

 その中で食堂や部活棟、図書室に入学式時に破壊された大型講堂などの施設以外にも、憩いの場となる植物庭園等もあるから恐れ入る。

 歩いて行く先は学内にあるカフェ。

 生徒と、そして研究者にとっての憩いの場だった。

 オシャレを意識した、外の光を多く取り入れているカフェは明るく、お昼の時間という事もあって生徒・職員問わず多く居る。観賞植物も十分にあり、無機質な雰囲気は無い。

 アタシも神楽も、実はまだまともに来たことが無い。

 お昼ご飯を食べるなら食堂の方が安くて量も多いため、基本的に食堂しか行かないのだ。

 食堂は大勢が座れる長机があるが、カフェは違う。二人席が多く、あっても4人席。よってお昼ご飯を食べに来ようとすると埋まってる可能性が高い。

 カフェというには大きいその空間を歩く。

 多くの席は埋まっており、目的の人物が居るかやや不安だが――――居た。

 視線を向けるとこちらに気づき、笑顔を見せてくる。

 視線の先に居るのは――――ヘンリエッタ=クラウゼ。

 原作では、神楽のイジメの主犯者だった子だ。



急ぎだったので今回は短めです。色々とリアルが忙しくなってます……(遠い目

次回は土曜日です。

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