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悪魔兄妹は、契約する相手を間違えたようです  作者: 龍造寺 塞梅
第3章 ざわめき、そして沈黙。
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第8話 下着と天啓

「あ、変な意味じゃないです!ただ、処分方法とか聞いておかないと困るかなって思ったので……」


 彼方も、新菜に「セクハラ」と言われたくない一心で、そう弁明する。新菜は、困ったようにクラフト紙の袋を自分の後ろに隠した。


「わ、わかってます……。彼方君は、からかうつもりとかないですよね。そういう人だってわかってますから」

「はい……。余計なお節介をしてしまってすみません……」


 彼方は、本当に困ってしまった。しかし、処分方法を知らなければ困るのは新菜である。だから、思い切ってお節介を焼いたのだった。


「あれ?でも、トイレにありませんでしたっけ?傍多が使うので、母親が定期的に用意してくれてたと思ったのですが」

「いえ、ありましたけど、そこまで甘えるわけにはいきませんし……。今付けてるもの、1個だけ拝借しましたが……何より、ゴミ袋がないとご迷惑になるので、ちょうど良かったと思います」


 女の子と、女性の体の話をしていて、ここまで警戒されないことは、果たして男として良いのだろうか?と、彼方はちらりと考えた。

 

 食材を冷蔵庫に詰め終わり、続けて、新菜が「私もお手伝いします」と言って、朝に干して貰った洗濯物を、今度は彼方が取り込んだ。


 一枚一枚、洗濯物を畳んでいると、ふと、微かに固い、レースのような感触が手に当たった。

 ふと、洗濯物を見ると……。


 そこには、女の子らしいピンク色に、黒のレースが入った、彼方には見覚えのないほどの盛り上がりを見せるブラジャーが、あった。


「ふわあっ!?」

 彼方は、思わず手を引っ込める。傍多はスポーツブラなので、そんなに女性を感じるものではなかったのだが、レース仕立てと圧倒的なカップ感のあるそれは、傍多のブラとは全く違ったものだった。


(こ、これ、畳まないといけない、かな……)

 彼方は、おそるおそる、そのブラを手に取る。そして、何事もなかったように振る舞いつつ、義務的に畳んで脇に置いた。


「ふう……」

 彼方はため息をついたが、次に手に触れたのは、シルクのようななめらかさを覚える、これまたピンク色のショーツであった。


「……勘弁してください……」

 そう、口に出してしまう。

 素直にラッキースケベにありつけないのは、ひとえに彼方の生真面目な性格からだった。


 と、そこで、彼方はショーツに落ちなかった汚れのようなものを見つけた。

(これって……アレ、かな……)

 彼方も、さすがに生では見たことがなかったのだが、ショーツにはうっすらと血の跡のようなものが残っている。

(……女の子って、難しいな……)

 本来なら、傍多にこういうことは助言させた方が良いのだろうが、浴室で襲われて以来、新菜は傍多に恐怖を覚えてしまっている。同じ女の子で言うと、クロエでもいい気はするが、クロエはクロエで、恋人の傍多の興味を引いた新菜に対して、複雑な感情を持っていることを、彼方は気付いていた。


 おそらく、新菜も慌てていたのだろう。

 傍多に襲われて、彼方にも裸身を晒してしまい、恥ずかしさでいっぱいいっぱいになりながら、月経も来てしまい、急いで下着を洗ったのだと考えられる。洗い残しがあっても、仕方ないことではあった。


 まあ、彼方の場合、傍多がそういうところで開けっぴろげな性格をしているので、多少の洗い残しがあっても、気にするなと言われれば気にしないこともできる。

 が、それが、彼方のタイプどストライクの、優しくて巨乳でおっとりしたお姉さん、の物と考えると、彼方はどうしてもドキドキしてしまうのだった。


「か、彼方君……私、手伝いましょうか……?って、あっ……」


 新菜のショーツを手にしながら、色々と考え込んでしまった彼方に、新菜が声をかけてきた。が、彼方の持っているものが自分のショーツだと気付くと、バッ!といつものおっとりとした動きと同一人物とは思えないほどのスピードで、新菜はショーツをひったくった。


「ご、ごめんなさい!これは、私が畳みますので……あっ……ブラまで……」

 彼方が脇に置いている、畳み終わった洗濯物の中に、自分のブラジャーがあることを見つけた新菜は、顔を真っ赤に紅潮させる。


「本当に、ごめんなさい!他人の下着を畳むとか、気持ち悪いですよね。ごめんなさい……」

「だ、大丈夫ですよ。クロエの下着よりはまだマシです」


 彼方は、初めてクロエの下着を畳んだ時のことを思い出した。クロエはまだ未成熟な体つきをしているが、その下着は、ショーツはいわゆるTバッグだったり、向こう側がみえるんじゃないかというほどのスケスケ素材だったために、彼方をぎょっとさせた。

 更に、クロエは下着を他人に洗われたり畳まれたりすることも気にしない様子で、「自分でやるわよ」の一言も今までになかったのだった。


 そして、次の瞬間、彼方は気付いた。

「……あれ?もしかして、そういうこと、なのかな……?」

「?」

 隣に座って、洗濯物を畳み始めた新菜が、疑問の目を向ける。彼方は、まだ考えながら、新菜に向き直った。


「もしかして、新菜さんの現象が起きるのは、これのせいかもしれません」

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