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(9)「けど、もう少し甘くても良いかも」

 玄関には人がいた。それも三人。

『ユウスケ、お誕生日おめでとう!』


 そこには母親の他に秋ちゃんと広乃ちゃんがいた。クラッカーがパンパンパンと弾けた。

「!」と思っていたら「ほら、ほら」と広乃ちゃんに手を引っ張られ、秋ちゃんに背中を押されてダイニングへと連れて行かれた。

食卓にはハンドメイドのチョコレートケーキが置かれていた。


 目を白黒させていたら広乃ちゃんが説明してくれた。


「ユウスケ、どうせほっといたらご家族から祝ってもらって終わりでしょ。どうかなあって思ってお母さんにサプライズパーティーさせて欲しいって頼んで相談していたらケーキを作ろうってなった訳」

「そりゃ、どうも」


 秋ちゃんはこの回答が不満だったようでツッコミが入った。


「他に言う事はないのかなあ?」

「いや、驚いちゃって。本当にみんなありがとう」


 それで僕を放課後に図書室に釘付けにして、更に母さんが牛乳特売で料理時間を稼いでいた訳ね。こっちはいつもの一日だと思っていたから不意打ちだった。


「はい。はい。話はいいからまず夕食にしましょう」

と母さんが割り込んできた。


 しばらくして父さんも帰ってきてみんなに盛大に祝ってもらえた。秋ちゃんと広乃ちゃんの誕生日は覚えてるけど、自分の誕生日なんてすっかり忘れてたな。去年は受験で簡単なプレゼント交換しかしてないし。

1年ぶりだからって、二人がうちの母さんに連絡を取って企画してくれたという訳だった。


「まあ、騒ぎたかっただけなんだけどね」と広乃ちゃん。

「図書委員会付き合わせちゃったし」と秋ちゃん。


 夕食後、ロウソクを吹き消すという奥ゆかしい儀式の後に母さんが三人で作ったというチョコレートケーキを切り分けてくれた。早速一口頂く。

「美味しい」

『でしょ!』と作ってくれた三人が微笑んだ。


 そこで止めとけば良いのに僕はつい一言余計な事を言ってしまった。あとで父さんからは率直さは美徳だと思うが、それも程度がすぎると時にバチが当るぞと後で諭された。


「けど、もう少し甘くても良いかも」


 そして速攻で三人から顔を張られたのだった。ごめん。


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