(8)遠回りするユウスケ
18時ちょうどでドアを閉めて職員室へ向かった。めずらしくアガクミ先輩も一緒に来てくれた。話の続きを所望されたのだった。
中央校舎の階段を上がって2階の渡り廊下に出ると窓からは少し朱色に染まり始めた夕陽が差し込んでいた。
「君たちの関係は、ユウスケくんから見てどういうものなのかな」
「僕らは互助会なんです。小学3年生の時、クラスが一緒だったんですけどちょっとしたゴタゴタがあって、みんな属していたグループから外れたんです。その時、僕らは親友としてお互いを助け合おうって誓った。それだけの事です」
「なるほどね。そして図書委員会をみんなの集まる場にしたんだね」
「それは秋ちゃん、古城さんが音田先生と知り合いだった事が全てですよ。僕、なんか嫌な予感しかなかったから来たくないって言ったんですけど、めずらしく他の二人が許してくれなくて」
「結果としては?」
「三人が揃う場所が出来て良かったです」
「私達も君たちが来てくれて喜んでる」
職員室に鍵を返して中央校舎1階の下足箱の所で徒歩通学のアガクミ先輩とは別れた。手を振ってくれた毒殺探偵またはミス・アガサ。ちょっとうれしい。
さて、帰ろうかと自転車置き場へ向かう。スマフォに着信があったので見たら母さんからメッセが入ってきていた。
おかん:あんた、今どこ?
ユウスケ:学校だけど。もう自転車乗るから30分もしたら帰るよ。
おかん:んー。いつものショッピングセンターで牛乳特売だから買ってきて頂戴。
ユウスケ:えー。遠回りじゃん。
おかん:行ってくれるよね?っていうか行け。
ユウスケ:分かった。
あそこに寄るとなると20分ぐらいはロスするよなあ。うちの母さんも中々息子使いが荒いと言いたいところだけど朝の事があるから言えない。
夕陽も地平線に沈んで薄暗くなり始めた頃に自宅に帰り着けた。牛乳の特売でこんな目に合わされるとは。ただ安くはないんだよな。僕もよく飲むし。となると結局自分の為になってるじゃないか。仕方ないよなと自分を納得させた。
マンションの駐輪場に自転車を止めて家の玄関に入り靴を脱いで家に入ろうとした。
「母さん、ただいま。牛乳買ってきたよ。えっ?」