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(2)登校

 朝8時前、自転車で学校へ向かった。途中、母さんの軽EV車が追い抜いて行ったので手を振っておいた。


 普通なら30分ぐらいかかる所を20分ほどで学校へ到着。1限目には余裕でセーフ。駐輪場に自転車を止め下足箱でスリッパに履き替えて中央校舎3階の教室へ駆け上がった。


 中央校舎3階のHRクラスである1年D組教室の前にある自分のロッカーに行く。授業中全部持って回るのも面倒なのでよほどのめんどく下がりでなければスクールバッグをロッカーにしまって1、2限目の教科書とタブレットを取りだして最初の授業がある教室に向かうのが普通だ。そして僕もその点は普通。


 すれ違う友達に挨拶を交わしながら無事1限目始業の10分前には着席に成功した。よし、幸先が良いや。


 賑やかな1日は向こうから勝手にやってくる。こと僕に関してはそういう運命の星の下にある。そういえばミアキちゃんや広乃ちゃんとは今朝はまだ会っていない。1限目の授業も彼女たちとは違う。珍しく平穏な1日のスタートかなあって……そんな事を思ったのが間違いだった。


 中央校舎3階E教室の静かな朝は賑やかな二人の来訪で乱された。


「おはようっ!」

「こんな朝にそんな暗い顔して運が逃げるよ」


 なんて言ってくるのは秋ちゃんと広乃ちゃん。わざわざ人の授業先までやって来てその台詞。清々しい朝よ、さようなら。


「おはよう。二人揃って朝から来るって何か僕に頼み事かな?」


 二人を見ると広乃ちゃんはいつものジーンズルックだったけど、ミアキちゃんがなんと制服じゃない。ブラウスとパンツルックというやけにシックな装い。制服じゃないというのが珍しい……っていうか制服だった服というべきかな。この学校では廃止になったし。秋ちゃんの制服はお姉さんのお下がり。彼女がその服に憧れて敢えてこの学校を選びお姉さんから譲ってもらったという制服を着て来ている訳なので。……っていうか今日はきっと天候異変が起きるぞ。


 広乃ちゃんが厳かそうに言い放った。


「実はさ、放課後に秋ちゃんを社会勉強に連れて行く予定にしてるの」

「社会勉強?」

 何それ?って僕の顔に書いてあったらしい。広乃ちゃんが続けた。

「秋ちゃん、もう少しファッション考えろって思わない?」


 それは考えた事がなかったけど、ファッション研究者たる広乃ちゃんに言わせれば、


「広乃ちゃんがそう言うならそうなんだろうね」


 傍らでミアキちゃんはしかめっ面。


「私が行きつけのお店にウィンドウショッピングに連れて行くんだ」

「へー」


 話の行方がさっぱり読めない。広乃ちゃんとの会話ではよくある事ではあるけどね。


「で、今日の図書委員の当番、代わってくれない?」


 そういう話ね。いいでしょう。


「いいよ。今日は空いているから」


 広乃ちゃんが笑顔になった。


「ごめんね。このお礼は何かするからさ」


 手を振って笑い返しておく。


「気にしないで。僕の方で代わって欲しい時は頼むからさ」

「あ、今日の当番、持田先輩が個人活動で休むとかで他の先輩に頼んでるって言ってたから」と広乃ちゃん。

「気にせず楽しんできて」と返しておいた。


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