(1)夢、そして起床
この日は急遽夕方は広乃ちゃんの家にお呼ばれする事になった。
秋ちゃんとボクと合宿だ!って広乃ちゃんは言うけど、ボクにも泊まれと言われてけど、ここは女子二人でやってくれたらいいよって思ったからご馳走になったら広乃ちゃんのお母さんが車で送るって事で許してもらった。
広乃ちゃんは一人っ子だし。兄弟がいたらそちらの部屋でって思うけどね。
どうもボクの方が苦手な気分があって。
秋ちゃんはなんとなく察してくれたみたいで「また朝食からくれば良いよ」とそれはそれで無茶(僕は何時に起きればいいんだい?)を言うのをなんとか食い止めて朝食を食べてから行くからって事で納得してもらったのだった。
お互いの料理の力量はお互いに思った以上だった。広乃ちゃんも秋ちゃんもすごい。明日は頑張らなきゃと思っていたら眠れないなあって思っていたら、
夢うつつで半分ぐらい目が覚めた。まだ部屋は暗かった。まだ夜だよな、でも秋ちゃん怖いし、けどいいやって思いながらまた深く惰眠をむさぼっていたら部屋のドアをいきなり開けた母親に叩き起こされた。
「ユウスケ、さっさと起きなさい!時間そんなにないんじゃないの?」
カーテンの隙間からは強い日射しが差し込んでいた。何の事はない。朝は来てた。
そして目覚まし時計のデジタル液晶は非情にも2025/05/14(WED)07:40となっていたのだ。
「おはよう。母さん。……今、起きる!」
どうも妙な気分。どうやら小学生時代、2018年秋の広乃ちゃんや秋ちゃんとのあれやこれやを夢で見ていたらしい。秋ちゃんのお姉さんのミフユさんの高校文化祭は面白かったな。いまだに三人の中では輝いていてたまに話題になるし。
起き出してカーテンを開けると梅雨前の5月、今日も快晴。たまには曇っていたっていいんだけどな。
それにしても未だ母さんに起こされる高校1年生。我ながらどうかと思う。
ポロシャツを頭からひっかぶりスラックスに足を突っ込んで洗面台経由でダイニングへ。お父さんはもう出かけた後だった。
母さんもスーツ姿でコーヒーを飲みながらトースターからパンを取り出していた。普段はパンを焼くのはそれぞれでやってるんだけど、今日は遅刻を恐れてか母さんが焼いてくれていた。
「今日は特別。さっさと食べなさい。なお遅刻は許さない。急げよ、少年」
母さんに追い立てられながら大慌てで朝食をさっと食べた。
「母さん、ごめん。寝坊する気はなかったんだけど」
目覚ましはなぜか止まっていた。うっかり自分で止めたのだろうか。
「ユウスケ、別にそれはいいけど今日は7時までには帰ってきなさい。最近あんた遅いんだから」
部活もない日なら6時前には帰ってるけどなあと思いつつ、母さんにそう言われると考えもなく頷く僕。