3話 〜大きな町〜
「ここって森?花も咲いてる、綺麗な花」
草の高さは約2メートルくらいある。異世界ってことで間違いなさそうだ。
私は立ち上がって空を見る。前にいた世界よりもずっと空気が澄んでいて気持ちいい。異世界にちゃんと転生できたみたい。
今は夕方くらいだろうか、ちょっと暗いけど周りがよく見える。結構先の方に明かりがかすかに見えたような気がしたので、その方向に歩き出した。ギルドっていうところに行かなければならない。
17年間生きてきた感なのだが、なんか獣みたいなのが出そうな感じがする。早めに行くべきかもしれない。
…っ!!
今かすかに草が動いた気がする。なんせ草の高さが2メートルあまりなので姿が見えない。草をかき分けていくと道に出た。で、その道から見た光景は目の前に巨大なクマがいる始末。
これはどうしたらいいのか。やっぱり獣が出たじゃないか、本当に出るとは思わなかったけど。私的には走って逃げるべきなんだろうけど、クマって死んだふりと逃げるのは絶対ダメだって聞いたことがある。
目をそらさずゆっくり後退って、でも今この状況でそんなことは無理なわけで…それも後ろには大きな木があるからもう後退できないんだな。
後ろには太くて投げやすそうな木の棒が一つ。一応体育5なので、当たるかもしれない。当たったら即逃げる、今決意した。
目は絶対にそらさずに棒を拾って絶妙なコントロールで、クマの体に当たった。そのあとクマは100メートルくらい飛んで行った。
は?
意味がわからなくて一瞬フリーズした後、近づいてみると絶命したクマが伸びていた。これは倒せたということでいいのだろうか。
これ、放置しとくのもなんだし この世界に【収納魔法】なんてものは存在しないのだろうか。もちろん前いた世界にそんなものは存在しない。異世界だからこそだ。
詠唱とかしたら使えるかもしれない。一度してみようか。
「えっと、【収納】!!」
するとクマは消えていった。成功したってことでいいのだろうか。一応いなくなったし、売れるかもしれないし 持ってて損はないと思う。
また何か出てきたら嫌だから急がないと
■
あのクマが出てから何にもなくて安心した。しかし、一向に街に着きそうにない。思っていたよりも遠かったようだった。
「早く着かないかなぁ〜」
私はそう呟いていた。走ったら早く着くかもしれないけど、疲れるしな。今は全然疲れてないけど、ずっと歩いていたら足が痛くなる可能性も考えられる。
また 肉食動物的な何が出てきてもさっきのクマのようにうまくいくとは限らない。
空もどんどん暗くなっているし、急がないといけないってことを考えると走るべきだとは思う、それができないのなら野宿することも…
ん?なんか足音がする、一人じゃない何人かの足音、動物じゃない人間っぽい感じ。4本足の動物もいる!?どんどん近づいてくる、絶対に分からないはずなのに鮮明に感じる。
逃げた方がいいのかもしれない。
実際は逃げられるほど遠くなかった。
「君、こんなところでなにをしているんだ?ここら辺は大型の魔物がでるから危ないぞ」
男の人が2人、馬に乗った女性が1人後ろに立っていた。
大型の魔物?今まで歩いていてそんなの一度も見なかったけど
というか魔物って何?魔ってつくぐらいだから悪い奴?人間みたいなのか動物型なのか全然予想もつかないんだけど。私ギルドに行こうとしてるのに一向につかないどころか大きな動物(正確にはクマだけど)に遭遇しちゃうし、知らない人に会っちゃうし異世界また困ることばっかりなの?転生してこんな森の中に出てくること自体想像もつかなかったんだけどー!!
今まで受け入れていたことにまでおかしいと思い始め、ちょっと困っていた。ずっと黙っているのもおかしいので聞いてみることにした。
「えーと、ギルドに行こうとしているのですがなかなか着かなくて、どこにあるのか分かりますか?あと、魔物ってなんですか?」
そう聞くと、首を傾げて馬に乗った若そうな女の人が教えてくれた。
「ギルドは結構先にあるの、私たちも今戻ろうとしてたところ。連れて行ってあげるわ、魔物は帰りながら説明してあげる、それでいいかな?」
「ありがとうございます。わからないことばかりで困ってたんです。」
お礼を言うと、優しそうに微笑んでくれた。そして、私は女の人が、乗っていた馬に乗させて貰った。
乗って帰っている最中に魔物についてを聞いた。
「10代くらいの子で魔物を知らない人は初めて見たわ。魔物はね、2種類いて、1つは動物型、大型のと小型のがいるんだけど大型のは狼とか熊とかそう言う類ので小型のは鼠とかリスとかがいるの。」
あの熊って魔物だったの?普通の動物とあんまり変わらないのに。人間界での動物を魔物って言っているだけかも知れないし、異世界って奥が深いなぁ。
「もう1つは説明が難しいんだけどスライムとかそういう類の。ドラゴンとかは全然出ないけど出た時は災害級だから、たくさんの上ランクの登録者に依頼してるの。ランクっていうのは多分ギルドに行けば説明書とか貰えるから、それをしっかり読むことをお勧めするわ。ちなみに私たちは害のある普通の魔物を討伐したりしているの。詳しいことはギルドに行けばわかるからね」
スライムか、なるほど動物のことを言っているわけではなさそうだ。ドラゴンとか出てくるのか?この世界、私に依頼がくることはなさそうだけどね。一番困るのは動物の討伐かな、可愛いって思う動物も倒していかないといけないし、討伐しなきゃならないくらいたくさんいるってことだしね。
ギルドに行けばいろんなことを教えてもらえるんだろう、きっと私が知らないこともたくさんあると思う。今お姉さんが話していたことさえも全く知らないことだった。
そんなこんなで会話していると夜になった。私は馬の上で知らないうちに寝ていた。馬の上はゆりかごの上に乗っているみたいで懐かしい感じがした。みんなは元気だろうか、なんて考えたりもしていた。
目がさめて10分くらいでやっと町についた。会話していたのと、寝ていたのであまり前を見ていなかったけれど、その町は遠くから見ていた時よりもはるかに大きかった。想像以上だった。大きな町、この町にギルドってところがあるのだろうか。
ギルドって役所みたいなところだと私は想定している。
「この町は他の町の中でも5位以内にランクインしている大きな町よ、ギルドって言われてもわからないだろうから、そこまで案内するわ」